第17話 育成クエスト


「SSR以上のスキルを1つか……」


 俺たちのプチ旅行は、特に問題なく終わった。


 俺は明日から始まる学校、並びに領地争奪戦に向けて、クエストウィンドウを睨んでいた。


「まぁ、解決策は1つだよな」


 【スキルファクトリー】……これでSRスキルを2つ合成してSSRスキルを製造する!


「要らないのは……」


【死んだフリ】

死んだフリが上手くなる。


【ペン回し】

ペン回しが使用出来る。


【痰吐き】

無限に痰が吐ける。


【オペラボイス】

オペラボイスが出せる。


 ……これだな。


「舐めてんだろ【痰吐き】とか。……よし! やってみるか!」


『【死んだフリ】【ペン回し】【痰吐き】【オペラボイス】を合成してSRスキルを製造します!』


『SRスキル【ピアノクラシック】【高音ボイス】を獲得しました!』


【ピアノクラシック】

クラシックをピアノで弾くことが出来る。


【高音ボイス】

高音ボイスが出せる。


「うーん……」


 ピアノはともかく、高音ボイスはいつかカラオケとか行く時に使えそうだし……


「残る要らないRスキルは【一気飲み】か……」


 いっそ【コイントス】とか捨てるか?


【コイントス】

コイントスで表裏を自由に操作できる。


(でもこれ、どっかで活用できそうなんだよな〜)


 なんか、クエストで戦う奴ら、学生の癖にクラブ持ってたりするからな……

 潜入任務とかでカジノとかに行くかもしんないし、使えるかも?


 ……んなことないか。


「つーか、捨てんなら【ストライク】だな」


 確実にストライクが出せるわけでもないし、ボウリングならまだ使うのは先だろう。


「よし……いっちょやってみるか!」


『【一気飲み】【ストライク】を合成してSRスキルを製造します!』


『SRスキル【回し蹴り】を獲得しました!』


【回し蹴り】

空手の回し蹴りを使用出来る。


 戦闘スキルが出たけど……既に【アルマーダ】があるからな。


【アルマーダ】

カポエラのアルマーダを使用出来る。


(360度後ろ回し蹴り……これの方が強そうだろ)


 ええい。勿体ないかもしれないけど……男にはやらなきゃいけない時がある!!


『【ピアノクラシック】【回し蹴り】を合成してSSRスキルを製造します!』


「……!」


 来た……!


『SSRスキル【代償】を製造しました!』


『メインクエストをクリアしました!』


 【代償】……!?


「なんだ? このスキルは……!」


 俺はスキルの詳細を見て、息を呑んだ。


「これは…………」



〜〜〜〜〜



「!! おはようございます!!」


「「「おはようございます!!」」」


「お、おう……」


 連休が明けて。

 登校するなり、下級生達が揃って挨拶をして来た。


 三年生は目を逸らして早足に去っていき、比較的ましな二年同級生にすら避けられている気がする。


(……これが今の、俺の日常。とほほ)


「よ、仁!」


「ああ、涼人。おはよう」


「ん……? 何かあったか?」


「ああいや……」


 俺は涼人の言葉に、曖昧に返した。


(……そろそろ、これもやらなきゃな)


 俺の目の前には、1枚のクエストウインドウが浮かんでいた。


『育成クエスト:東部の戦力の強化』

『1.北部の幹部と戦って勝つ 神楽仁 0/1』

『2.西部の幹部と戦って勝つ 水霧涼人 0/1』

『1.報酬:【力の解放】ⅹ2【俊敏の解放】ⅹ2』

『2.報酬:【力の解放】ⅹ2【耐久力の解放】ⅹ2』


(今の俺たちは、ステータスが低い)


 俺は豊富なバフスキルでなんとかなっている所もあるが、少ない仲間の涼人や田村なんかはそれが顕著だ。


神楽かぐら じん

『175cm』『58kg』

『力   C−

 俊敏  C−

 知力  D−

 耐久力 D 』


水霧みなぎり 涼人りょうと

『167cm』『63kg』

『力   D+

 俊敏  E

 知力  D

 耐久力 C−』


田村たむら 正典まさのり

『169cm』『68kg』

『力   D+

 俊敏  D

 知力  B−

 耐久力 E』


「……というか、仲間がもう少し欲しいな」


 今まともに中心メンバーと言えるのはこの二人だけじゃないか?


 高梨? 知らん。


「やっぱり、攻めるしかないか……」


『メインクエストが開始しました!』


「うおっ!?」


「? 仁?」


 俺がそう思った瞬間、まるで俺の意図を汲み取ったかの如くクエストが現れた。


『メインクエスト:西部の没落』

『達成条件1:西部の領地を奪う 0/3』

『達成条件2:???』

『達成条件3:???』

『達成条件4:???』

『条件1報酬:Rスキルⅹ2、SRスキル』


(……俺が最初に西部を攻めようと思ってたのを知ってたかの如く出てきたな……)


 そう、俺は最初に西部を攻めようと考えてた。


「……涼人、行くぞ」


「え?」


「俺は今から、西部を潰す」



〜〜〜〜〜



「せ、西部を!?」


「つ、潰す!?」


『……ボス、本気か?』


 昼休み。

 俺の「西部を潰す」発言に、田村と高梨はひっくり返った。


「ああ」


「へ、ヘッド。何故西部に?」


 田村の言葉に、俺はホワイトボードを使って答える。


「まず、この北区の中では北部が1番強い。南部は中央区と隣接してるし、それなら西部しかないだろ」


「まぁ……実質的に西部しかないとも言えますが……それでもやはり、最も弱い南部の一部を攻めるなど……」


「理由はまだある。それは──西部の構造だ」


「構造……?」


 俺は皆に言い聞かせるようにして言う。


「西部には幹部が7人しかいない。どちらかと言えば個人戦力で戦う相手だ。北部や南部と違って下級構成員も少ない」


 西部は少数精鋭の勢力として知られている。


 かつて伊達が言っていたように、トップの三田楓みたかえでの力量は半端じゃない。


三田みた かえで

『162cm』『60kg』

『力   B+

 俊敏  A+

 知力  B

 耐久力 C』


(あの時みた、三田のステータス……)


 とんでもない俊敏の高さ。

 それに、力も並ではない。


 伊達が単体戦力なら北区1と言ったのも納得だ。


『……確かに、それは今の俺たちにとって大きな利点だ。だが、大丈夫なのか? ボスはまだしも、幹部達はどうする?』


「……」


『三田の幹部は、それぞれが他校ならトップ級だ。それを相手できる人材がうちにはいない』


 そうだ。

 俺たち東部は領地自体が無く、この春蘭高校1つで生きているが、他の領地は違う。


 例えば三田率いる西部なら、4校を支配下に置いていて、それだけ領土を持っている。


「……まずは、領土を1つ奪うとこから始めよう」



〜〜〜〜〜



姐御あねご! 東部の奴らが攻めてきました!」


「え? 東部が?」


 男子生徒の言葉に、三田は心底驚いたような声をあげた。


「現在No.5の龍さんとNo.7の檜山さんが交戦中です!」


「ふーん……」


 三田はその言葉に、電話を取って連絡した。


「あ、凛ちゃん? ちょっとやって欲しいことがあってさ〜」


「!! まさか、No.2の世津円さんを……?」


「そ、やっぱ1回打ちのめさないと分かんないだろうしね〜」


 三田は軽く笑うと、低い声で呟いた。


「かわいい顔して無謀なんだから。うちのこと舐めてんの?」



〜〜〜〜〜



『とにかく、攻めるというのなら今は戦力を分ける訳にはいかない。分けるだけの戦力が無いからだ』


 悔しいが、伊達の言う通りだ。


 俺達は揃って、まず4つの領地のうち1つを奪うことにした。


『メインクエスト:西部の没落』

『達成条件1:西部の領地を奪う 0/3』


 これは、恐らく三田のいる本拠地、青竹学校以外の三学校から落とせという意味だろう。


「……行くぞ!」


「おう!」

「「「はい!!」」」


 春蘭高校No.1 神楽仁かぐらじん

 No.2 水霧涼人みなぎりりょうと

 No.5 田村正典たむらまさのり


 他1年多数。


 西部のNo.5とNo.7のいる沼倉高校に、俺たちは攻撃を仕掛けていた。


(No.7なら……涼人も勝ち目があるはず)


『育成クエスト:東部の戦力の強化』

『1.北部の幹部と戦って勝つ 神楽仁 0/1』

『2.西部の幹部と戦って勝つ 水霧涼人 0/1』

『1.報酬:【力の解放】ⅹ2【俊敏の解放】ⅹ2』

『2.報酬:【力の解放】ⅹ2【耐久力の解放】ⅹ2』


 これでステータスを上げることができれば、更に強くなれるはずだ。


(行くぞ……強くなるために!)





──────────


新たに現れた育成クエスト。

強くなるため、仁は涼人達と攻撃に向かうが……!?


次回『才能開花・涼人』


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