第4話 第4回大賞受賞作 「ブギーポップは笑わない」

 今回は第4回大賞受賞作「ブギーポップは笑わない」を取り上げたいと思います。


 この文章を書くときに、作品の周辺情報はあまり触れないようにはしているのですが、この作品がライトノベルというジャンルに与えた影響は非常に大きく、ライトノベル45年くらいの歴史の中でオールタイムベストを決める際に必ずどこかに出てくる作品でもあり、影響力というのを加味して考えざるを得ません。

 作家の誰それはこの作品に影響されて××を書き始めた等々…などのエピソードの枚挙に遑がなく、2019年にはユリイカ(青土社が刊行する月刊誌)がブギーポップ特集号を出すくらいであり、wikipediaを読めばその一端が書いてあるので、詳しくはそちらの方を参照してほしいです。


 この文章はあくまで「ブギーポップは笑わない」のみを読んだ感想の話になります。


 とはいえ、この作品は現在50作品以上存在する「上遠野浩平世界」の最初の作品であり、後続の作品(ほとんど読んでいます)を読んでいると、どうしても「この作品のこの要素が後々〜、」みたいな筆者の厄介な側面が現れるかもしれないのでご容赦ください。


 と、こんなに周辺要素のが賑やかな作品ですが、実際のストーリーは、


「ある学園に人喰い怪人が現れて、それを変身ヒーローが倒す。あと何か変な宇宙人もいた」


 という一行に集約することができます。

 こんな単純なストーリーを五人の登場人物の視点からの連作短編という構造をとり、時系列を行ったり来たりして描くことで実に奇妙で豊かな読書体験を得ることになります。

 また、この五人がヒーロー・ヒロインという存在ではなく、普通のヒーロー物であれば端役なり傍観者に相当する(末真和子と早乙女正美が端役かどうかの論議は敢えて避けます)人達であり、事件の辺縁から徐々に折り込んでいって真相がわかっていく、このストーリーテリングが最高なんです。


 また、後々シリーズにとって重要になってくる「炎の魔女・霧間凪」の存在。

 この人も第1作目だけだと、なんだかよくわからない人なんです。

 事件に関係しているけど、割と空回りもしているし、××れたりもする(これは後々すごいことだなー、と思うことになりますが)。

 あるシリーズの主人公がなんかたまたま他の作品に顔を出して、見せ場なく退場していくような座りの悪さ。

 実にいいです。


 そして、何より私が好きなのは第1話「浪漫の騎士」で、バトルもないし、ナニも起きない話。

 ただ屋上でブギーポップと竹田啓司が話すだけで、なんとなく解決したような気がする不思議な話。

 このブギーポップと竹田の話という形式は、後に散発的に「竹泡対談」としてエッセイの如く発表されるのですが、まとめて作品に収録されたことがないんで、どこかで作品になることを熱望しておきます。


 と、ここまでこんなに優れた作品だと語ってきましたが、筆者は実は同じような連作短編構造になっている「夜明けのブギーポップ」の方が好きだったりします。

 両作品、なんなら上遠野浩平世界作品の全部をお勧めしときます。

 奇跡的?に電子書籍でほとんどを揃えることができます。


 それでは、今回はこんなところで。


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