第8話 第16回大賞受賞作「幕末魔法士 -Mage Revolution-」
今回は第16回(2009年)電撃小説大賞受賞作「幕末魔法士 -Mage Revolution-」を取り上げたいと思います。
後書きにて「明治維新を成し遂げたのが、
時代小説的な地の文に魔法要素をぶちこんだという試みが評価されての受賞だったと思うのですが、結果から言うならばこの作品は当たらなかったんです。
続巻は3巻までで、ストーリーは相棒的存在の失本冬馬が拐われたままリアルタイムで10年以上が経過しているので正直なところを言うならシリーズ全巻を読むのはオススメできません、中途半端で悶々が残ります。
しかし、1巻のみを読むなら完成度が高くて面白いのは間違いありません。
なにしろ
たとえば「神聖ローマ帝国の司教領ヴュルツブルク生まれの魔法士、フィリップ・フランツ・フォン・シーボルト」なんて紹介が出てきますが、この文章の嘘は「魔法士」だけで、他は全て本当なんです。
いかにも魔法使えそうなシーボルトが高名な魔法士として存在して作中に影響を与える(※ちなみに過去エピソードの中でしか登場しません)という点もいいですし、シーボルトの孫が主要登場人物というのも適度にいい。
主人公は適塾の塾生の長州藩士で男装の麗人という属性てんこ盛りですし、適塾が魔法学校としての側面を持っているトンデモ設定もいいです。
とにかく物語の設定である「幕末×魔法」というのがいいんです、夢が広がります。
特に1巻は松江藩という地方での事件を扱っていて、まだ坂本龍馬も桂小五郎も新撰組も登場しないエピソードです。
この1巻を読み終えた後の「ここから壮大な魔法明治維新物語が始まるんだ…!」という期待感が否が応でも高まります。
本当に高まるんです。
嘘と史実が絶妙な割合でブレンドされていて、この物語の先を読んでみたくなります。
ただ、結果としては3巻で打ち切りだったのですが…。
そりゃ個人的にはてんこ盛りの設定の上にク⚪︎ゥルフネタはやり過ぎじゃなかったかな、とか、そもそも文章のフォーマットが時代小説に寄り過ぎていて若い読者にウケなかったんじゃないかな、などは思います。
それにしても惜しいシリーズだったなあ、と10年以上経ってからも思うシリーズです。
今なら全巻がkindleunlimited入りしているんで、ぜひ読んでみてください。
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