第11話 北区会談


「それでは……行きましょう!!」


「ああ!」「おう……」


 五日後。

 俺たちは四地区がぶつかり合う場所……北区会談の場所に向かっていた。


(五日間……あっという間に終わっちまった)


 東部:春蘭No.1 神楽仁

 No.2 水霧涼人

 No.5 田村正典


 暫定的な序列だが、No.4の高梨には有事の際に備えて学校に残ってもらっている。


 ……正確には、涼人とあまり引き合わせたくないからだけどな。


 俺も高梨のことは嫌いだけど……クエストの途中で仲間にしてしまったやつだ。

 言うことは聞いてるし適当にほうっておけばいいだろう。


「仁……マジでいくのか?」


「残念ながらな……」


 涼人が戦々恐々とした口調でそう言うが、それは俺も同じだ。


『メインクエスト:北区統一に向けて』

『達成条件1:北区会談に出席する』

『達成条件2:???』

『達成条件3:???』

『達成条件4:???』

『条件1報酬:Rスキル、SRスキル』


「……メインクエストじゃなきゃ行きたくねぇよ、そんな怖いとこ」


「え? なんだって?」


「なんでもない」


 五日間……また放課後に外を出歩いて回ったが、サブクエストはそうそう出現しなかった。


(代わりに出現したこのクエスト……)


『育成クエスト:東部の戦力の強化』

『1.北部の幹部と戦って勝つ 神楽仁 0/1』

『2.西部の幹部と戦って勝つ 水霧涼人 0/1』

『1.報酬:【力の解放】ⅹ2【俊敏の解放】ⅹ2』

『2.報酬:【力の解放】ⅹ2【耐久力の解放】ⅹ2』


 育成クエストは最初から報酬スキルが固定されてるようだ。

 その名の通り、ステータスを上げるためのクエストか?


(幹部か……)


 俺は【決戦の時間】を上手く使えば幹部くらい倒せる可能性はあるけど……

 涼人に出来るのか……?


水霧みなぎり 涼人りょうと

『167cm』『63kg』

『力   D+

 俊敏  E

 知力  D

 耐久力 D+』


 涼人も俺や伊達に負けず劣らずの痩せ型、ヒョロヒョロ体だし、俺と同じくつい先日まで唯の陰キャ仲間だったんだ。

 No.2にしたとはいえ、田村にも戦えば負けるだろう能力値。


 格闘技の経験もそりゃないだろうし……どうすれば?


「着きました、ヘッド」


 やがて俺たちは、ビルの建設予定地付近に到着した。


(こんなところを集合場所に指定するなんて……ヤクザかよ)


「ここが─」


「おっ? もしかして……東の新トップ?」


「「!!」」


 不意に、俺たちの背後から凛とした声が掛けられる。


「えっと……そちらは?」


「あー! やっぱり、見ない顔だと思ったし〜!」


 俺たちが振り返ると、そこには背の高いラフな女性がいた。


「うちは三田みたかえで! 知ってるっしょ?」


 三田は、その豊満な胸を揺らしてシシシ、と笑った。


「っ……」


「き、綺麗だ……」


「これは……」


(すごい……)


 俺はを見て、そう思わずにはいられなかった。


(すごい能力値だ……!)


三田みた かえで

『162cm』『60kg』

『力   B

 俊敏  A+

 知力  B

 耐久力 C』


 西部のNo.1、三田楓。


 ステータスには、初めて見るランクが記されていた。


(Aランク……!)


 ガタイのでかい曽我おとなですら、力B+に俊敏C−だったのに……


(力は同等、速さに至っては圧倒的だ!)


「……もう来ていたか」


「お、お前が、新しい東トップか?」


 その能力値に驚いていると、新たに二人の男が現れた。


「おっす〜! これで揃ったっしょ?」


白井しらい はく

『181cm』『78kg』

『力   B+

 俊敏  B−

 知力  C

 耐久力 B+』


清水しみず 武尊たける

『176cm』『70kg』

『力   B

 俊敏  C+

 知力  C+

 耐久力 B−』


(北部No.1に南部No.1……!)


「ったく……どうしてそう仕切りたがりなんだ」


「べ、別に、三田ちゃんの好きにし、したらどうかな?」


「……ちゃんづけすんなし。シバくよ」


 三田がふい、と顔を逸らせば、それに連動して大きな胸がぷるんと揺れる。

 それに、集まった面々は皆目を奪われた。


「目のやり場が……」


「ヘッド。西部を支配したら彼女は必ず引き入れましょう」


「お前らな……」


 それにしても、白井の力も……

 一体どれほど強いのか、想像もつかない。


「お前が東部の新トップだな?」


 白井は、俺の方に歩いてくると手を差し出した。


(で、でけぇ……)


白井しらいはくだ。よろしくな」


「よ、よろしく……ははは」


 どう足掻いたって、勝てねぇな……


「それじゃ、会談を始めるとするか」


『メインクエストをクリアしました!』


『メインクエスト:北区統一に向けて』

『達成条件1:北区会談に出席する 1/1』

『達成条件2:???』

『達成条件3:???』

『達成条件4:???』

『Rスキル【シザース】、SRスキル【3点シュート】を獲得しました!』


【シザース】

サッカーのシザースを使用出来る


【3点シュート】

バスケの3点シュートを使用出来る


『メインクエストが開始しました!』


『メインクエスト:北区統一に向けて』

『達成条件1:北区会談に出席する 1/1』

『達成条件2:交流戦で勝利する 0/1』

『達成条件3:???』

『達成条件4:???』

『条件2報酬:Rスキルⅹ5』


(何気に初めて戦闘以外のSRスキルが出たな)


 というか、交流戦……?


(頼むからこれ以上、変なことに巻き込まないでくれ……!)


「と言っても、東部以外どこも代わりはないか?」


「まーねー。西区も中央区も動きは無ーし!」


「ち、中央区からはたまに末端員が来るくらいで、こ、こっちも特に何も無い」


 白井の言葉に、三田と清水は同意する。


「じゃ、今回も交流戦を始めよう!」


 白井はパン! と手を合わせると、ニコリと笑った。


 その音に、各トップの後ろに控えていた奴らが1歩前に出る。


「な、なんだ? 交流戦って……」


「あ、もしかして前任から何も聞いていない感じか? 簡単に説明しておくよ」


「うそ〜マジ? まぁあいつ、プライド高そうな顔だったもんねぇ〜」


 鮫島はあれから学校にも来てねぇからな……


 てか、三年を仲間にしておけば分かったのか。

 なんか三年生を配下にするって気まずいというか、クエストにも出なかったから放ったらかしなんだよな。


「会談を開くのは、他の区の動きを皆で把握するためだ。だから、会談中は戦闘を禁止している」


「だ、だけど、それじゃ大抵暇、だから、幹部たちを、一体一で戦わせる、交流戦を設けてるんだ」


 なんだと……!?


「それって……俺も戦わなきゃダメなのか?」


「いや? No.1同士が戦えばそれはもう戦争開始だろう。やりたいなら相手になるが?」


 白井は俺の質問に笑って答えた。


(あぶねぇ……トップは戦わなくてもいいのか)


「ひ、東区ごときがな、何言ってるんだ」


 清水はボソボソと呟く。


(何と言うか……南部の清水こいつは根暗なオタクって言うか……挙動不審すぎないか?)


「じゃあ……1戦目の立候補者! 一歩前に!」


 その言葉に、北部から1人が前に出た。


「No.19、一年の前見まえみ 翔吾しょうご!」


 順位と学年も名乗らなきゃいけないのか……!?


(でも、一年でNo.19ならチャンスだ)


『メインクエスト:北区統一に向けて』

『達成条件1:北区会談に出席する 1/1』

『達成条件2:交流戦で勝利する 0/1』


 別になんて書かれてないし、白井の説明的に仲間に勝たせたらいいんだろう。


 なら……


「田村、お前が──」


「承知しましたヘッド! 俺で十分と言うことですね!?」


 言い終わるが早いか、田村は一歩前に出て名乗りを上げた。


「春蘭のNo.5、一年の田村正典! 勝負されたし!」


「っ……! ああ!」


 そうして、北部のNo.19と田村の戦いが始まった。



〜〜〜〜〜



田村たむら 正典まさのり

『169cm』『68kg』

『力   D+

 俊敏  D

 知力  B−

 耐久力 E』



〜〜〜〜〜






──────────


それぞれの領地を束ねるNo.1、白井、三田、清水と会った仁。

交流戦を終えた後、次のメインクエストは……!?


次回『南部攻撃』


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