第7話

次の日、秋山君にデートに誘われた。秋山くんがまた泣いてしまったらどうしよう。何が起きるんだろう。怖くて断れなかった私はデートすることにした。

「どこ行くの?」「ごはん食べに行こうよ。」私たちが訪れたのは旅館の近くにあるイタリアンのお店だ。「ここ、高いとこだよ。大丈夫?」「大丈夫。僕に任せて。」秋山くん、大学生なのに頑張ってるな。私たちはアーチをくぐって、ライトアップされた庭を歩いていった。その先には、教会を思わせるような洋風の白い建物があった。私たちはその扉を開けて中に入った。

「佐々木さん、何食べる?」私はおすすめ、とかかれているメニューを指さしていった。「フォアグラのステーキとかおいしそう!でも高そうだよね。」「大丈夫だよ、僕が払うから。」と得意げな秋山くん。気が付いたらお店はムーディーな雰囲気が漂っていた。照明も暗くなってロマンチックだ。秋山君はうっとりするように私を見つめている。「えへへ・・・」

頼んで出てきたステーキはとても少なかった。「あはは、少ないね。」「ほんとだね。」

私は「ちいさいね。これだけじゃ足りないかも。」そう言って笑った。冗談のつもりだった。「そっか・・・」秋山くんが両手をお皿にかざすと、ステーキがみるみるうちに大きくなった。「わあっおっきくなった!」というと、秋山くんは誇らしげに笑った。「はい、これでお腹いっぱいになるよ!」目の前には大きなフォアグラのステーキが。

「あ、ありがとう・・・」別にこんなことしなくても良いのに・・・。嬉しいけど、ちょっとだけ困ってしまう。

そして何より、秋山君が泣いてしまわないように、それを考えるので精いっぱいだった。

私だめだ。やっぱり気持ちに嘘はつけない。こんな気持ちで秋山くんと付き合えない。帰り道、私は口を開いた。「秋山くん、今日はありがとう。」「うん、楽しかったね!」秋山くんは100点満点の笑顔でそう答えた。「それで、言いたいことがあるんだけど・・・」「うん!何?」「ごめんね。やっぱり私、秋山くんとは付き合えない。」

言えた。だけど、秋山くんはきっと悲しんでしまう。泣いてしまう。そしたらどうなっちゃうの??「そっか・・・」秋山くんはそう言った。

「あ・・・」しとしとと雨がふりだした。とりあえずほっとした。秋山くんを見ると、目に涙を浮かべている。彼は「さようなら、佐々木さん」と言った。

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