第21話 三田楓との決戦


「……」


 体育の時間。

 男子の方が盛り上がっている。


「うおおおお!?」


「なんだ今の!?」


「防いだ!!」


 私たちはバレーボールをしつつ、反対コートで盛り上がる男子達の様子を見ていた。


「ねぇ、なんであんなに盛りあがってんの?」


「さぁ〜?」


「瑞稀、スパイク!」


「「「イェーイ!!」」」


 試合が終わって、チームの皆は何だ何だと男子の様子を見に行った。


「瑞樹、見てあれ!」


「ん?」


 友達の果穂かほに言われ、私も様子を見に行くことにする。


「……あ」


 そこに居たのは、だった。


「うおおおお! また入った!!」


「やべぇ、アレ止めたぞ!?」


「経験なしとか絶対嘘じゃねぇか!」


 神楽仁かぐらじん

 この学校を牛耳っていたらしい鮫島先輩を倒して、この学校の新番長になった、同級生。


 今、その彼と卓球部の人が激戦を繰り広げているところだった。


「ね、ね! あれ、瑞樹に告白してきた人じゃない!?」


「新番長の!」


「……うん」


「へ〜、卓球上手かったんだ」


「あはは! でもなんかそんな印象あるよね〜」


「間違いなくサッカーとかじゃないっしょ? そゆこと!」


 ……まぁ、はばかられる言い方を恐れないなら、陰キャらしいということだろうか?


『え!? 瑞樹、アイツに告白されたの!?』


『え、大丈夫だった!? 断って何かされたんじゃ……』


 大丈夫だと言う私に、友達の一人が言った言葉だ。


『そそ、元々陰キャだった人が突然力を持ったら〜なんて奴。ほんとに大丈夫だった?』


『無理やりなんかされそうだったりしたら言ってよね?』


『ああうん……ありがとう』


 正直、そこまで辛辣にしなくてもいいとは思うんだけど……


 私も含めて、やっぱり皆、は気にしてしまう。


「11対7だ!! 神楽が勝ったぞ!!」


「「「うおおおおおお!!」」」


「てか、先生まで興奮してんじゃーん」


「ウケるよね〜」


「……」


 果穂達の会話を聞きながら、私は視線を外す。


 しかし、話題にことかかない同級生だ。


(神楽仁、ね)



〜〜〜〜〜



「いいか? 今日、俺達は西部を潰す!」


「「「うおおおおおお!!」」」


 放課後。

 俺たちは、少ない仲間達と集まっていた。


『……今回は、三田とのトップ対決以外にも、雑兵の大規模戦闘が起こるはずだ。今回限り、俺の部下達を貸してやる。だから──』


 ──絶対勝てよ、ボス


「俺は三田を倒す! そして北区を制覇するぞ! ついてこい、お前ら!」


「「「はい!! ヘッド!!!!」」」


 総勢70人の仲間と共に、俺たちは西部最後の拠点……青竹学校へと向かう。


『到着後、Aチームは戦闘で体力を温存しながら突破!』


「行けるか、涼人?」


「当然!」


 Aチーム……

 No.1 神楽仁

 No.2 水霧涼人


『BチームはAチームを守れ!』


「「おう!」」


 Bチーム……

 No.4 高梨颯太

 No.5 田村正典


『残るCチームは、個人個人で青竹高校の奴らをひたすらぶっ倒せ!!』


「「「うおおおおお!!」」」


「来たぞ! 東部の奴らだ!」


「返り討ちにしてやれ!!」


「姐御を守るんだ!」


 そして、乱戦が始まった。


「ヘッド! 行ってください!」


「ヘッド! 三田、ぶっ飛ばしてこい!」


「ああ……!」


「っ……! 仁!!」


「!!」


 田村達に後ろを任せ、俺たちは突き進んでいく。


 そして人垣を抜けた先。

 一人の男が立ちはだかった。


赤瀬あかぜ 智也ともや

『175cm』『74kg』

『力   B−

 俊敏  C

 知力  D+

 耐久力 C+』


 西部のNo.3、赤瀬智也。


「もう東部の好きにはさせないぞ」


「っ……」


 いけるだろうか?

 涼人もいるとは言え、スキルや体力も温存しつつこいつを……!


「仁……先にいけ」


「涼人……!?」


「仁は三田を倒してくれ……ここは俺に任せろ」


 涼人は俺に向かって、サムズアップする。


(こいつ……言うようになりやがって)


「……ああ。勝てよ」


「任せろ!」


水霧みなぎり 涼人りょうと

『才能開花!』

『167cm』『63kg』

『力   C+

 俊敏  D

 知力  D

 耐久力 B−』

『専用スキル:【クラヴマガ】』


「……ほお、お前が俺の相手か」


「……ああ」


「何故、俺が神楽を三田のところへ行かせたと思う?」


 赤瀬はそう言って、ボクシングの構えをとる。


「確信してるからだ。三田が神楽に、勝つことを」


「!!」


(仁……勝てよ)


 涼人はゴクリと唾を飲み込むと、静かに拳を構えた。



〜〜〜〜〜



「……来たね」


 俺が屋上の扉を開けると、視線の先で三田が座っていた。


 三田は立ち上がると、大きく伸びをして……思い切り、地を踏み鳴らした。


「……!」


「神楽。まさかあんたがこんなことをしでかすなんて思ってもなかったよ」


 以前のように、間伸びした喋り方じゃない……


(本気だ……!)


「北区制覇に乗り出すつもりかもしれないけど……まだ早いってこと、教えてあげる」


「!!」


 三田はそう言うと、一瞬で間合いを詰め、こめかみ目掛けて蹴りを放った。


(速い……ッ!!)


「だって北区ここには……うちがいるんだから」


「くっ……!」


『三日月蹴りを使用します』


 三田は三日月蹴りを軽く避けると、その場で回転し──後ろ蹴りを繰り出した。


「遅いよ」


「ガハッ……!?」


(テコンドー……!)


 後ろ蹴り。

 最強の蹴りとも言える威力を誇る、三田の必殺技だ。


 後ろ蹴りの威力は理論上2t程出せるとも言われていて、ヘビー級とは程遠い三田の蹴りでも、数百キロはくだらないだろう。


三田みた かえで

『162cm』『60kg』

『力   B

 俊敏  A+

 知力  B

 耐久力 C』


(簡単に避けられた……俊敏A+はダテじゃないってことか……!!)


 上手く鳩尾に入らなかったから助かったものの、呼吸が出来ない……!


「ほら……白井でもうちとやりあうのは避けるのに、無謀すぎるんじゃない?」


(く、くそ……ここまで威力が高いとは……!)


 北区最強戦力はダテじゃないな……!


 しかし、最初っから必殺技を使ってくるとは想定外だった。


(力が……入らない……!)


「じゃあ……夢はおしまい。腕の一本か二本くらいは……置いてきな」


 三田は再び、後ろ蹴りを放つ。


 次にあれを喰らえば、間違いなく五体満足では済まないだろう。


 しかし、俊敏に差があるからか避けられない。


神楽かぐら じん

『175cm』『58kg』

『力   C−

 俊敏  C−

 知力  D−

 耐久力 D 』


三田みた かえで

『162cm』『60kg』

『力   B

 俊敏  A+

 知力  B

 耐久力 C』


(くそ──!)


 そして──


「カッ……ハッ……!!」


 二度目の後ろ蹴りが、膝をついた俺の胸に直撃した。


「な……!?」


 腕でガードしなかった俺を見て、三田は大きく目を見開いた。


(うそ……!? そんなことしたら、死ぬよ!? ま、まさかうち、人を──)


 三田が困惑した、刹那。


『リカバリーを使用します』

『決戦の時間を使用します』


『アドレナリンを使用します』

『3分間痛みを感じません』


(今だ──!!)


「!!」


 俺は三田の脚を掴み、スキルを発動した。


神楽かぐら じん

『175cm』『58kg』

『力   C− →B

 俊敏  C− →B

 知力  D−

 耐久力 D    』


(──畳み掛ける!)


 そう、初めから、【アドレナリン】で痛みを無効化し、即座に【リカバリー】で回復することで、三田に接近する作戦だったのだ。


 そのために、俺は腕を温存し胸で蹴りを受けとめた。


 結果的に、それは相手の動揺を産んだ。


『狐拳を使用します』


「ぐっ……!?」


「うおおおおおおお!!」


『三日月蹴りを使用します』

『ジャブを使用します』

『アルマーダを使用します』


「つっ……!! この……!!」


 俺の怒涛の攻撃を、三田はなんとか捌き切る。


(くそ……! 【決戦の時間】を使用しても速度が追いつかない……!)


 だが、勝機はここだけだ。


 この5秒で決めなければならない。


 なにか、方法は……!


(サマーソルトを使う? いや! 不意をついたところで、飛び上がっては後ろ蹴りが避けられない!)


 それに、恐らく飛び上がる前の予備動作で読まれるだろう。


(だったら、俺が使うスキルは──!)


「喰らえ!!」


『三日月蹴りを使用します』


「うっ……!!」


 俺は足を振り上げ、弧を描くように振り抜き──


『三日月蹴りをキャンセルしました』


 三田に放つ寸前、足を地につけた。


「……!?」


(かかった……!)


『フックを使用します』


 そう、今の三日月蹴りはフェイク。


 蹴りを放つと見せかけて、足と同時に引き絞る腕を利用したフックを放つ──連携技だ。


『決戦の時間の持続時間が1秒残っています』


 これに全てを賭ける──!!


「ガハッ!!」


「うらァァァァァア!!」


 肋骨に直撃した俺の拳が、耐久力の低い三田に直撃し──


「う……ゴホッ……!」


「はぁ……はぁ……」


『決戦の時間の持続時間が終了しました』


 三田が、倒れた。



『メインクエストをクリアしました!』






──────────


北区最強の単体戦力とも呼ばれる三田を倒した仁。

しかし、安心するにはまだ早く──!?

ピンチに陥った仁は、の使用を決意する……!


次回『開眼・三田楓と【代償】』


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