第13話 『桃太郎の世界』と転生の理由
『元々、『桃太郎』の話とは我がモデルとなった話なのだ。
現代で言う古墳時代、というのは知っておるな?
我はその古墳時代に生きた神に連なる系譜の者だった。
しかし彼の者は鬼ではなかった。民に慕われる異国の者だったのだ。
彼の者、
それなのに我をモデルにした筈の『桃太郎』は我が犯した罪を繰り返しているのだ。
時代が
敵を鬼だ、悪魔だと決め付けてしまえば何をしても許される?
鬼からすれば『桃太郎』こそ悪鬼ではないか。
頼む!
鬼を殺さず皆が平和に解決する道を探してくれ。
我が分身でもある『桃太郎』に人の道を外させないで欲しいのだ』
吉備津彦尊様、やはり良いお方なんだな。
でも、何で僕?
…と思っていると吉備津彦尊様が考えを読んだかのように答えてくれた。
そういえばさっきもそうだったな。
『まずこの世界とは価値観の異なる者でなければならなかった。
しかし大人では『桃太郎』になれぬ。
幼すぎたらこの世界の価値観に容易く染まってしまうだろう。
ギリギリなのが其方の年齢なのだ。
しかし現代の日本で生まれた子供の98%は成人を迎えるのだ。
適合者はそうそう居らぬ。
もちろん誰でもいい訳では無い。
其方の魂は眩い光を放っていたのだ。』
「何となく分かったような気がします。
でも、どうやって収めればいいんですか?
とてもじゃないですが、子供の僕に解決出来る自信なんてありません」
『不安はもっともだ。
これまで其方は『桃太郎』として道を外さずに行動してきた故、ずっと見守ってきた。
だがこのままでは土壇場で逃げ出すつもりでおったから、こうして夢枕に立ったのだ』
あ、これ夢だったんですね。
あと僕の考え、バレバレだったんだ。
つーか、見守る前にもっと早く教えて欲しかったよ。
『神と神に連なるものは俗世界には不干渉が基本なのだ。
神にとって都合の良い世界というものは退屈極まりないのだ。
さて、どうやって解決へ導くのか?だったな。』
「はい、この先僕はどうしたらいいのか知りたいです」
『では心して聞きなさい。
それはな……
何をやっても良いのだ』
「へ?」
何か一気に冷めた。
今までの話が全部ひっくり返っちゃったよ。
やっぱ逃げる準備するか?
『まてまてまてまてまてまて。
誤解するでない。
何をやっても上手くいく、という意味なのだ』
「よく分かんないんですが」
『つまりだな、
この世界は我が創った『桃太郎』という昔話の中の異世界で、其方はこの世界の主人公なのだ。
そしてお安い話の主人公には『主人公補正』という力が働く。
ピンチの時には思わぬ味方が現れて助けてくれて、現実世界ならば社会的に抹殺されるレベルのセクハラをやってもツンデレなヒロインに許されて、更には惚れられてしまう。
朝食のパンを咥えて道を走ったら可愛い女の子とぶつかるのもこの力だ。
実力差のある相手と対峙したとしても、苦戦はすれども何故かギリギリ勝ててしまう。感動的な逆転劇でだ。
例え負けたとしてもバットエンドにはならぬ。
それは皆、主人公補正という名のチートなのだ。
業界では『ご都合主義』とか『シナリオ通り』とも言うがな』
おいおい、お安い話って言っちゃったよ。
いいの?吉備津彦尊様。
言葉のくだけ具合が親しみ2倍、尊さ半減だし。
でも何か吉備津彦尊様と父さん、やっぱ言い方がそっくりなんだよな。
オタクな大人は皆こうなのか?
『そうそう。言い忘れておったが 、其方の父は我の子孫だ。
その子供でもある其方も当然、我の子孫だ』
えぇっ、何か特別感出てきたー!
『我は1700年前に吉備の地を治めた者。
吉備の出身の者はほぼ全て我の血族なのだよ(笑)』
ガックシ_| ̄|○ il||li
『何をしても良いとは言ったが、人の道だけは外さないでくれ。
鬼は全員で13名いる。
しかし悪党と呼べるのは3人だけだ。
残る10人を助けてやってくれ。』
「悪党って言うと、暴れ回った黒鬼とか?」
『いや、違う。むしろ黒鬼は心優しき者だ。
奴隷として反抗が出来ぬことをいい事に、悪党どもは危険な仕事を黒鬼に押し付けておるのだ』
「どうすればいいかまだ分からないけど、やる気は出てきました」
『うむ、頼むぞモモタロウ。
其方には志半ばだった現代に代わり、この世界で幸せになって欲しい。
そして願わくば幸せを皆に分かちあい大団円を迎えて欲しい。
感想的なストーリーで週間ランキング入り、そして書籍化、更にはコミカライズ、果てはアニメ化を目指すのだ。
2期目に突入ならばパーフェクトだ!』
……吉備津彦尊様、僕のヤル気を返して下さい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます