第3話 第29回大賞受賞作 「レプリカだって、恋をする。」
今回は第29回電撃小説大賞受賞作の「レプリカだって、恋をする。」を取り上げたいと思います。
前回の「五霊闘士オーキ伝」から一気に29年も時代が飛びました。
ライトノベルというジャンルのレーベル数や読者層も大きく変化していますが、主人公が高校生という点は変わってないですね。
静岡を舞台に「少し不思議」テイストの設定で登場人物の心情が鮮やかに描かれる恋愛小説です。
電撃小説大賞の大賞作品はファンタジーやバトルものが多い印象でこういう作品はメディアワークス文庫でライト文芸作品として出されることが多いので意外な印象でもあります。
主人公はレプリカ。
この言葉は初出で「
この作品の受賞時のタイトルが「ドッペルゲンガーは恋をする」だったんで、元々はドッペルゲンガーという言葉だったんだろうとは推察できますが。
このレプリカ視点で話は進んでいきます。
オリジナルの人生においての「辛い」や「面倒臭い」を代行してくれるコピーロボット(「パーマン」のアイテムですが若い人にはわかりづらいかもしれません)的な存在。
オリジナルに限りなく近いけれど決定的に違う、そういう面が強調して描かれます。
なにしろ最初の一文が「私は、ベッドで眠ったことがない」というものです。
オリジナルが願えば便利に現れて、消耗品の使用量を気にして、靴の踵を履き潰さないように気をつけて、夕ご飯を家族と食べたことがないことを残念に思っている。
このように居候のようなレプリカの肩身の狭さを序盤で見せつけられます。
架空の存在を文章の実在感で感情移入させて、彼女にとって「大事なもの」ができていく過程が実に面白いです。
また、この作品は「ある事件における主人公視点のお話」である点も興味深いです。
序盤〜中盤で主人公にイヤなことを代行させるオリジナルの愛川素直には読者からのヘイトが溜まりますが、彼女視点のストーリーを想像すると軽くホラーといっても過言ではないんです。
実際に「世にも奇妙な物語」に「贈り物」というパーマンのコピーロボットをネタにしたエピソードがあり、イヤなことを代行させる側の視点を描いたこの作品はホラーとなっていました。
そんな怖い側面がありつつも、割と落ち着くべきところに着地する感のあるラストも好きでした。
現在において原稿用紙&郵送で原稿を募集している新人賞がどれくらいあるのかというツッコミも頭をよぎりましたが、ネットで応募すると言うのも味気ないから難しいところです。
ただ、この作品は電撃文庫よりメディアワークス文庫のが適当だったんじゃないかとも思う作品でした。
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