第9話 第15回大賞受賞作 「アクセル・ワールド」

 今回は第15回(2008年)電撃小説大賞受賞作「アクセル・ワールド」を取り上げたいと思います。


 15年前の受賞作ながら現在まで続く大人気シリーズ。

 2023年までに26巻の小説に、アニメ化、映画化と人気ライトノベルが歩んだ人気シリーズとしてのメディアミックスを経験しています。

 作者の川原礫氏は同時期に「ソード・アート・オンライン」を小説投稿サイト「小説家になろう」から電撃文庫で書籍化して、こちらも人気を博して2010年代を代表するライトノベルとなりました。

 そんな事情はライトノベル界隈ではよく知られる伝説です。


 そんなことを抜きにして本作を読んでみても、まあ面白い。

 ライトノベルのお約束というより、エンタメ小説のお約束をきっちり守って、かつミステリもしている。

 割と多くのライトノベル新人賞作品をよんでますが、ここまでレベルの高い作品って滅多にないです。

 本当に厭味なくらいエンタメとしてのレベルが高い。

 1作品としてまとまっていながら、「大きな物語の序章」としての役割も担っていて、この1巻の先に長大な物語のポテンシャルを秘めていたりもします。


 加えて、いじめられっ子の主人公による「負け犬から尊厳回復」の物語であり。加えて寝取られ要素(どっちかというと寝取り?)すらあるんです。

 読んでて実に気持ちいい。

 総じて考えるとこの「アクセル・ワールド1」はミステリ、寝取られ、SF、勧善懲悪、立身出世、裏切り等々のエンタメ要素がぎっしりと詰まっているんです。

 そりゃあ作者はライトノベルの覇権もとるよなあ、という感想しか出てきません。


 完成度が高すぎて、逆にちょっとひく。

 そういうレベルの作品です。


 あと、そういう作者の「レベルの高さ」とは別に思うことなんですが、悪役の解像度の高さというか粘着質的な描かれ方が特徴的だよなー、読んでてイヤになるくらいに昏い情熱でネチャネチャしている感があっていいよなー、と思ってます。



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