第22話:思春期レッスンA・B・C(原作文庫版)



 十八禁アニメのブルーレィに代わって、雪人に手渡されたそれは、三冊の文庫本。


 『思春期レッスンA・B・C』全三巻。


「そう、このアニメの原作小説よー。こっちなら十八禁じゃないから大丈夫」


「え? そうなの?」


 文庫本の表紙、背表紙、裏表紙、表紙裏、裏表紙裏、見返し、中扉、奥付、カバー裏、帯、帯裏と、あちこちを確かめてみても、それらしき制限条件は見当たらない。


 ぺらぺらと頁をめくって行く中で、な挿絵もあったが、年齢制限等の表記は全くない。


「ほんとだ……」


「ね。これならいいでしょ? これでお勉強をして、やり方を覚えるのよ?」


「……」


「部屋を分けたのは、この為でもあるの。一人なら恥ずかしくないでしょ?」


 雪人としては、恥ずかしくない訳ではないだろうが、アカネのすぐ側でと言うよりはましか。


「ちゃんとお勉強出来てるか、時々、抜き打ちテストするからねぇ~」


「!?」


「雪枝さん、こっちのブルーレィはどうするの?」


「んー……もったいないから、私達で一緒に観賞しましょうかぁ~」


「いいわね!」


「!?」


 と、そこへ。


 ドンドンドン


「お母さぁ~~~~ん」


 今にも泣き出しそうな、アカネが母を呼ぶ声。


 何事かと顔を見合わせる母子、それにもう一人の母。


「はぁい、どうしたの~」


 母が娘に答え、ドアを開ける。


「お母さぁ~~~~ん」


 母の胸に飛び込む娘。


「どうしたの? アカネ」


「雪人くんが、雪人くんが居ないの、雪人くんがどっか行っちゃったの、雪人くん、雪人くん、雪人くん、雪人……くんっ!?」


 母に直訴するアカネ。母の肩越しに雪人の存在を見出す。


「雪人くんっ! なんでこんなとこにぃっ!!」


 母をポイして、雪人に飛びつくアカネ。


 どすん。


 勢い余って、母達のベッドに押し倒される雪人。


「雪人くんの顔が見たくて雪人くんの部屋に行ったら雪人くん返事ないし雪人くんどっか行っちゃったってお母さんに一緒に探してもらおうと思って来たらなんでこんなところに居るのよぉぉぉぉぉ!」


 すりすり。


 抱き着いたまま、倒れ込んで雪人の胸に顔をすり寄せるアカネ。


「何処にも行かないよ? ちょっとお母さん達に……相談があって」


「何の相談?」


 顔を上げて、至近距離で雪人を見下ろす。


「えっと……勉強?」


「何の勉強?」


「えっと……保健体育、的な?」


「んん??」


 ふ、と。


 ベッドの上に散らばった本が目に留まる。


「何これ?」


「あっ! それはっ!」


 本を手に取るアカネ。


「……思春期レッスン? えーびーしー? ……あ」


 一瞬にして例の会議の記憶と結びつく。


 雪人の『』を手助けする、ツール。


「なるほど……」


 雪人ひとりでは手に余り、一人でも何もできないかも。


 そう考えた母達が与えた、道具、なのだろうと気付くアカネ。


「あれ? そっちは?」


 母が手に持っていたブルーレィに気付く。


「エロビデオじゃないっ!? 見せて見せてっ!」


 そして飛びつく。


「だめよ、これは十八歳未満、お断りですよ~」


 さらりとかわす、母・美里。


 いやいや、さっきと言ってる事が、と思う雪人。


「ぐぬぬ。じゃあ、こっちの本、わたしにも貸してよー」


「アカネは改めて勉強しなくても、色々解ってるでしょ?」


「それはそれ、コレはコレっ!」







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