第81話:アカネに刺さるブーメラン



 サメに乗って自己を開放するを行っていた、アカネ。


 不用意にも、雪人の入室を許してしまい。


 さすがに、赤面しきり。


「うぅ……布団被ってて、よかったぁ……」


 布団をかけていなかったら?


 あられもない姿を、雪人の眼前に。


 ふるふる。


 見られるのは、構いはしないとは言え、自体は、さすがに。


 それに、雪人が受ける衝撃を考えると。


「ヤばかったかも……」


 布団の脇に脱ぎ散らかしていた衣服を、のそのそ、と、纏いながら、思う。


「わたしの部屋にも、鍵、付けてもらおう……」


 母達に『声を押さえて』と、釘を刺したことがあったが。


 我が身に帰る、ブーメラン。


「しかも、間が悪すぎ……」


 入っていい? いいよー!


「よし、お母さんズにお願いに行こうっ」


 と、着衣を整え。


 自室を出て、階下の、母達の寝室へ。


 コンコン。


 ノックする。


「…………」


 ごそごそ、ぼそぼそ、と、気配は、ある。


「お母さぁん? ちょっと、いいかなー?」


 少し大きめの声で、扉に話しかけてみるが。


「ぃぃゎぁ~」


 雪枝の声で、許可が聞こえた。


「入るよー」


 がちゃ。


「え?」

「う!?」

「ぁ?」


 再現、再来。


 すぐ前に、見た光景。


 いや、立ち位置が異なるし、今度はさらに状況が悪化している。


 風呂場でもないのに、肌色オンリー。


 ベッドの上。


 折り重なる、母、二人。


「どぉしたのぉ? アカネちゃぁん?」


 下に居る雪枝が、何事も無かったかのように。


 上に居る美里は、不意を突かれて完全に固まってしまっている。


「あ、いやぁ、その、ちょっと、でも、あの、お取込み中みたいだから、後でいいわっ。お邪魔しましたぁっ!」


 バタン。


 あたわたと。


 部屋を出て扉を閉じ。


 ダッシュで階段を駆け登り、自室に逃げ帰る。


「はぁ、はぁ」


 漏れ聞こえる声から中の様子を想像したことはあったが。


 目の当たりにしたのは、初めてのことで。


 母達が、そういう関係で、そういう事をしているのは、知ってはいたが。


「って言うか、アレをビデオに撮ろうとしてたのよね、わたし達……」


 暴走。


 羽目を外す。


 暴挙。


 今にして思えば、そんな風にも思えるが。


「女同士だと、あんな風に…………」



  なにかを納得、会得した、アカネ。





「って言うか、うん、よし。わたしの部屋だけじゃなくて、お母さん達の部屋にも、鍵、付けてもらおう……」


 ある意味、自分でよかった、と、思うアカネ。


 あれがもし、雪人だったら?



 今まで、が起きていなかったのが、不思議に思える程。



「あぁ、でも……」


 いっそ。



 雪人も含めて、自由フリーダムに、お互い遠慮なく、意識する事なく。


 触れ合えるようになれば……



 そうするにも、何も。


「雪人くんを…………雪人くんと…………」





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