第12話 南部攻撃
「……妙だな」
「東部の新トップのことですか?」
白井は一人、呟いた。
「ああ。どうみてもひ弱な体に、歩き方も一般人のそれだ」
「戦う気が無くて気を抜いていただけでは?」
「そうかもしれないが……あいつはルールを知らずに会談に来ていたんだぞ? 普通戦闘に発展するかもと臨戦態勢で挑むところだろう」
今日会談にやってきた神楽仁という男は、ほんとに前トップの鮫島を倒したのかと不思議になるような華奢な体だった。
(前任の鮫島でさえもう少し体つきがよかったぞ?)
つまり、奴には何かある。
「……面白いやつだな」
白井は、仁に何かあると直感し、ニヤリと笑った。
〜〜〜〜〜
「ふぁ〜」
「姐御! どうでした!? 今回の会談は!」
「んー? ちょっと顔はまぁまぁだったけど、清潔感◎! 鮫島なんかより全っ然よかったよ!」
「それは良かっ……て、そうじゃないですよ!」
三田は、配下の言葉に視線を逸らした。
「だって〜……それ以外に感想なんてないよ? 強いて言うなら──」
三田は、先程の交流戦を思い出す。
「──やけに弱かったこと?」
東部のNo.5と名乗った男は、一年だった。
一年でNo.5とはすごいもんだ……と思った一同だったが、実力は期待外れだった。
北部のNo.19と接戦を繰り広げ、何とか勝った程度だったからだ。
(……ま、ほっといていいっしょ)
三田は今までと変わりない東部だ、と思い考えるのをやめた。
〜〜〜〜〜
「ひ、ひひ……東側はあ、相変わらず雑魚だ……」
清水は一人、呟いた。
「そ、それより、三田ちゃん……あ、相変わらず、かわいかった……」
清水は三田の姿を思い出して、恍惚とした表情を浮かべる。
「い、いつか西部を支配して……み、三田ちゃんも支配してやる……ぐ、ぐふふふ……」
清水の頭には、既に東部のことなどなかった。
清水の思考は、既に三田を、その豊満な胸を好きにする妄想で溢れていたのだ。
そして、間違えた。
「そ、そうだ、それまで東部からか、可愛い子を寄越してもらおう。それがい、いい」
〜〜〜〜〜
「ヘッド……やってやりましたよ!」
「あぁ……もう分かったって」
田村は帰り道中、俺にアピールを欠かさなかった。
(知ってるさ……)
『メインクエストをクリアしました!』
『メインクエスト:北区統一に向けて』
『達成条件1:北区会談に出席する 1/1』
『達成条件2:交流戦で勝利する 1/1』
『達成条件3:???』
『達成条件4:???』
『Rスキル【ストライク】【耐久力の目覚め】【臭い息】【デスボイス】【コイントス】を獲得しました!』
【ストライク】
ボウリングでストライクを出す確率が飛躍的にあがる。
【耐久力の目覚め】
仲間一人の耐久力を1段階上げる。
【臭い息】
臭い息を吐くことが出来る。
【デスボイス】
デスボイスが出せるようになる。
【コイントス】
コイントスで表裏を自由に操作できる。
これは……ゴミだな。
(ストライクは……初めて確定じゃなくて確率上昇の日常スキルだな。ランクが低いからか?)
今回手に入れたRスキル五つはハズレだった。
【臭い息】とかなんの需要があるんだよ!
『達成条件3:北部・西部・南部のいずれかを攻撃する』
『報酬:SSRスキル』
問題はこのクエスト……
『攻撃ぃ!?』
「ヘッド! 遂にやってやろうと言うことですね!? 戦闘員を集めて参ります!」
俺が攻撃する、と言った時の反応だ。
『ボス……急ぎすぎじゃないか? 大体、まともな戦闘員も少ないだろ? 俺の部下は貸せないぞ』
「ヘッド! 今日の会談で奴らの力を推し量っていたんですね!? あの程度の奴ら、恐るるに足りぬと!!」
そりゃそんな反応になるだろうな。
てか、俺が一番信じられねぇよ。
「何言ってんだ。勝てるわけねぇだろ」
「え……っ!?」
『……どういうことだ? なら何故攻撃を──』
「まぁ、考えがあるんだ」
そこで、俺は思いついた作戦を話した。
『──1箇所だけ攻撃する?』
「ああ。何も全面戦争する必要はない」
極端に領地が狭い俺たち東部を除いて、他校の奴らは複数拠点を持っている。
そして、そこに幹部と構成員を配置して他地区との境界を牽制しているのだ。
『でも、一体何故だ? 無闇に手を出す必要は無いだろう。むしろ、戦力が集まるまで静かにしておいた方が……』
「それがそういう訳にはいかないんだ」
『……?』
『制限時間:48時間』
この制限時間のせいでな……!!
SSRスキルは欲しい。
いつかまた【再誕】スキルも欲しいし、【イケメン】みたいなスキルもあるかもしれない。
それか、賢くなるスキルな。
(【思考加速】のおかげで考えられる時間は倍に増えたけど、あんまし今のとこ恩恵がないし……)
「で、俺たちが攻めるのは──」
〜〜〜〜〜
「ヘッド……本当に良かったんですか? 南部に手を出して……」
「ああ! 寧ろここが丁度いいんだ!」
田村の言葉に、俺は返す。
(南部のトップは一番弱いし、中央区に面しているから些細なちょっかい程度で動く訳にはいかない)
……と、伊達から聞いた。
「仁……お前、どうしたんだ? ちょっと前から……身長も伸びてるし、別人みたいだ」
肌も綺麗になってるし……と涼人が言う。
「あー……」
涼人の疑問も当然だ。
一緒に体育の成績下位をとっていたような俺が、突然校内一の不良を武術で叩きのめして体力テストで満点をとってるんだからな。
(クエスト……)
そういえば、何も疑わずにクエストを続けてるけど……
……クエストって、一体何者なんだ?
「……何でもねぇよ。ただ……目標があるだけさ」
「目標?」
「ああ──」
俺の目標は変わらない。
文武両道、最高の学校生活を送ること。
そして──
いつか、滝川さんと付き合うことを目標に頑張ってるんだ。
そうじゃなければ、喧嘩なんて嫌なんだけど……
「とにかく! 殴り込みですヘッド!!」
「あっ、ちょいまて──」
田村は目の前の店の扉を勢いよく開けた。
「あ?」
「なんだ、こいつら?」
その瞬間、中にいた男たちが俺たちの方を睨む。
「あ、こいつ知ってるぞ! 東部の新ヘッドだ!」
「……っ!」
「へぇ……リーダーがクソ雑魚って言ってた奴がどうした、殴り込みか?」
「ヘッドになんて口を──ぶっ!?」
その言葉に田村が殴りかかるが、いとも簡単に、一撃で返り討ちにされた。
「!!」
「はっ! こんなやつがNo.5? たかが知れてるのも納得だ」
俺は【観察眼】を使用する。
『
『175cm』『69kg』
『力 C+
俊敏 D+
知力 E
耐久力 D+ 』
これが……No.15だと?
『熊野壮五。南部の幹部で最も弱い奴だ。No.は15、1番東部に近い場所のカラオケを拠点にしていて狙い目だ』
No.のつく幹部で最弱のやつを東部におくとは、やはり東部は舐められているんだな……と思いつつも、ラッキーだと考えていた。
(ラッキーだと?)
「壮五さん、俺たちの分も残しといてくださいよ!」
「南部を舐めてる奴らにはおしおきしてやらないと!」
熊野のみならず、この店には7人もいるのに!?
「くそ……涼人、構えろ!」
「えっ!? あ、ああ!!」
『三日月蹴りを使用します』
「うっ!?」
『クリティカルダメージ!』
『
『165cm』『58kg』
『力 D−
俊敏 E+
知力 C
耐久力 D 』
「「「!!」」」
くそ……数が多すぎる!
全員がこいつみたいなやつならまだしも……!
「ほぉ……ヘッドはヘッドってか?」
「くっ……!」
『
『175cm』『69kg』
『力 C+
俊敏 D+
知力 E
耐久力 D+ 』
こいつを倒すのには時間がかかる!
その間に横から、後ろから他のやつに攻撃されたら終わりだ!
【決戦の時間】を使うか?
ダメだ。【決戦の時間】はもしもの時のために残しとかないと!
(どうする……!?)
その時。
「うおおおお!!」
涼人が、雑兵の一人に殴りかかった。
──────────
自分だって、いつまでも友達が戦うのを見ているしかないのは嫌なんだ!
南部最弱幹部との決着は
次回『【狐拳】』
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