第43話:私もユキちゃん?



 母二人の寝室。


 キングサイズのベッドの上。

 並んで横になり、向かい合って。


「まさかのユキちゃん……」


 美里がぽつり。雪人の『変身』を思う。


「わたしもぉ、ユキちゃん、なんだけどぉ……?」


 相対する雪枝。


 そう、雪人がユキちゃんなら、雪枝もユキちゃん。


「いやいや、雪枝さんはユキちゃんてガ……げふんげふん……て言うよりは、雪枝さん、雪枝さま、雪枝どの?」


 あわてて言い換える美里に、雪枝は。


「なによぉ、それぇ……可愛くなぁいぃ?」


「雪枝さんは可愛いと言うより、おっとり美人で、それでいてデキるキャリアウーマン、でしょ?」


「むぅ……そんな事ぉ、言ぅ、美里にはぁ……おしおきぃ」


 伸ばされる雪枝の手が、美里をむにゅっと捉える。


「あぁん……それ、お仕置きじゃなくて、ご褒美だよー」


「ぐぬぬぅ、そっかぁ……」


 美里から手を離す、雪枝。


「あぁん、止めちゃうの?」


「うーん。私達がぁ、こういう事してるからぁ、雪人に影響してるのかしらぁ?」


「あー……まぁ、そうなのかも、だね……」


 もにゅ、っと、逆に美里が雪枝に手を出す。


「もぉ……言ってるそばからぁ」


「今は雪人ちゃんも見て無いから、大丈夫よ」


 もにゅもにゅ


「んふふ……それも、そうねぇ」


 雪枝も、美里にもにゅ返し。


「んふっ」



 大人の夜が更けてゆく。





 翌朝。


 目覚めた雪人は、薄桃色の少女向けのパジャマ姿のまま。


 アカネの部屋へ。


「アカネ、朝だよ。起きて」


 ゆさゆさ。


 寝ているアカネを揺すって、起こす。


「ん……」


 目を擦りながら、のっそりとアカネが上半身を起こす。


 雪人が、アカネに顔を近付けて。


「おはよ」


 ちゅっ


「!?」


 一瞬で覚醒する、アカネ。


 そのまま、雪人を引き寄せて。


 ちゅっ


「おはよう! 雪人くん!」


 さらに引き寄せようとするアカネを阻止して、離脱する雪人。


「さ、仕度して、朝ごはんだよ」


「んもー。はぁい」


 雪人も自室に戻り。それぞれ身支度。



 そして、四人そろって、朝食。


 の、途中、アカネが。


「あ、そうだ、お母さん、と、雪枝ママ」

「ん? なあに?」

「夜中にあんまり大きな声出さない方がいいよ?」

「え?」


 美里と雪枝が箸を止める。


「夜中にトイレに行こうと思ってお母さん達の部屋の前を通ったら……」

「わーわーわー。皆まで言うなーっ!」


 娘の言葉を遮る、母。


 どうやら、盛り上がっているところにアカネが部屋の前を通りがかったらしい。


「前から言おうと思ってたんだけどね。気を付けて、ね?」

「はい……」

「あう……」


 娘に指摘されて、へこむ母カップル。


「ま、仲良きことは良きかな良きかな。わたしもいずれ……」


 それくらいでは動じない娘、アカネ。

 それ以上の期待も胸に。



 一方で。


「ん? 何かあったの?」


 雪人は、蚊帳の外。


「いいのいいの、雪人くんにはまだちょぉっと早いから!」


「?」


 一応、計画ロードマップにはあるが。


 まだ、少し先の、お話。



 今は、まだまだ、前段階。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る