第三章:デートとテストとアルバイト

第24話:抱きマクラを買いに行こう



 日曜休日、朝食中。


「母さん、買い物に行きたいんだけど、車、出してもらえる?」


 雪人が母に乞う。


「いいわよぉ~。何、買うのぉ?」


 母・雪枝は息子の乞いに嬉々として応じる。


「アカネに、抱き枕を買ってあげようかと思って」


「え?」


 雪人の言葉に、アカネがぴくりと反応する。


「さっき起こしに行ったらさ、アカネが掛け布団丸めて抱き着いてたから……」


「あー……」


 アカネにも身に覚えが。


「いつもは雪人くんに抱き着いてたから、そっか……ありがとう! わたしも一緒に行っていいよね?」


「もちろん。アカネが自分のお気に入りを探すといいよ」


「わーい」


「わたしも着いて行こうかな。久しぶりにでお出かけしよ」

 食事をしながら娘たちの会話を聞いていた母・美里も乗って来る。


「せっかくだしぃ、あちこち、お店、周ってみましょうかぁ」

 雪枝も相乗り。


「他にも色々、欲しいモノあるし、丁度いいわ!」

 アカネはもう、ノリノリ。


「お店は十時ぐらいからだから、お昼も外でいいよね?」

  

 こうして、母子四人で休日のお出かけが決まる。



 朝食の後、それぞれに用を済ませて、外出の準備。


 時間になり、リビングに再集合する四人。


 着替えたアカネを見た雪人。


「その服……」


「えへへ。似合う?」


 先日、アルバイト先で入手してアカネにプレゼントしたもの。


 元気なアカネに似合う、パンツルックの少しボーイッシュな装い。


 でも、少女らしさも多分に、ある。


「うん、似合ってる、可愛いよ」


 ぽっ。


「もー! 雪人くんって奥手なクセに、真面目な顔してはさらっと言っちゃうんだもんなー」


 ばんばん。


「痛い痛い。背中に張手はやめて……」


「でも、これ、雪人ちゃんの方が似合うと思うけど」


「やめて……」


 アルバイトでならいざ知らず。


 プライベートでまで女装する趣味は、無い。



 そんな子供達を温かい目で見守る母達はと言うと。


「んふふ。ダブルデート、ダブルデート~」


 美里は、娘のアカネと同じパンツルックではあるが、アカネのような肌にピッタリしたものではなく、ふわっとゆるめのパンツ。


 雪枝もロングスカートで、ふんわりと。


 雪人は、と言えば。


 デニムと黒Tシャツの上に白のワイシャツ。


「雪人くんは……普通だけど、カッコイイ! カワイイ!」


 どっちやねん! と、突っ込みたくなるが。

 

 アバタもエクボとも言う。



「そろそろ行きましょうかぁ~」



 雪枝がリードして、皆を導く。


 取り決め、と言う訳ではないが。


 会社でも社長の雪枝。


 家でも、家長的なポジション。


 大事な事柄を最終的に決めるのは、雪枝。



「は~い」

「はい」

「ごーごー!」


 倣い従う、一同。



 さあ、先ずは、ドライブだ。







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