第15話 【スキルファクトリー】と体育無双!


 本当に、これでいいのか?


『メインクエストをクリアしました!』


 今の現状に満足したままで。


(今回はたまたま、クリア出来ただけだ……この先、もっと難しいクエストが出てきたら? 突然、強い敵に会ってしまったら?)


 その時、スキルだけに頼っていて乗り越えられるのだろうか。


「……」


 ……考えたって仕方ない。


(まぁ、今は新しく手に入れたスキルでも見るか)


 苦労して手に入れた二つ目のURスキル……!


【スキルファクトリー】

下位スキルを合成して上位スキルを製造する。

上位スキルを分解して下位スキルを複数製造する。


(これって、もしかして……)


 それを見た俺は、所持スキルの中から二つを選び出した。


R【臭い息】

臭い息を吐くことが出来る。


R【デスボイス】

デスボイスが出せるようになる。


 手に入れた時、ハズレだと思って放っておいたスキル。


 もしかして、この説明通りなら──


『【臭い息】と【デスボイス】Rスキル2つを合成してSRスキルを製造します!』


「!?」


『SRスキル【アルマーダ】を獲得しました!』


【アルマーダ】

カポエラのアルマーダを使用出来る。


 これは……


(癖になりそう……!)


 もしかして、SRスキルを2つ合成すればSSRスキルになるのか……?


「いや、やめとけ……よく使うスキルばかりだろ、SR以上は……!」


 それはそうと、このスキルって……?


『アルマーダを使用します』


 スキルを使用すると、俺はその場で360度回転する……後ろ回し蹴りを放った。


「!!」


 アルマーダ。

 カポエラの基本的な蹴り技の1つで、360度後ろ回し蹴りのことだ。


(攻撃パターンが増えた!)


 現在俺が使える技は、


キックボクシング 三日月蹴り

キックボクシング 踵落とし

プロレス サマーソルト

空手 狐拳

カポエラ アルマーダ


 この五つ。


(この中ではサマーソルトが群を抜いて非現実的だと思うけど……)


『サマーソルトを使用します』


 数歩の助走で飛び上がり、弧を描くように足を振り上げる。

 これで相手を蹴り上げる訳だが……


(そういや、このスキルで相手を思いっきり蹴り上げた時、足は全く痛くない……というか、ダメージを受けてないよな)


 まぁ、スキルなんてもの自体が非現実的だもんな。考えても仕方ないか。


『メインクエストが開始しました!』


『メインクエスト:敗北は糧にスキルで以て喰らえ』

『達成条件1:仲間達と旅行に行く 0/1』

『達成条件2:???』

『達成条件3:???』

『報酬:Rスキルⅹ10』


「は……? 旅行?」


 どういうことだ?


 クエスト名もそうだが、クエスト内容が過去1番意味不明だ。


 旅行に行くことが敗北を味わった俺のやるべきのと……??


 ……って、待て!!


「報酬スキルが10個だと!?」


 しかも、Rスキルが10個だ。


 今までのスキルは、大体ランクと系統が似通っていた。


 SSR以上のスキルはバフや補助系。

 SRスキルは戦闘スキル。


 そして、Rスキルは俺が最も欲しい日常系スキルだ。


 【狐拳】や【リカバリー】が例外だが、基本的にはそんな感じがする。


 と、なればそのRスキルが10個……


(俺が目指すリア充学校ライフに近づく!!)


 それに、要らないスキルなら【スキルファクトリー】で戦闘スキルに変えればいい。


 そうと決まれば、早速計画だ!


 俺は迫るゴールデンウィークを見据えて、決意した。



〜〜〜〜〜



「あぁ……なんか、平和な学校は久しぶりな気がする……」


「仁……大丈夫だったのか?」


 二年最初の体力測定が終わって、体育は卓球に差し掛かっていた。


「ああ。心配かけて悪いな」


「ったく……無事ならいいけどよ。今度からはちゃんと俺たちにも言えよ?」


「ああ。分かったって」


(俺が待ちわびた活躍の初舞台……!)


 俺には、ピッタリなスキルがある……!


【ドライブ】

卓球のドライブが使用出来る。


(そうそう。こんな時のために俺はメインクエストをやってスキルを集めてきたんだ!)


「じゃあ4人組で別れて〜順番に試合して、勝ち点の記録を忘れずにな!」


「「「はい!」」」


「仁、一緒にやろうぜ」


「おう、涼人、やろうぜ」


 俺達はすぐに2人組になったが、残る2人組が全然見つからない。


(……というか、なんか避けられてないか?)


 この時俺は思い至らなかったが、それも当然だ。


 現在、俺……神楽仁かぐらじんは校内の不良のトップとされていて、水霧涼人も共に昼、集まって下級生たちと集会をしていると噂されているからだ。


 元々陰キャで友達も少なかったことだけあって、全然チームが集まらなかった。


 今もだろって?

 ……黙らっしゃい!!


「なんだー? そこ余ってるか? じゃあこっちと組んで、やってくれー」


「げ……」


 結局、最後まで俺たちは残りのペアを見つけられなかった。


 先生に言われ、3人組の所と合流する。


「あー……じゃ、じゃあやろうぜ」


「ん、お手柔らかに頼むわ」


 俺達は一番端の台に行き、ラケットを取り出した。


「仁……卓球部の3人だぞ」


「ああ……ま、関係ないって。やってみるしかねぇだろ?」


「え……? 仁、もしかして──」


「じゃあ、一試合目は神楽と木村で……」


 俺は涼人に見とけよ、と言って、卓球部の木村と向かい合った。


「11点先にとったら勝利な。い、いくぞ?」


「あっ……!」


 木村のサーブで、一瞬にして一点を奪われてしまった。


(うわ……【ドライブ】なんて使う隙も無かったわ)


 当たり前だ。


 卓球に限らず、スポーツにおいて技一つだけで勝てる物なんてそうそうない。


 だが……


「よし……こっちの番だ!」


『ドライブを使用します』


「っ!?」


 凄まじい勢いで弾け飛んだピンポン玉が、相手の盤を低空で跳ね、一瞬の内に一点を取り返した。


「な──」


「これで同点だな?」


(これはやべぇな……!)


 強烈な縦回転。

 スキルの威力は、どうやらかなりの練度らしい。


『ドライブを使用します』


「うっ……ふっ……!」


『ドライブを使用します』


「な、なぁ……神楽って、卓球やってたのか?」


「さ、さぁ……俺もあんな上手いなんて初めて知ったんだけど……」


「うわっ!」


 結局、一戦目は俺の負けとなった。

 ただ、現役卓球部相手に9-11まで狭れたのは予想以上だった。


「か、神楽……卓球やってたのか?」


「いや……初めてだけど」


「は、はぁ!?」


「ああいや……温泉で何回かやったことはあるけど」


 ドライブだけやたら鋭いから、変に見られたのかもしれないな。


「仁、いつの間に卓球まで!?」


「や、ドライブだけは練習してたんだよな……」


「そんなことあるのか……?」


 俺達は交代し、順番に試合をした。

 3人中1人には勝ったし、かなりの成果をあげられた。


 ドライブしか使えないとはいえ、ほとんど100%決まり手になってたからな。


 ちょっと笑えてしまうくらいの強さだった。


 涼人ももしかして強いんじゃないか……と戦々恐々といった様子で挑んでいた卓球部達は、涼人が普通の強さで安心したようだった。


「う……仁、いつの間にそんな上手くなったんだ……」


 涼人はあまりの戦績差から、下のチームに移動になったようだ。


 逆に俺は1番上の、卓球部組に入れられた。


 体育は2クラス合同だが、卓球部は2クラスで3人しかいなかったからな。

 チームは4人だから、そこに俺が入ったわけだ。


「うわ……神楽って卓球出来たのか」

「てか、ワンチャンなんでも出来るんじゃね?」

「うっそだろ……流石に……?」


(…………)


 そして、2クラス合同ということは……


 隣のクラスの、滝川さんもいるということだ。


 男女で体育館を半分ずつ使って、卓球とバレーボールをしているが……その分、アピールするチャンスもあるかもしれない。


 三年になったらバスケとサッカーもあるし、それまでにはスキルを揃えておきたいところだ。


「いつかは……振り向かせてみせる!」


 俺は新たに決意を抱くと、握った拳に力を入れた。






──────────


新たなスキルを生み出すスキルを手に入れた仁は、改めてスキルの素晴らしさを認識し、クエストを続けることを決意した!

そんな仁に与えられたクエストとは……!?


次回『旅行』


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