第8話

次の日、レストランに行くと、秋山くんの姿が無かった。「あの、秋山くんは?」私は恐る恐る店長にきいた。「あー、彼ね。さっき、退職届を持ってきてね。何か事情があって、やめるみたいだよ。」と店長。拍子抜けした。しかし、昨日帰り際に「さようなら、」と言っていたし、もうやめる気だったのかもしれない。「そうですか。」正直、彼がいなくなってほっとした。これでいつもの日常が戻ってくる。店長だけが「なぜなんだ、何が不満なんだ。」と悔しがっていた。

私はいつものようにレストランの仕事を終え、帰っていた。夕日も山の中に帰っていく。どこかから涼しい風が吹いてくる。すれ違うおじいさん。いつもの帰り道。そのときビューっと強い風が吹いた。

うわっ・・・

「秋山くん?」

気が付いたら彼の名前を口にしていた。もしかしたら、と思った。もしかしたら、秋山くんは自然の妖精か何かだったのではないのだろうか。

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風に乗せる歌 甘夏みかん @na_tsumi

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