第102話:セイなる夜、ホワイトクリスマス



 入った順に、お風呂から上がり。


 四人ともバスタオルを巻いただけの姿でリビングに戻る。


 リビングは、すでに少し暖かめの暖房。


 この姿でも、快適に。


 むしろ、この後の白熱を考えれば、温度を下げてもよいくらいか、と。


 温度もあるが、明るさも。


「灯りはこのままでいいのかな?」

「雰囲気出すなら、常夜灯にした方がいい?」

「それだとよく見えないかも?」

「恥ずかしい気もするけど……まぁ、このままでいいか……」


 バスタオル姿でプチ家族会議の結果。


 灯りはそのままで、と。



 『行為計画』の内容を再確認して、署名サイン


 今回は、初めて『同伴』の同意も書き加えて。



「じゃぁ、はじめましょう、かぁ……」


 家長の音頭で。


 『セイなる夜クリスマス前夜イヴ』の、うたげの、はじまり。


「私と美里でお手本、見せるからぁ、その通りにやってみて、ねぇ?」


 雪枝と美里の母カップルが、ソファに腰掛け、上半身だけを向かい合わせに、抱き合い、先ずは、口付けから。


 対面のソファで母達を伺いながら、雪人とアカネが、母達を真似て口付ける。


 ちらちら、と、横目で母達の動きを追い、追従し、動きを真似る。


 やがて。


 少しの躊躇も有りはすれど、最終的にバスタオルもはだけ。


 ソファに寝そべった雪枝にあわせて雪人もソファに寝そべると。


 美里が雪枝の上に、アカネが雪人の上に、足と頭をして覆い被さって。


 先ずは、行為計画、Bの十。


 先ほどに、お風呂場では見るだけだった場所に。


「雪人ちゃんも、アカネも、優しくよ、優しく。そぉっと、ね?」


 そっと、優しく。


 今度は。


 指先で、触れ。


 これまでは、衣服の下、手の感覚、感触だけで触れていた部分を。


 きちんと参照しながら、触れてゆけば。


 もちろん、これまでとは違った感触に。


 戸惑いと、期待と。


「さぁ、もう、そろそろ……次は……こんな風に」


 雪枝が美里を。美里が雪枝を。


 その、母達を見、そして。


「雪人くん、いくよ? せーの、で、一緒に、ね?」


「う、うん……」


「せー……のっ」



 そして、行為計画、Bの九と六を、同時に。


 母達も、手本を見せながら、時折振り返って子供達の様子を確認しつつ。


「アカネ、上手ね……予習ばっちり、ね?」


「ん……んー、んん」


「雪人もぉ、ほらぁ、こんな風に、頑張ってねぇ」


「う、うん……」


 うたげと言うには、静かな、穏やかな。


 母達にとっては、少し、物足りないものの。


 今日の主役は、あくまでも、息子、娘。


 子供達が、幸せになれるよう、お手伝いに徹し。


 母達の手ほどきを真似る形で、進行する、二次会。


 もちろん、初めての経験に、戸惑いも大きいが。


 しかし、そこは、ヤればデきる、子たち。


 しどろもどろに、四苦八苦しながら。


 緊張もあり、慣れない動きに、全身から汗も流れ。


 キラキラと輝くは、まるで星空か、クリスマスツリーか?



 そして、やがて。



 うたげの、祭囃子まつりばやし代わりの嬌声が響き渡れば。



 セイなる夜クリスマス相応ふさわしく、そして雪人の名にもふさわしく、白いセイ夜ホワイト・クリスマスよろしく、アカネを白く染めあげて。



 うたげの終焉。



 セイなる夜クリスマス前夜イヴに。



 母達に暖かく見守られながら。



 本物の夫婦へ向かい、大きな一歩を踏み出す、仮初の、夫婦。




 メリー・セイなる夜クリスマス







 前夜イヴ






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る