第79話:教本に優先順位をつける、雪人



 どこで買ったか? と、雪人が母達に確認したところ。


 自転車で行くには、遠すぎ。


 電車でも、駅から遠くて、便利が悪い。


 自動車じゃないと、行きにくい、感じなので、取り急ぎは諦めて。


 もらった本を紙袋ごと、自室に持ち帰り。


 部屋で、改めて袋から取り出しつつ、再度、『山分け』


 読むにせよ、順番をつけないと。


 適当に、えいやー、でもいいかもだけど。


 よさげなのから順に行きたいところ。


「これは後回し、だなぁ」


 右の山。


「これは、先、かな?」


 左の、山へ。


 表紙だとタイトルが読みずらいので、背表紙でタイトルを確認。


 表紙の絵の好み具合。


 それから、裏表紙のあらすじを確認。


「これは、どっちにしよう……」


 中間に、もうひと山。



 基本的に。


 純情、純真、純愛、清純、などなど、『ピュア』とおぼしきものを、優先的に。


 仕分けていると、を表す単語の入った本が、数冊並ぶ。


「これは誰のチョイスかな?」


 正解は、母の雪枝。


「まぁいいや……左っと」


 山を分け終えて、今度は、山の中で、順位を並べ替え。


「ん。こんなもんかな?」


 ずらり、背表紙が見えるように、一通り並べてみると。


「あれ?」


 偶然なのか、必然なのか。


 左寄り、つまり、雪人のお好み寄りに。


「同じ作者のが、多いな……」


 出版社やレーベルはまちまちだが、作者にも偏りがあった模様。


 傾向で仕分けをすれば、確かに、同一作者に辿り着くものかもしれない。


 その作者が、大量に出版していれば、なおさら。


「まぁ、いっか。とりあえず、一冊……」


 一番、左。


 タイトルと表紙の絵、それにあらすじの内容にもかれて、トップになった、本。


 タイトルに『純』の文字が入っている通り、タイトルも表紙もさほど露骨なものではなく。


 翻ったスカートから、ちらっと少しだけ覗く下着が、ある程度の方向性を示してはいるものの、全体的には『純』なイメージの、さわやかさ。


「ふむ」


 改めて表紙を眺めたあと、おもむろに、表紙をめくると、目に飛び込んでくる、カラーイラスト。


「!!?」


 ぱたん、と、閉じる。


 恐る恐る、再度、表紙をめくる。


 バスルームでのひとこま、だろうか?


 カラーイラストとは言いながら、ほとんどが、肌色。


「……ま、まぁ、この間もらった本も、こんな感じだったよね……」


 ページを進めて、目次にさらっと目を通す。


 目次の、章タイトルも、奇抜なものはなく、普通の小説のよう。


 そして、プロローグへ。


 プロローグを、数行読んで。


「!!?」


 ぱたん、と、閉じる。


「い、いきなりですか……」


 以前に母達から与えられた本は、出だしは、ゆるやかに普通の小説風だった。


 内容的には、段々と過激な方向に進んでは行ったが。


 今、手にした本は。


 最初から、全開! と言った風情で。


 いきなり、クライマックスに近い描写で、擬音のような台詞が並んでいる。


 恐る恐る、再度ページを開いて、プロローグの擬音を流し読み。


 とりあえず、プロローグは後でもう一度読み返すとして、一章へ進もうとするが。


 一章のはじまりは、ごく普通の小説風。


 舞台背景や、登場人物キャラクターの紹介など、物語ストーリーの始まりの流れ。


 ここだけを読んでいると、内容的には、普通の学園ドラマ風の恋愛小説か?


 高校の校内で、ヒロインや友人たちとのコミュニケーションを中心にお話が進み。


 学校を終えて、自宅に帰る、主人公とヒロイン。


 ふむ。主人公とヒロインは『同棲』しているのか……


 なるほど、雪人とアカネと、シチュエーションが似ている。


 主人公とヒロインが自宅に戻ってすぐ、雲行きが怪しくなって来る。


 そして。


「む……」


 ぱたん、と、本を閉じる。


 どうやら、主人公とヒロインが、おっぱじめたらしい。


「むぅ……」


 続きを読むか、そういうところを斜め読みで読み飛ばして、物語ストーリーだけを追いかけるか……


 母達の思惑としては、読み飛ばさず、を学べと。


 言いたい事は、解らなくもないが。



 こうなったら……



 雪人に、閃くものが。





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※公開日時設定を間違ってしまってました……一日ズレてた事に付き、12時間遅れ公開、デス。

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