第7話 『参謀の獲得』
「
「はい。高校二年生にして経営の天才で、いくつものクラブを経営している、これ以上ない天才です」
田村が俺たちのいる北区の一角を指して言う。
「彼ほど参謀に適切な人材は居ないでしょう。学校は既に時間の無駄だと行っていないようですし、彼を春蘭に引き入れられたら大きいです」
なるほど……
俺と同級生なのに、クラブをいくつも経営だと……?
どれほど賢いのか想像がつかない。
「でも、そんな人材ならどうしてどこにも所属してないんだ?」
「それは俺から説明しましょう」
俺の言葉に、今度は高梨が立ち上がった。
「伊達はまず北区より外に経営地を広げてません。数多の強豪校が領地を争い喧嘩を繰り広げているこの県において、金を持っている施設は狙われるからです」
この県ってそんなに不良がいたのか……?
いつの時代だよ。
というか、全然知らなかった……一般人にはあまり影響が及ばないようにはしてるってことか?
「更に、ここ北区は県で最も小さく、弱い学校が集まって形成されている地区です。大まかな勢力は4つで、どこも彼を引き入れるため他の区への情報漏洩を防いでいます」
聞けば西区、北区、南区はどこも
更に中央区……
ここには、化け物たちが集まっているとされている。
(中央区ってどんだけ強いんだ? 流石に全員が鮫島以上ってことはないと思うけど……)
あれでも一応、キックボクシングで地区優勝くらいはしてるからな。
【決戦の時間】がなきゃ絶対に勝てなかった。
……このスキル、5秒しか使えないとはいえぶっ壊れだよな。
「あと、俺たちは上納金を取らないんですよね? それなら、別の収入源が必要になります。配下の忠誠心を高く保つには金が必要ですから」
「それで……そいつはどこに?」
「このクラブの奥にいます。ですが、奴の頭脳はピカイチ……どんな罠を仕掛けてるか分かりません」
(んなこといってもなぁ……)
『メインクエストが開始しました!』
『メインクエスト:参謀の獲得』
『伊達祐也を仲間にする 0/1』
『報酬:SSRスキル』
『制限時間:24時間』
制限時間。
新しく現れた項目だ。
(メインクエストが本格的に始まったからと言うことだろうか? それとも何か理由が?)
まぁ何にせよ……迷ってる時間は無いってことだよな。
「よし、伊達を攻撃しよう。
「やってやりましょう! それではいつ頃に予定しますか?」
「今」
「……え?」
「今夜。伊達を引き入れにいくぞ」
〜〜〜〜〜
深夜。
「ふむ」
クラブ『Aqua』の最奥、管理室。
その中に、一人の男が慌てて飛び込んだ。
「伊達さん! 襲撃です!」
「なに?」
クラブ『Aqua』No.1:
彼に、予想外の報告が届く。
「襲撃だと?」
「はい! 春蘭の奴らが攻め込んで来ました!」
(馬鹿な。昨日トップが交代したばかりだというのに、とんでもない行動力だな)
「どうしましょう! 春蘭の奴らは真っ直ぐこちらに向かっています!」
伝達の言葉に、伊達は冷静に言い放った。
「どうやら鮫島のように灸を添えてやる必要がありそうだ。戦闘員を向かわせろ。今仕事中の奴以外全員だ! 急げ!」
「はい!!」
普段伊達から多量の儲けを受け取っている彼らは、伊達の命令にすぐさま従う。
「俺を攻撃した鮫島がどうなったか聞いてないのか?」
クラブ『Aqua』には50人もの仲間がいる。
新トップがどんな奴でも、50人は相手出来まい。
(さぁ、どこまで持ち堪えられる?)
伊達は鮫島が許しを乞いながら這って逃げたのを思い出し、ニヤリと笑う。
しかし、そこで伊達に予想外の知らせが入った。
「ほ、報告……」
「ん? どうした、何か問題か!?」
「そ、それが……春蘭迎撃の件なのですが……」
その言葉に、伊達は息を呑んだ。
(報告が早すぎる! まさか50人もの迎撃部隊が負けたのか……!?)
時計を見れば、23時50分。
配下を行かせてから5分しか経ってない。
「……全滅させたようです」
「全滅しただと!? ……ん? 全滅させた?」
伊達は呆気にとられ、聞き返す。
「はい、それが……簡単に勝てたようです!」
(一体どうなってる……?)
勢いよく攻めて来たと思ったら、簡単に捕まった……?
「連れてきましょうか?」
「いや……放っておけ」
「はい?」
(なるほど、そう来たか……)
伊達は眼鏡を押し上げ、側の男に告げた。
「早速仕事です」
「まさか初日からとは……あまり忙しくはないと聞いたんですがね……」
「私も想定外でした。ですが、これを終わらせればもう仕事は終わりです。もちろん、給料は1ヶ月分払いますので」
伊達の言葉に、男はニヤリと笑って拳を鳴らした。
「そりゃあ楽しみだ。ガキの喧嘩よ、任しときな」
〜〜〜〜〜
「ヘッド……どうするんですか?」
「全員……捕まってしましましたよ!?」
俺は深夜、伊達のクラブに殴り込みに行った。
するとクラブから50人程が現れ──俺達は全滅した。
「……ほんとにこの作戦が通用するのか?」
「じゃあ50人を相手に出来るか? 無理だろ」
涼人の言葉に、俺はそう返す。
(成功するかは分からないけど……こうするしかないだろ)
田村から既に、50人を越える戦力がいることは聞いていた。
一人一人は弱く、一昨日滝川さんに絡んでいた三人の不良程度の能力値だが、人数差が2倍以上あるのに勝てるわけがない。
だから、俺たちは捕まったふりをすることにした。
戦闘後直ぐに負けを演出し、ボス……伊達のいる所かその付近まで連れて行ってもらう。
そして、伊達本人を直接叩くのだ。
「春蘭のNo.1。ボスがお呼びだ。ついてこい」
「……!!」
そしてついに、その時がきた。
「ヘッドだけを連れていく気か!? 俺達も連れて行け──グハッ!」
「うるせぇなぁ、春蘭の雑魚どもが! 敗者は黙って引っ込んでろ!」
「口程にもねぇ雑魚どもがよ!!」
「全くだぜ! ハハハハハ!!」
田村の台詞も演技の一環だ。
最初から、乗り込むのは俺一人と決めている。
『本当に大丈夫なんですか!?』
『お前たち……自分達のヘッドを信じろ』
『……!! はい!!』
(ああ……不安だ)
「ここだ」
クラブ『Aqua』のスタッフ口を抜け、更に最奥の部屋。
(ここが……伊達の部屋)
「さっさと入れ! この──」
「案内サンキュー」
『三日月蹴りを使用します』
「ヴッ!?」
俺を掴んで引きずってきた奴に三日月蹴りを食らわせ、俺は立ち上がる。
「さぁ……出てこい! 伊達──」
俺は勢いよくドアを開け──飛び出してきた拳に、吹き飛ばされた。
「ウブッ!?」
(な、なんだこの力は……!?)
「ようこそ。春蘭の新ヘッドさん」
起き上がろうとする俺の視線の先に、一人の眼鏡をかけた男が現れた。
同い年くらいの声や背に、ひょろひょろな眼鏡男子……
(──こいつが伊達だ)
だが、伊達は格闘術なんてやっていたことはなく戦闘能力は一切ないって聞いていたのに……
なら、今の拳は……?
「なんだ? 一発で伸びたか? 噂以下だな」
「ヤクザ……!?」
(大人……!?)
「誰がヤクザだ」
しまった。
心の声と実の声が逆になった。
とにかく、部屋の中からはもう一人、大人の男が現れたのだった。
「まさかこんなすぐに攻め込んでるとはね。君は前任より行動力に優れた……いや、考え無しと言ったところか?」
「く……その人はなんだ……!?」
「ああ、曽我さんか? 春蘭のヘッドが変わったと聞いて、雇っておいたんだ」
伊達はなんでもないように言う。
雇った……!?
『高校二年生にして経営の天才で、いくつものクラブを経営している大金持ちです』
そう言えば、確かに金持ちみたいなこと……
「お前……
「何を言ってる。これは喧嘩じゃない。戦争だ。俺の事業を奪おうと言うのなら、容赦はしない」
「つーことだ。悪いが、俺も雇われの身なんでな」
く……!
こいつの能力値を確認しないと……!
「な──」
「よそ見か?」
思わず息を呑んだ俺のみぞおちに、曽我の拳が突き刺さった。
「ゲホッ! ゲホ!!」
(うっそだろ……!?)
『
『185cm』『91kg』
『力 B−
俊敏 C−
知力 D
耐久力 C+』
「今日から勤務してもらっていたんだが、早めに準備しておいて良かったよ。そうそう、君にも灸を添えとかなきゃいけないと思ってね」
「く……!!」
凄まじい能力値。
鮫島よりも高い能力値だ。
地区で優勝した程度の鮫島とはレベルが違うってか……!?
だったら【決戦の時間】で……!
『決戦の時間は使用できません』
『使用回数1/1』
「……えっ?」
──────────
作戦が成功し、上手く伊達の懐へと潜り込んだ仁。
しかし、そこで出てきたのは予想外の
次回『コンボスキル』
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