第28話:サメの抱きマクラは背びれ尾びれがポイントです



「結局、抱きマクラは買わなかったの?」


 一通り店内を見て周った後。


 母達と子供達が合流して、成果の確認。


「うん、いいのが無かった」


 母・美里に答える、娘・アカネ。


「何か買ったの?」


「雪人くんが、目覚まし時計買ってくれた。お母さん達は?」


「これ。ハンディマッサージ器」


 美里がレジ袋から取り出したパッケージ


「肩、凝りやすいからねぇ」


「家に大きいのなかったっけ?」


「これは充電式の小型のハンディタイプ。持ち運びも出来るから、会社でも使えるかなーって」


「なるほど……」


 アカネは母の話に納得。


 どういう使い方なのか、詳しい事は、敢えて聞かず。


 ご想像にお任せ状態。


「会社でもスるつもりなのね……」


 ぼそっとアカネ。


「何か言った?」


 拾う美里。


「わたしも試してみたいから、貸してね?」


 とりあえず誤魔化すアカネ。




「それじゃぁ、次、別のお店、行ってみましょうかぁ」


 雪枝を先頭に、駐車場の車に戻る。


 車に乗り込んで雪人がナビを操作。


「次は、このホームセンターだね」


「了解~」


 美里の運転でまた走り出す。



 目的地のホームセンターはミトリからすぐ。

 

 ここでもまた、雪人が入り口の店内案内を確認して。


「一階と二階と、両方あるね。一階から見てみよう」


 今度は、母子おやこ四人でまとまって。


 ぞろぞろ。


 すぐに一階の寝具売り場に到着。


 先ほどの家具主体のお店と違って、ベッドやソファなどの大型のものはない。


 布団セットや単品の布団など、パッケージ化された廉価な商品の他、クッションや枕等が並ぶ。


「あった、抱きマクラ」


 目的の物にはすぐに辿り着くも。


「んー、さっき見たのとあんまり変わらないねー」


「だね。二階の方、行ってみよう」


 移動してエスカレーターで二階へ。


「こっちの方がおしゃれな感じね」


 一階はホームセンターだが、二階は別の専門店が入居している模様。


 別ブランドなので、一階のコーナーや、先程のミトリとも違った品揃え。


「あ、電気マッサージチェア、発見!」


 美里が飛びつく。


「雪枝さんもー」


「いいわねぇ~」


 ぐいんぐいん、肩やら腰やら自動的にモミモミしてくれる、椅子。


 座ってお試しする母達は放置して。


「クッションは……こっちだね」


「はーい」


 子供二人で、目的の棚へ。


「おっ!」


 アカネが何やら発見。


「サメっ?!」


 サメの形の、抱きマクラ。


 もにゅっ。


 抱きしめてみる。


「んー、んー、手ごろな柔らかさと言うか固さ!」


 抱き心地は、わりと良さそう。


「それに、この背びれ、尾びれ……手ごろな固さ……これは、使!?」


 ぷにぷに、っと、突起をつっついてみる。


「これ、いいな。使が良さそう。これにするっ!」


 ふむふむ、と、商品タグを見る雪人。


 うげっ。


 と、言いそうになる。


 割と、良い、お値段。


「ま、これっくらいなら……」


 雪人はアルバイトで得たお金もある。


 先ほどの目覚まし時計もそんなに高くはなかったので。


 何より、お値段以上に、アカネが喜んでくれている。


「決まり、だね?」


「うんうん。コレがいい」


 と、言うことで、当初の目的も、達成。


 レジで支払いを済ませ、マッサージチェアから母達も回収して。


「お昼ご飯、行こう」


「わーい。何、食べよっかなー?」





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