第23話 西部掌握
『メインクエスト:西部の没落』
『達成条件1:西部の領地を奪う 3/3』
『達成条件2:三田楓を倒す 1/1』
『達成条件3:開眼した三田楓を倒す 1/1』
『達成条件4:東部の仲間を増やす 0/?』
「なんだ、これ……?」
仲間を増やす?
なんで達成人数が不明なんだ?
『仲間に引き入れた人数に応じて報酬がランクアップします!』
「え……!?」
ま、まじか!?
元々仲間を増やそうとしていた矢先に……
『現在の報酬:Rスキル』
「田村! 捉えた西部の奴らの所にいくぞ!」
「案内します、ヘッド!」
そうと決まれば、早速行動だ!
俺は田村に言って、青竹高校に向かった。
〜〜〜〜〜
「あ、ボス。来たか?」
「ああ。それで、こいつらが──」
俺の言葉に、伊達が頷く。
「西部の幹部たちと……」
「……チッ!」
「……三田だな」
俺の目の前に、6人の幹部たちと西部のトップ……
全員、椅子に縛られている。
三田の豊満な胸が際立っていて、仲間が生唾を飲む音が聞こえた。
「お前ら……はぁ。縄解け」
「え!? ですが、ヘッド……!」
「そうですよ! 勿体ないです!」
「もう少し……」
「だからな!? いい加減にしろよお前ら!?」
こいつら、まじで何やってんだ!?
「縛るなら腕でいいだろ! 三田はまぁ足技使うけど……俺が何とかするから、とりあえず解け!」
「「「は、はい!」」」
俺の声に、一年達は縄を腕へ縛り替えた。
「……どういうつもり?」
「え?」
三田の言葉に、俺はありのまま答えた。
「だってこれから仲間になるのに、この扱いは酷すぎるだろ?」
「仲間?」
三田はハッ、と吐き捨て、俺達を睨みつけた。
「あんたらの配下になんかなるもんか。ケダモノ達と一緒になんかやってられないっしょ」
「こいつ……! ヘッド! もう一度分からせてやってくだせぇ!」
「……誰か田村を帰らせろ」
「あ、じゃあ俺が行くわ。序列的に俺が行くしかねぇし」
涼人に頼んで、うるさい田村達を出ていかせる。
「あのなぁ……俺は配下じゃなくて、仲間になってほしいんだよ」
「は? それの何が違……」
三田は自分で言って、気づいたようだった。
「あんた……ほんとにどういうつもり?」
「西部の幹部達も聞いてくれ。俺達は、仲間を欲している」
「……あんたと参謀以外全員消えたけど」
「え?」
振り返って見ると、一年たちと高梨らは皆帰っていた。
(……全員三田をどうこうしようって思ってたのか??)
漫画じゃねぇんだぞ。
それ犯罪だからな? やらねぇよ。
「はぁ……まぁいいや。とにかく、俺はお前たちに仲間になって欲しいんだ」
「……なんで?」
三田はポツリと、呟くように言う。
「北部も南部も同じ。どうせあんたたちの下についたって、うちは慰みものにされるだけ……」
「……」
最後の方は、普段の強気な態度からは信じられないほど、消え入りそうな声だった。
(こいつ今、なんて言った??)
ナグサミモノ……慰みもの?
「……はぁ!?」
「ぅ……」
本気か?
北部と南部も、彼女のことを狙ってるって聞いたけど……そういう意味でか!?
(……三田にも女っぽいところがあったんだな)
俺は先刻の三田との戦いを思い出し、ブルリと震えた。
「……あのさ、三田」
「……?」
「俺が喧嘩するのは、好きな人が居るからなんだ」
「!!」
三田は、瞳の潤んだ顔をあげた。
「正直喧嘩とかさ、勝っても負けても痛いことやりたくないんだよ」
「いや……じゃあなんで……」
ああ、分からないだろうな。
分かるはずもない。
──俺が頑張れるのは、クエストのおかげだから。
「でも、ちょっと事情があって北区制覇をしなきゃいけなくなったんだ。それでこそ、好きな人にアピールする自信がつくってこと」
「神楽……あんた……」
俺の言葉に、三田は呆然とした様子で言った。
「……利用されてるよ、それ」
「違うわ! 俺が勝手に思ってるだけ! その人に言われたわけじゃねぇから!」
「「「……」」」
「とにかく! 俺は、その手助けをしてくれる仲間が欲しい。北区制覇をした後、東西南北区制覇をするのか、あるいは中央区まで制覇するのか……まだ、分からないけど」
三田と幹部達は、黙ったまま俺と伊達を見つめていた。
「俺は西部が欲しい訳じゃない──お前たちが欲しいんだ」
「「「──!!」」」
「西部は今まで通り、三田をトップに動いてくれていいんだ。一応、俺の統率下にいるってだけで、今までと何も変わらない。北区を制覇する、俺と志を共にして欲しいんだ」
「……ボス。上納金がないんだから、こいつらの資金はどうするんだ?」
そこで、今まで静観していた伊達がここぞとばかりに挟む。
(上納金がない……!?)
それを聞いた西部の幹部たちは、驚愕に目を見開いた。
「あぁー……そうだった。上納金を集めるのだけは禁止しとかないとな」
「なっ……それなら、うちらはどうやって生きてけばいいのよ……!?」
「何言ってんだ」
三田の言葉に、俺は首を傾げて返した。
「俺たち高校生が生きるのにあんなバカみたいな金要らないだろ」
「……! で、でも洋服とか……」
「……てことは、俺たちも上納金を収めなくていいってことか?」
「……!」
食い下がる三田と別に、幹部たちは信じられないと言った様子で呟いた。
「あんた達……」
「ボス、それこそ考えていた手を使おう。あまり戦闘に参加しない一年達から順に少量ずつ上納金をとればいい。人数が増えた今なら、可能だろう」
(ちょっと待って……こいつら、今まで本当に金を集めてなかったの……!?)
「うーん……そうするか? 毎週千円とか?」
(千円!? たったの!?)
「……いや、やっぱそれだと月4000円はいることになるな。月1000円にしよう」
(はぁ!?)
三田と幹部たちは、あまりの金額の低さに仰天していた。
「まぁそれは置いといて……俺たちの、仲間になってくれないか?」
俺は三田に手を差し出した。
「……」
(本当に……本当に、違うの?)
三田は神楽を見て、考える。
幼い頃から、容姿のせいで男子には好色な視線を向けられてきた。
中学になる頃には、既に豊満だった胸をどさくさに紛れ触られたことは数えきれない。
それが嫌で、テコンドーを始めた。
幸いにも才能があったから、直ぐに西部のトップになって、誰にも手出されないようになった。
でも、そしたら次は他校の奴らから目をつけられ……
一人では戦えないから、嫌だけど仲間を作るしか無かった。
北部の白井も、南部の
(でも、こいつは……)
でも、目の前の
ただ、純粋に……女ではなく、仲間として。
(……これが“普通”、なんだろうね)
でも、不本意ながらそんなところに、惹かれてしまった。
(……元々、うちはリーダーなんか柄じゃなかったんだから)
言葉遣いで取り繕っても、心からは消えなかった、自分の本性。
──本当は、自分にリーダーなんて向いてなかったのだ。
「……あんた、陰キャすぎない? 好きな人への自信つけるためにここまでしなきゃとか……」
「はぁ!? 悪かったな陰キャで!! てか今それ関係ないだろ!?」
三田は動揺する神楽を見て、クスリと笑った。
「──分かったよ」
「!! ってことは……?」
三田は、幹部達に目配せして、息をついた。
「うちらは東部に入る」
『達成条件4:東部の仲間を増やす 63/?』
俺はその言葉に、三田の手を取った。
「ありがとう! ほんっとにありがとう!」
「ちょっ、そんなに言われたら照れるっつーの!」
三田と幹部が
『現在の報酬:URスキル』
これで最大、か?
まぁ、全員仲間に加えるのに成功した訳だし……
『報酬を受け取りますか?』
「……」
いや、待てよ?
『報酬を保留しました!』
「え、どしたの? 急に黙りこくっちゃって……」
「伊達」
「?」
俺は彼女を思い出すと、三田とその幹部たちに居場所を聞いた。
「──病院に行くぞ」
──────────
三田達西部の不良達を傘下に加えた仁。
そんな仁は、残る1人……“彼女”を迎えに、美容院へと向かった。
次回『新たな仲間達』
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