第39話:『B』へ、そして『ゴール』へ向かうWBS



「やっと『A』ねぇ……」

、やっと、ね……」

「お母さん、それは、ダジャレ?」

「え? 何が!?」


 娘・アカネに突っ込まれるも、気付いていない風の実母・美里。


「あはははぁ。二人とも、おもしろぉい!」


 そして、雪枝にはウケる。


「そんなことより、次よ、次。あの調子で『B』とか、行けると思う?」


 地味にクールな娘、アカネ。


 それだけ『切実』とも言えるかもしれない。


 いや、『切実』と言うなら『子をせ』と願う母達の方が、より『切実』な筈では、ある。


「んー……正直、難しぃ、の、かなぁ……」

「だよね……」


 傍から見ていて、感じていて。


 雪人の奥手具合は、尋常ならざるもの。


 悪い言葉で言うならば。


「へたれ?」


 と、言ってしまう母に、アカネは。


「とは、言いたくはないし、言えないよ」


 雪人を想い、夫を尊重し。


「それだけぇ、アカネちゃんの事をぉ、大切にしてくれてる、って事なのよねぇ……」


 実子の心理を察する、母・雪枝。


「ん。とっても嬉しくて、有り難くはあるんだけど……」


 アカネにとっては、複雑極まり無く。



 ……と、言うような話を、雪人本人の居る前では出来る訳もなく。



 今日はまた、雪人がアルバイトで出かけている休日。


 休日とは言え、スタッフは休日出勤で働いて居る訳ではあるが。


 そこはちゃんと代休を与え、労基を守る、社長母、副社長母。



 自宅リビングで女性陣三人による『雪人くんオオカミ化計画』の会議中。


「だいたい、部屋を分けた効果があんまり出てない気もするんですけど!」


 と、若干、お怒り気味の、アカネ。


「いやいや、効果は出てるわよ。テスト『A』の時だって、別部屋だからこそ出来た感もあるし」


 反論する、母。


「あっちのお勉強せずに、パソコンのお勉強ばっかりしてるっぽいよ?」

「将来的に役立つから、それはそれで良い事ではあるけど……」

「それはそぅとぉ!」

「ソート? 並べ替え?」

「ちがぁぅぅぅ」

「お母さん、ボケはいいから……」


 素、程に、怖い物は、無し。


「アカネちゃんのぉ、目標ゴールのぉ、方針。そろそろ決めないとぉ」

「ゴールの方針?」


 雪枝の提案に疑問のアカネ本人。


「えぇ、ゴールぅ……出産をぉ、いつにするかぁ」


 雪枝の、赤裸々な提案。


「? 籍を入れてからスタートで、後は道なりなんじゃないの?」

「だよね?」


 アカネと美里の母娘おやこは、二人とも雪枝の提案に、疑問。


「婚姻届とぉ、出生届をぉ、同時に出す、なんてぇのは、どぅ、かしらぁ?」


「!!」

「!?」


 驚きの母娘おやこ


「いやいや、さすがにそれは……」

「アリ! それっ! アリアリっ!」


 否定的な母に比べ、娘の方が、ノリ気満々。


「ただねぇ……この目標ターゲットだとぉ……」


 雪人とアカネの誕生日は、五月。


 指折り数える、母娘おやこ


「一発狙いなら、来年の五月か六月ぐらいにスタート、って感じ?」


 美里の方が計算が速かった模様。


「逆に、少し早めにスタートしちゃうと、一発大当たりでズレちゃうし……」

「そこはぁ、運と言うかぁ、授かりもの、だしねぇ……」

「ん? ちょっと待って?」


 アカネが再度、指折り計算。


「あ、だめだわ、やっぱり……それだと、二年の後半の修学旅行に行けなくなっちゃう。文化祭もやばい」


 アカネはさらに、計算。


「下手にズレちゃったら、三年の夏休みも潰れちゃうかもだし」


 さらに。


「ん。三年の誕生日に婚姻届け出した後なら、うん、最短でも丁度、卒業までぎりぎり通えそう」


 と、アカネが結論付ける。


「じゃあ、最初の予定通り、婚姻届け出してから開始って事で?」

「うん、その計画プランで」


「だとするとぉ、『雪人オオカミ化計画』としては、少し余裕が出来る、わねぇ」


 今が七月なので、実行開始まで、丸二年。


「二年、か……」

「二年、ね……」


WBSタスク管理引いてぇ、CPチェックポイント決めてぇ、確実にぃ、やらないと、ねぇ!」


「さすがっ! 社長っ!」


 美里が雪枝を持ち上げる。


「じゃあぁ、がんばって、WBS作って、ねぇ、美里ぉ」


「え!?」


 部下に丸投げっ。


 さすが、社長!




「いいの? それで……?」


 娘が何かを垣間見る、の、巻。





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