第23話 ひとまずの決着
夜明け前って1番眠い時間だって聞いた事があるけど本当かな?
受験勉強(に見せかけてゲーム)で夜更かしする事がしょっちゅうだった僕には夜起きる事に全然キツさは感じないけど、マサルとキギスには大変だったらしい。
寝ぼけて命を落とすのはシャレにならないから、思いっきりビンタをかまして目を覚まさせた。
「痛ってぇ~、大将って容赦無いよな」
「二度もぶった! おっとうにもぶたれた事無いのに!」
キギス、さすがに女の子には手加減したぞ。
マサルには手加減しなかったけどな。
◇◇◇◇◇
起きてから全員でラジオ体操をやらせた。
ラジオ体操第一だけでは不安だったから、ラジオ体操第二もやった。
頭が起きていても身体はまだ眠っているからね。
こうして万全の準備を整えてから、鬼のねぐらへ向かった。
鬼達は見晴らしのいい場所の大きな家に居座っている。
島の中で唯一塀がある屋敷を根城にしているのも防衛を考えての事だろう。
屋敷の中に居るのは鬼達だけなのは、偵察の過程で確認済みだ。
おそらく寝首をかかれるのを恐れて屋敷に島民を入れていないのだろう。
身軽なマサルが赤鬼ジョンを踏み台にして塀を乗り越え、門の
容易く屋敷内に入れたが、鬼達は全員未だ寝ているみたいで反応がない。
たぶん人質がいる以上手出しが出来ないとタカを括っているのだろうな。
そろりそろりと屋敷に侵入し、玄関前に立つと僕とマサルは刀を抜いた。
よし、殴り込みだ!
戸を蹴破って、大声で叫びながら家中を駆け回った。
「うぉぉぉぉぉ!
鬼は何処だぁぁぁ!
泣く子はいねがぁぁぁ!」
どうせ言葉は通じないから言葉はテキトーだ。
屋敷の中の見取りは赤鬼ジョンに教えて貰い、頭に入っている。
行き止まりで足が止まらないよう、駆け回るルートは決めていた。
寝込みを襲われてどこが安全か分からない慌てた鬼共が、着の身着のまま下着姿で得物を持って外に出た。
そこを屋根の上に上がっていた島民Aが魚取りに使う投網を投げ 、鬼共の身動きを封じた。
そこをキギスが槍の柄の方で殴って突いてボコボコにした。
網に絡まった鬼達は亀のように丸まっている。
槍でグサって殺れば簡単だけど女の子のキギスにそんな事をさせたく無いし、鬼を殺さないよう厳命もしてあった。
マサルも加勢して、持っていた刀でなくその辺にあった棒切れで鬼3人の顔以外をメッタ打ちにした。
二人にはまだ鬼助けの事は話していないが、鬼を無闇に殺さないという命令に素直に従ってくれている。
そして少し遅れて宣教師が鉄砲を持って現れた。
「引け、マサル! キギス!
石礫の武器を持っているぞ。
島民A、物陰に隠れろ!」
宣教師は屋根の上に島民Aが居ることも投網を使って身動きを封じていることも知っているから、屋根の上を警戒しながら鉄砲をこちらに向けている。
「弓矢と同じだ。
遠くて動く相手に命中させるのは至難だ。
離れろ!
動いて的を絞らせるな!
連射は出来ない!」
マサルとキギスに鉄砲の的にならないよう注意を与える。
迂闊に踏み込まない僕と的を絞らせない動きをする二人を見て、宣教師は僕らが鉄砲がどうゆう武器であるかを理解している事に気づいているみたいだ。
赤鬼ジョンもいるからな。
僕は右耳の横に刀を立てた八相の構え、爺さんに教わった型で鉄砲を向けた宣教師と対峙する。
距離は約10m。
鉄砲を狙う側からすると一発で命中させるのには遠く 、狙われる側からすれば簡単に命中しそうな微妙な距離だ。
しかし僕が距離を取れば、鉄砲の狙いがマサルやキギスに向いてしまう。
神経を研ぎ澄まして宣教師の一挙一動を凝視し、いつでも斬りかかれる体勢をとる。
僕と宣教師との間に張り詰めた緊張感が漂う。
「えいっ!」
不意にキギスが槍を投げた。
全然届かない投擲だったが、思いもよらない攻撃に一瞬宣教師は意識が僕から離れ、銃口がこちらから逸れた。
「今だ!」
僕は全力でダッシュし、宣教師との距離を一気に詰める。
それを見た宣教師は一瞬遅れて鉄砲を構え直し、引き金を引いた。
が、弾は発射されなかった。
宣教師の意識が逸れた瞬間、屋根の上にいる島民Aが宣教師に桶の水をぶちまけたからだ。
火縄が湿って発火しなかったのだ。
そんな上手くいくはずがあるのか? とも思ったのだけど、主人公補正の力でゴリ押ししたというのが正しいのかも……。
弾の出ない鉄砲は単なる鉄の筒。
剣術だったら宣教師ごときに負けるはずもない。
鉄砲で殴り掛かってくる宣教師の胴体を深々と切り裂いた。
僕は生まれて初めて人を殺した。
そしてはみ出る内臓を見て僕は胃袋の中身を全て吐き出してしまった。
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