第48話:WBSを共有しよう



 新たなアイテムをこっそりと入手した雪人。


 一通り、中身の確認はしたものの。


 実際に使には尻込みしてしまう。


 早々に、元の袋に戻して、クローゼットの奥へ。


 思い付きで。


 若干、先走った感もある。


 一晩経って、反省して、次に備えるべく。


「次の試験の事とか、今後の方向性を確認するか……」


 仕舞ったものに、後ろ髪は引かれるところも無くはないが。



 

「母さん。次の試験の内容と日程とか、教えてよ」


 夕食の席で。


 雪人は率直に、母達に訊ねる。


「あぁ……そうねぇ、雪人にもぉ、アレ、見せておいた方がいいかもねぇ」

 母・雪枝は先の会議の内容を思い出す。


「そうね、認識合わせしておいた方がいいかもね」

 同じように思い出して雪枝に答える、美里。


「え? 見せて大丈夫……?」


 若干、後ろ向きなのは、アカネ。


 だが、しかし。


「じゃあ、食事終わったら、準備するね」

 と、美里が、言葉通りに食後に片付けたリビングのテーブルにモニタとノートパソコンを運び込む。


 そして、表示される前回の会議資料。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

『雪人ちゃんオオカミ化計画WBS』

    今

    ▼

  Y1   2   3   4

  Q1234123412341234

CP:   ※1※2 ☆   ★

A壱:・■

 弐  □■■■■■■■■■■■■■■        

B壱:  □■■■■■■■■■■■■■

 弐    □□■■■■◎◎◎■■■■

C壱:     □□□■   ■■

 弐:        ■■■■★ ■■

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「……オオカミ化って……」


 いきなりのタイトルから胡散臭さを感じ取る、雪人。


 言わんとする事が解ってしまうところがまた、悔しいところも無きにしも非ず。


「まぁいいや。で?」


 美里を中心に、項目の意味と今後のスケジュールについて雪人に説明。


 アカネも、復習・再確認の意味で聞き入る。



 雪人は、やや勇んだところもあるが、自分の考えや方向性があながち間違っている訳ではない事を理解して安心する。


「なるほど。日常的にキスができるようにって言うのは合ってたね」


 問題は、その後。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

『雪人ちゃんオオカミ化計画WBS』

    今

    ▼

  Y1   2   3   4

  Q1234123412341234

CP:   ※1※2 ☆   ★

A壱:・■

 弐  □■■■■■■■■■■■■■■        

B壱:  □■■■■■■■■■■■■■

 弐    □□■■■■◎◎◎■■■■

C壱:     □□□■   ■■

 弐:        ■■■■★ ■■

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「今、七月だから、九月中にAの弐をクリアすれば、十月からBの壱を準備、十二月までにBの壱を完了して、一月からはBの弐へ移行、か……」


 現段階では、その先はまだ考えない雪人。


 考えたくない、と言った方が正しいかもしれないが。


 ただ、母達とアカネが思い描く全体像は、共有できた。


「九月までAの弐……つまり、日常的にちゅーが出来ていれば、特に試験はなく次に進めるわね」


「だとすると、段階が早く進めば、前倒しもアリ、だよね?」


「そうね、雪人ちゃん次第では、前倒しは可能ね。ただし、Cの壱、弐に関してはあまり前倒しは出来ないわね」


 雪人の疑問に美里が答える。


 雪枝もアカネも頷いて同意。


「ただ……」


 美里に懸念。


「今は女装してキスできるようにしてるみたいだけど、女装せずにできるようになるステップも必要、かも?」


「うっ……」


 指摘されて返答に困る雪人。


 現段階では最適解、ではあるのだが。


 雪人自身も、このままずっとと言う訳には行かないことは理解している。


 ただ、今はまだ。


「ぜ、善処します……」


 

 がんばれ、雪人!




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