第3話
店長が去って、私たちはいつものように開店の準備を始めた。朝食はバイキング形式だ。
「いらっしゃいませ。」初めのお客さんがきた。
私は小太郎くんと裏の部屋に行った。「これが、チェックシート。挨拶とか、片付けとかいろいろあるよね。これを毎日マルしてね。これが全部できたら、一人前っていうことだから。」店長に言われた通りに説明をする。「秋山くんはバイト初めてだから、一つ一つ覚えていこうね。」そういうと、秋山くんは笑顔で「はい!」と返事をした。爽やかだなー、と思った。さすが大学生。笑顔が輝いている。「朝はバイキング。お客さんがきたら、ここで言われる卓に案内してね。」そういって立っているスタッフを指さした。秋山くんは「はい!」と返事をした。
一日の業務が終わり、小太郎くんとチェックシートを書く。「挨拶は大きな声でできていたね。いらっしゃいませとかも、良い感じだったよ。」「ありがとうございます!」「これはマル。と」「掃除、はコロコロをやったね。他のところはまだ教わってないから△だね。」チェックシートも書き終わった。「じゃあ、お疲れ様。また明日。」そういうと、彼は笑顔で「お疲れ様でした!」と答えた。彼の目がキラキラ光っていたのがやっぱり気になった。
家に着いた。ふう、無事今日も一日を終わらせられたことにほっとする。窓を開けた。涼しい風が入ってきて、どこからか虫の鳴き声がきこえてくる。ここにいると自然に包まれている感じがする。いつだって。お風呂に入ろうと思い、ふと鏡を見た。彼のことを思い出した。あの希望に満ち溢れた顔。キラキラした目。私の持ってないものだ。私が大学生の時だってあんなにキラキラした目をしていた人はいなかっただろう。彼はまるで子供のようだった。大学生なのに。私が大学生だった時はどうだっただろう、とふと思った。私はあのころ、人生に諦めきった顔をしていただろうし、今だって同じようなものだ。
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