第18話 才能開花・涼人
「なんだ!?」
「攻撃だ!! 東部なんて俺たちで──」
『三日月蹴りを使用します』
「グハッ!」
「「っ!!」」
俺は飛びかかってきた男子生徒に膝をつかせると、思い切り足を振り上げ、地上で踵落としを発動する。
『踵落としを使用します』
「カハッ……!」
「──檜山と龍を呼んでこい」
俺はそう言って、ニヤリと笑った。
「くっ……!」
能力値がD程度の相手だ。
スキルの力で能力値以上に強い俺の武力は、思わず尻込みしてしまう程度だろう。
「……お前が東部のトップか?」
「……!」
現れた金髪のヤンキーは、俺を見て舌打ちした。
「ったく東部の雑魚が……めんどくせぇなぁ」
『
『165cm』『66kg』
『力 C+
俊敏 D+
知力 E+
耐久力 C−』
檜山……西部のNo.7、幹部だ。
幹部が7人しかいない西部にとって、最弱の幹部ということだが……
(これは……涼人も厳しそうだぞ)
「面倒なのは仕方ない。まだこいつらには恐怖を焼き付けてやってないからな」
更に、No.5の
『
『177cm』『72kg』
『力 C+
俊敏 D
知力 C
耐久力 C+』
「くっ……幹部か!?」
俺はステータスを見て、伊達の言葉を思い出す。
『白山田龍。苗字が長くダサいから必ず下の名前で呼ばせているやつだ』
『は? なんだそれ、ふざけてんのか?』
しろやまだ……
あの時はふざけてんのかと思ったけど、確かにこれは呼びづらいな。
(とにかく、俺が龍を倒して涼人と檜山を戦わせれば……!)
しかしその時、想定外の事が起こった。
「檜山。そっちの相手は任せた」
「うっす!」
「え……!?」
龍は檜山に俺を相手するように言うと、涼人達の方へ向かったのだ。
「なっ……待て!」
「てめぇの相手は俺だ!!」
「っく!?」
檜山は金属バットを振り回し、俺に襲いかかる。
(くそっ……! 早く助けに行かないと……!)
今の涼人じゃ、龍は無理だ……!
『
『167cm』『63kg』
『力 D+
俊敏 E
知力 D
耐久力 C−』
『
『177cm』『72kg』
『力 C+
俊敏 D
知力 C
耐久力 C+』
「オラァ!!」
「っ! てめ、武器は反則だろ……っ!」
「ぬるいこと言ってんじゃねぇぞゴラァ!!」
クソ……っ!
今あるスキルで出来るだけステータスをあげないと……!
『水霧涼人に【俊敏の目覚め】を使用します』
『
『167cm』『63kg』
『力 D+
俊敏 E+(1up!)
知力 D
耐久力 C−』
「ぐっ!!」
「おい、これがNo.2だと? ハハハ! たかが知れてやがるなァ!?」
「よそ見してんじゃねぇぞ!」
「ヴッ!?」
視線を逸らした隙に、檜山が金属バットで俺の左腕をぶっ叩いた。
強烈な痛みと共に、左腕から嫌な音が鳴った。
「チッ……!!」
『ジャブを使用します』
「ぐっ……!?」
ダメだ。
ジャブは早いけど、これなら狐拳でいい。
射程が数ミリ伸びるくらいで、使えない……!
「クソガァ!!」
『アルマーダを使用します』
『クリティカルダメージ!』
「ゲハッ!?」
その場で360度回転し、予想外の柔軟な動きで回し蹴りを食らった檜山は、威力に押されて片膝をついた。
(今だ……!!)
「おい、ちょっとま──」
『三日月蹴りを使用します』
『三日月蹴りを使用します』
『サマーソルトを使用します』
「ぐぇ──」
『『『クリティカルダメージ!』』』
俺の必殺コンボが檜山の顔面に炸裂する。
「な……檜山さんが!」
「クソッ!」
結構時間がとられた……!
(あっちは──!!)
〜〜〜〜〜
「ぐっ!!」
「おい、これがNo.2だと? ハハハ! たかが知れてやがるなァ!?」
龍はそう言うと、涼人の顔に正面から拳を繰り出す。
「グハッ!」
「東部なんてこの程度か! ハハハ! 簡単な仕事だ!!」
「先輩から離れろ!!」
「田村……っ!」
龍に胸ぐらを掴まれた涼人に向かって、田村や一年達は突進する。
が──
「邪魔だモブキャラども」
「カ……ハ……ッ!!」
「!!」
龍の前蹴り一発で、田村は立ち上がれない程のダメージを受け、ダウンした。
一年達は一斉に攻撃するも、龍の配下達を突破することさえままならない。
「クハハ! 雑魚ばかりか! いいストレス発散だな!」
「くっ……!」
(ダメだ……力が入らない……勝てない……)
涼人は田村や一年達がやられていく中、拳を握りしめる。
「ぐぁ!!」
「ふぉっ!?」
「ガハッ!!」
『先輩! お疲れ様です!』
『流石は春蘭のNo.2!』
『ヘッドの右腕です!』
(俺は……違う)
『涼人……その、なんか不良のトップ? 的なのにされちゃってさ……ほら、良かったらNo.2というか、来てくれないか?』
『仁、鮫島先輩倒したんだもんな。一体いつそんな強くなったんだか……よし、分かった。むしろこっちから頼むわ。仲間に入れてくれよ』
(俺は本当に、只の陰キャなんだ……仁みたいに本当は強い、なんてことは無い、只の……)
『先輩! お先に上がらせてもらいますよ!』
『あっ! うわ、マジでか!? そこで三枚出しとかありかよ!!』
『先輩! もしかして人狼ですか!?』
『えっ!? い、いや、違うぞ?』
『先輩……分かりやすすぎですよ』
『『『アハハハハ!!』』』
「ぐはっ!」
「先輩……っ! 逃げてください……ぐぁっ!」
(そうだ……俺は……)
「どうした!? お前らのNo.2はたった数発でダウンして戦意喪失しているというのに、まだやるのか!?」
「そうだ! お前らのトップや幹部に、従う価値があると思うか!?」
(ああ──違うだろ)
『先輩……一生ついて行きます!!』
そうだ。
自分は誰に比べて弱いだとか、形だけのハリボテだとか、何も無い陰キャだの、関係ないだろ。
(俺は──
その時。
涼人の中で、何かが弾けた。
『水霧涼人の才能が開花します!』
〜〜〜〜〜
『水霧涼人の才能が開花します!』
「……!?」
涼人達の方へ向かおうと、立ちはだかる雑兵を相手していたその時。
不意に、クエストウィンドウにそんなメッセージが現れた。
──あの時、手に入れたスキル。
〜〜〜〜〜
『【ピアノクラシック】【回し蹴り】を合成してSSRスキルを製造します!』
『SSRスキル【代償】を製造しました!』
『メインクエストをクリアしました!』
『SSRスキル【才能鑑定】を獲得しました!』
【才能鑑定】
仲間の才能を鑑定できるようになる。
(情報自体は閲覧不可)
【才能鑑定】。
どういうことかはあまり分からなかったが、【観察眼】と併せて使うことでその効果を知ることが出来た。
『
「才能Eって……」
……ま、まぁ?
お、俺にはクエストがあるから?
全然関係ないし?
悔しくねぇから!
……ちくしょう。
「なんとなく分かってはいたけどさ……」
俺は気になって、仲間の才能も確認してみた。
『
〜〜〜〜〜
才能ってのがどういうものか分からなかったけど……
(勉強やスポーツの才能って意味だと思ってたのに……!)
『水霧涼人の才能が開花します!』
『おめでとうございます! 仲間の秘められた才能を開花させました!』
『仲間の覚悟が満ちると、その才能が開花されます!』
『水霧涼人に専用スキルが与えられます!』
“才能”という隠されたステータスだったのか!
『専用スキル【クラヴマガ】を習得しました!』
【クラヴマガ】
路上格闘術のクラヴマガを使用出来る。
(熟練度によって使用出来る技が増える)
「えっ……」
専用スキル!?
俺が目を見開いた、その時。
『【クラヴマガ-喉突き】を使用します』
「ゲハッ!?」
「龍さん!?」
涼人のいる方向から、どよめきの声が聞こえてきた。
〜〜〜〜〜
『
『才能開花!』
『167cm』『63kg』
『力 C+(3up!)
俊敏 D(3up!)
知力 D
耐久力 B−(3up!)』
『専用スキル:【クラヴマガ】』
〜〜〜〜〜
──────────
決意に満ちた涼人が、クエストの力によって覚醒──才能開花した。
才能開花した涼人と龍の決着や如何に……!?
次回『世津円凛』
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