第2話 第1回大賞受賞作「五霊闘士オーキ伝」

 今回は「五霊闘士オーキ伝」を読んでみました。

 第1回電撃ゲーム小説大賞(※第11回まではこの名称でした)の大賞受賞作品となります。

 著者は土門弘幸氏。

 若干18歳にしてこの作品で電撃ゲーム小説大賞の大賞を受賞してデビューしています。

 刊行は1994年10月、ほとんど30年前の作品になりますね。

 なので作中にはスマホもインターネットも登場しない、まさに一時代前の日本の情景が描かれることとなってました。

 個人的にはこちらの方が非日常的要素よりも楽しめたりもしました。


『黄金週間最後の三日間。五月五日のこどもの日は、その最終日である。以降九月十五日の敬老の日まで、日曜日や夏休みはあっても祝日はいっさいない。』

→現在はこどもの日と敬老の日の間に海の日と山の日がある。


『丸々と太ったおばさんで、保母をやっている。』

→「保母」「保父」は1999年に「保育士」に名称変更。


 90年代的なエッセンスというものが(おそらくは意図せずに)多く盛り込まれており、懐かしさすら感じるのが面白い点でもあります。

 さて、ストーリーの方は主人公の高校生は事故的に宇宙人に瀕死させられてしまい、能力を授かって悪の宇宙人と戦うというどっかで聞いたことのあるストーリーでした。

 他にも、


 5人揃って戦う戦士たち。

 一般市民に知られないように結界を敷いてバトルシーン。

 敵は六舞衆という忍者みたいな怪人たち。

 ヒロインは卯爛(ウラン)という名前のロボット的美少女。


 …なんと言いますか、他のエンタメ作品(ウルトラマン・戦隊モノ・宇宙刑事モノ・山田風太郎的忍者)からオマージュ的に取り込んだ要素が多い作品だな、というのが印象に残りました。


 その上、キャラクターが多い。

 主人公、ヒロイン、仲間5人に敵が6人、主人公の家族に友達。

 実に14〜15人のキャラクターが1冊の中で活躍するわけで、正直、どのキャラクターも印象に残りません。


 また、そこそこの残酷描写があって、これは作品全体にピリッとした印象を与えてくれてよかったです。


 しかしながら、全体としては「よくあるラノベ」という感じになってしまっている感が否めません。

 この感想も2023年という未来から見てみた、という観点ではありますが。

 現在、電子書籍化はされておらず、図書館で探すか古書を求めるかでしか読む方法はありませんが興味のある方はどうぞ。

 

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