第23話:変わる朝、変わらない日常



 雪人とアカネの部屋を分けた夜。


 結局、雪人は一巻から順に読み進める……学習を進める、と言う事で。


 アカネが文庫の二巻三巻を強奪。


 アニメのブルーレィは母達が観賞し、雪人へのアドバイスに活用する事に。


 活用?


 純粋に『きゃーきゃー』言って楽しむだけかもしれない?



 それはさておき。



 それぞれ就寝。


 そして、朝を迎える。


 昨日の土曜一日で部屋分けの模様替えもほぼできたので。


 今日の日曜はいつもの休日の朝……とは行かず。


 雪人が起き出して、リビングに顔を出すと、すでに母二人、朝食の準備中。


 雪人に気付いた美里が。


「おはよう、雪人ちゃん。アカネは?」


「おはよう、美里ママ、母さん。アカネは多分まだ寝てるかと」


「おはよぉ、雪人。そっかぁ、いつも雪人がアカネちゃんを起こしてるんだっけぇ」


「うん……でも、今日からは……」


 昨日までは同じベッドの上で、隣で寝ているアカネを起こせばよかった。


 部屋が分かれた今日からは、どうすればいいか?


「部屋に入って起こしてもらえればいいかな」


 美里の答えは単純明快だが。


「え、でも、せっかくの個室だし、勝手に入るのは……」


 雪人は、真面目で慎重この上なく。


「ノックして返事無かったら入っていいよ。アカネが雪人ちゃんの部屋に入るのはアウトだけど」


 いいのか? と、思うが。


 部屋に入らないと起こせないなら、しようがないか。


 放っておくと、いつまでも寝ている可能性が高い。


 今日はまだ休日なので、多少は大丈夫だろうが。


 明日からの通学、登校を考えると。


「じゃあ、ちょっと起こしに行ってみるね」


 雪人にとっても『別の部屋』を訪れるのは初めての経験になる。


 大丈夫かな?


 とんとんとん。


 思案しながら階段を登って、二階のアカネの部屋へ。


 コンコン


「アカネ、起きてる?」


 ……


 コンコン


「アカネ?」


 ……


 返事が無い。


 しようがないな、と、思いながら一瞬躊躇するも。


「入るよ」


 思い切ってドアを開ける。


 目に飛び込んできた光景。


 床の上の敷き布団の上。


 掛け布団を抱きしめて丸まっている、アカネ。


「むぅ……」


 二人で寝ていた昨日までは、パジャマのボタンは外すな、と、雪人が制御していたが。


 その制御が外れた、今。


「なんて格好だ……」


 幸い、インナーは着ているので、完全ポロリは無いが、あられもないと言えば、あられもない。


 しかも、掛け布団を丸めて、抱き締めている。


「そっか……」


 そう言えば、いつもは雪人が抱き着かれてたっけかと思い至る。


 自分が居ないから、掛け布団を自分の代わりにしてしまったのか、と。


「抱き枕、買ってあげよう、かな……」


 それは、後で考えるとして。


 ゆさゆさ


「アカネ、朝だぞ、起きろ」


 ここからはある意味、いつものルーティン。


 アカネの肩を優しく揺すって、お目覚めコール。


「アカネ」


 ゆさゆさ


「……ん……?」


「おはよう、アカネ」


「ん……雪人くん……おはふわぁ~よぅ」


「ん。おはよう。もう朝ごはん出来るよ」


「ん」



 変わらない朝。


 変わってしまった朝。



 変わらないもの。


 変わるもの。



 少しづつ、変化して行く日常が、始まる。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る