鬼退治の後始末
第37話 鬼退治の後はやる事がいっぱい
島民Aの家に戻り、報告もほどほどに前後不覚に眠りについた。
マサルもキギスもだ。
正午をとっくに過ぎて午後2時、未の刻近くになってようやく目が覚めた。
既にみんな起きているようだった。
……ギギギ
身体のあちこちが痛い。
斬られた傷と筋肉痛のダブルパンチだ。
隣の部屋へ行くと島民Aがいた。
「もう大丈夫で?
まだまだお休みになられた方が良かないでしょうか?」
「あ、あぁ。寝たくはあるが気になる事があるからな」
「モモタロウ様がお眠りになっている間の出来事をお話しますか?」
「あぁ、助かる。教えてくれ」
カミさんに配膳して貰いながら島民Aの話を聞いた。
要約するとこうだ。
・村はお祭り騒ぎで、見舞いの客がひっきりなしに訪れてた。
・長兵衛さんは昼前に船で領主の所へ向かった。
・鬼達はポルトガル船の修理をしている。
・おタミさんは大事なく、今は黒鬼と一緒にいる。
残る敵は事後処理か。
鬼達を助けて大団円にしてくれ、という吉備津彦尊様との約束を完遂するためには避けて通れないよなぁ。(ため息)
受験の作文対策で
『考えが纏まらない時は項目を箇条書きにしてから考えをまとめて、ストーリーを作りなさい』
と進学塾の先生も言ってたし、やってみるか。
食事をしているとマサルとキギスが入ってきた。
「大将ぉ、起きて大丈夫ですかぁ~」
「心配掛けたな、大丈夫だ。
マサルこそキズは痛まないか?」
「平気の平左衛門でさ」
「キギス、長時間の見張りは気力を根こそぎ拐っていく。
お前はお前が思っている以上に疲れているはずだ。
少しでもキツいと思ったら休めよ」
「あざます」
……キギス、お前も現代から来たんじゃないか?
二人とも緊張から解き放たれて明るい表情だ。
成り行きとはいえ、鬼達とガチで戦ったからな。
現代だったらまだ中学生くらいなのに。
「鬼達はまだ船か?」
「みたいで。
鬼の言葉が分かるのは大将だけなんで、話が通じないんすよ。
黒鬼が少し言葉が分かるんですが、今別行動してるんで」
「おタミさんと一緒だと聞いたが」
「離れ離れになりたくないみたいです」
頬を染めたキギスが答えた。
こっちはこっちで難しい問題だな。
◇◇◇◇◇
夕方、長兵衛さんが本土から戻ってきたので、鬼達が占拠していた長兵衛さんの屋敷へ行って話を聞いた。
「長兵衛さん、領主様はいらっしゃるのか?」
「明日、代官様がお出でになります。
お代官様には備前の若侍様が鬼を退治してくれたと報告しました。
出来ましたらお目通り下さいませ。」
「心得た」
聞きたい事はあるけど、長兵衛さんが『退治した』と報告したのは僕が他の鬼を助けることを見て見ぬふりをするとも取れる。
聞き返してしまうと、肝煎としての立場を危うくするかも知れないので敢えて聞かずにおく。
「ところで長兵衛さん、頼みたい事があるんだ」
僕の言葉に少しだけ長兵衛さんの顔に緊張が走った。
「いや、大したことではない。
今日中に箱を用意してくれないか。
この位の大きさだ」
と両手を田舎チョキにして20センチ×30センチの四角を示した。
「深さが一寸くらいで、フタがあると助かる。」
「はぁ、伝が御座いますので声を掛けてみます」
キョトンとしながら長兵衛さんは了解してくれた。
「では明日に備えることにする。
明日はここに来ればいいのかな?」
「代官様は几帳面なお方なので朝が早いと思います。
お早めにここでお待ちください」
「かたじけない」
◇◇◇◇◇
島民Aの家に戻ると黒鬼以外全員の鬼達がいた。
ガタイがイイのが多いから狭苦しいな。
…と思っている事をおくびに出さず、
「ハブ ア ナイス イブニング(お疲れ様)」
と挨拶した。
腕を切られた船員と鉄砲で撃たれた赤鬼ジョンは少しキツそうに見える。
『ジョン、腕はどうだ?』
『悪くはない』
答える赤鬼ジョンの表情は冴えない。
今朝から考えていた事を聞いてみよう。
『スピリッツ(蒸留酒)は持っているか?』
『ブランデーが少しだけある。
飲むか?』
『いや、オレは子供だから。
傷にスピリッツを付けると治りが良くなる。
それと傷に触れる布はクリーンな物がいい。
やってみてくれ。』
電子辞書のおかげで意思疎通が出来るが、もう電子辞書の電池はほとんど無くなり、すぐに切れてしまう。
時間をおいてonにしても数十秒しかもたない。
辞書に頼らずに会話しなきゃ。
「イッツ ヘビー ペイン (それ、すごく痛いぞ)」
暫くしたら長兵衛さんが頼んでいた木箱を持ってやって来た。
何でも島の船大工に大急ぎで作らせたらしい。
さて明日に備えて準備をしようか。
その夜、キギスと島民Aのカミさんに手伝って貰い、明日に備えて準備した。
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