第8話 コンボスキル


『決戦の時間は使用できません』

『使用回数1/1』


「……えっ?」


「何してる?」


「ガハッ!!」


 クールタイム……!


(そうだ、今朝……)


 俺は、今朝の授業を思い出す。


『今日は体力測定……めんどくせぇ』

『上等よ! 涼人、見とけよ……!』


 握力測定の時──


『48kg』

(【力の目覚め】を使ったけど、こんなもんか……)

『どうだった……お!? 仁、かなり上がってんじゃね!? 流石に鮫島先輩を倒しただけあるな……』


 だが、この時俺にはクエストがあった。


『サブクエスト:体力測定で満点を取る』

『報酬:Rスキルⅹ2』


『【決戦の時間】を使用します』

『ふん……!!』

『68kg』

『え……!?』

『へっ……どうだ!』


(ああ、そうだ……決戦の時間を使ったんだった)


 砲丸投げや立ち幅跳びはスキルや力増加の影響でなんとか満点が取れていたが、握力は遠く届かなかったので【決戦の時間】を使ったんだった。


(それなら、せめてリカバリーを……!)


『リカバリーは使用できません』

『使用回数1/1』


「こっちもかよ!!」


「?」


 そうだ……リカバリーも使ったんだった!


『はぁ、はぁ、72回か……まぁまぁだな……』

『じゃ、測定頼むぞ涼人。仰天するもん見せてやる』

『おう。今度は何をするのか……』


 シャトルランの時に……!


(85……86……87……む、無理だ……!)

『リカバリーを使用します』


 その瞬間、疲れた体も乱れた息も即座に元通りになり、何とか俺は満点の144回に届くことが出来たんだ。


『Rスキル【力の目覚め】【俊敏の目覚め】を獲得しました!』


【力の目覚め】

仲間一人の力を1段階上げる。(使い切り)


【俊敏の目覚め】

仲間一人の俊敏を1段階上げる。(使い切り)


神楽かぐら じん

『175cm』『58kg』

『力   C−(2up!)

 俊敏  C−(1up!)

 知力  D−

 耐久力 D 』


 おかげで能力値は上がったが……


(クソッ!!)


『三日月蹴りを使用します』


「!!」


「なっ……避け……ぐぁ!?」


 苦しながらに三日月蹴りを放つも、蘇我には軽く避けられ、カウンターで俺は吐血した。


「ヘッド!!」


「仁!!」


「……ん。来たか」


 そこに、警備の目を掻い潜ったか涼人と田村が扉の前に辿り着いた。


 大方、残りの一年達と高梨が時間稼ぎをしてくれてるのだろう。


「な……ヤクザ!?」


「おのれ伊達め! なんて卑怯な手を!!」


「卑怯? お前たちが言ったんだろう」


 二人の言葉に、伊達は眼鏡を押し上げ、さも当然のように言った。


「これは戦争だと」


「……っ!!」


(鮫島のやつ……格好だけつけて負けやがって!)


 伊達が言っているのは、以前鮫島が伊達を攻めた時の事だろう。


「あなたも聞いてなかったんですか? 鮫島は以前、ここに攻め込み……僕に灸を添えられ、這って逃げたことを」


「な……っ!?」


「三年生なら知っていると思ってたんですが……まさか、三年生が一人もいないのですか? 二年のヘッドとはいえ、統制も出来ないとは……」


 田村も驚いている。

 田村は一年だ。知らないのも当然だったか。


 鮫島は二年のときから学校のトップで、恐らくその時にここを攻めたのだろう。

 目的は……金か?


「分からせてやってください」


「おう。悪いな、ガキンチョ」


 曽我が拳を振り上げる。


「ヘッド!!」


「仁!!」


 俺は振りあげられた拳をみて……笑った。


(笑った……?)


 刹那。


「……!?」


 俺は飛び上がって、その拳を回避した。


 俺がもう動けないだろうと踏んでいた曽我は、思いっきり地面に拳を打ち付ける。


「い゙っ!?」


(馬鹿な……あれだけ殴られて、まだ動けるだと!?)


 きっと伊達はそう思っているはずだ。

 ここまでは伊達の計画通りだっただろう。


(だがな……俺も無計画って訳じゃねぇんだよ!)


 現在時刻──0:01分。


『リカバリーを使用します』


 スキルの使用禁止時間クールタイムは24時間じゃなくて“1日”だった。

 クエストの制限時間は24時間という表記なのに、何かおかしいと思ったんだ。


(やっぱり、いけた!)


『三日月蹴りを使用します』


「くっ!」


「おらあぁぁぁ!!」


 床を殴ってしまい隙を見せた曽我に、俺はスキルを連続で発動した。


『三日月蹴りを使用します』

『三日月蹴りを使用します』


「くっ……効くか!!」


「あぶっ!」


 だが能力値に差があるからか、曽我は強引に蹴りの合間を縫って突破し、腕を払った。


 何とかそれを避けた俺は、更にスキルを発動する。


「これならどうだ!!」


「!!」


『踵落としを使用します』


 三日月蹴りだけでは曽我には勝てない。

 俺は新たに手に入れたスキルを発動した。


『踵落としがキャンセルされました!』


(えっ……!?)


「……? なんだ!? ハッタリか!!」


「くっ!」


 俺が動かないのを見て、曽我はハッタリかと拳を繰り出す。


(なんでだ……!? どうして発動しなかったんだ!?)


『このスキルを発動するには足を一定以上振り上げる必要があります』


 発動条件!?


 考えてみれば当然か。

 二本足で立った状態からどうやって踵落としを繰り出すんだって話だ。


 じゃあ、敵の目の前で足をおおきく振りあげて使用する……?


(馬鹿言え! 当たるわけないしそんな隙ねぇだろ!)


「クソッ!」


「いい加減に倒れろ! クソガキ!」


「ヘッド!!」


 クソ……! 新しい戦闘スキルを手に入れたと思ったらハズレかよ……!?


(待て……もしかして、なら……!?)


 ふと、頭の中に1つの推測が浮かんだ。


「これで終わりだ!!」


 曽我は大きく拳を引き絞る。

 その瞬間、俺は息を吸いこみ、発動した。


『決戦の時間を発動します』


 決戦の時間あのスキルを……!


【決戦の時間】

5秒間力と俊敏の能力値を4段階上昇させる。

(一日に一度使用可能)


神楽かぐら じん

『175cm』『58kg』

『力   C− →B

 俊敏  C− →B

 知力  D−

 耐久力 D    』


『三日月蹴りを使用します』


「グハッ!?」


「「「!?」」」


(なんだ!? 急に早く……重くなった!?)


 突然速度を増した俺の蹴りに、曽我は一瞬反応が遅れる。


 そして。


『三日月蹴りを使用します』


「カッ……!?」


『クリティカルダメージ!』


 隙を突いた俺の三日月蹴りが、曽我の肝臓付近に大ダメージを与えた。


「!?」


「喰らえ──!!」


『サマーソルトを使用します』

『クリティカルダメージ!』


 バク転の如く飛び上がった俺の蹴りが、曽我の顎を捉えた。


「か……!!」


「なっ……!」


(まだ倒れないのか!?)


 しかし、もろにサマーソルトを食らった曽我は、片手で頭を抑えながらも倒れなかった。


 サマーソルトは強烈なダメージを与えられるが、隙が大きい。

 曽我も、恐らくそれを考えてここしかないと踏み切ったのだろう。


 ──だが。


「……!?」


「──!!」


は、こう使うんだろ……っ!)


『サマーソルトがキャンセルされました』


 スキルのキャンセル。

 さっきは強制的に起こされたことだったが、意識すれば出来るんじゃないか? と思ったのだ。


 そして、サマーソルトを頭上でキャンセルした俺は──


『踵落としを発動します』


 逆さのまま宙で力を溜め、元の姿勢に戻るようにして勢いよく踵を振り下ろした。


「カハッ!!」


『クリティカルダメージ!』


「……!!」

「……!?」


 右踵を後頭部に受けた曽我は、白目を向き……意識を失った。


(なんだ……!? あの非現実的な動きは!?)


「はぁ、はぁ……」


 ──まさにコンボスキル。


『決戦の時間の持続時間が切れました』


 俺は荒い呼吸を繰り返し……伊達の方を振り返った。


「俺の……勝ちだ! 伊達!」


 伊達に向かい、俺は歩み寄る。


 そして、足を振り上げ……


「降参します」


「はっ?」


 伊達は、両手を上げて膝を着いた。



『メインクエストを達成しました!』






──────────


【サマーソルト】の跳躍と【踵落とし】を組み合わせたコンボスキルで曽我を倒した仁。

降参した伊達の思惑とは……!?


次回『伊達裕也』


少しでも面白い、続きが気になる、と思った人はフォロー、及び最新話か目次の下部より★★★をポチッとお願いします!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る