第20話:母から息子へのプレゼント
アカネのクローゼットを組み上げ、雪人の部屋のドアにカギも取り付けて。
雪人とアカネは各々の部屋の片付けも終わり。
美里に続いて、雪枝も外出から戻ると、いつもの、静かな休日の夕刻のひと時。
休日の夕食は、雪枝と美里が担当。
仲睦まじくおそろいのエプロンでキッチンに立つ。
子供達はリビングでゲーム。
右へ左へ、ゆらゆらレースゲーム。
「さ、ご飯よ~」
「はーい」
そして夕食の時間。
四人で食卓を囲む。
いつもの休日。
ただ、ちょっと、アカネの表情がどことなく、いつもと違っている。
雪人はそんなアカネの表情を見て思う。
それも仕方ないのかな。
食後。
「そうだぁ、雪人に引っ越し祝いがあるのぉ~」
雪枝が、何やら包みを取り出して息子に手渡す。
「何? これ?」
「んふふ~。お部屋に戻って、お部屋で楽しんでね~」
一人用のゲームだろうか?
それとも、本?
大きさと重さからすると、ゲームソフトのような雰囲気。
「えー、なんで雪人くんだけ!? わたしには? わたしには?」
「んふふ~。男の子だけのスペシャルよぉ~」
はぐらかす、雪枝。
美里も、何かわからず、きょとん。
「後で見てみるね」
各々、お風呂も済ませて、自室でくつろぐ……とは言え。
初めて一人で、ベッドではなく、床に布団で。
違和感はぬぐえない。
いつもそこにあるものが、無い。
「アカネはもっと不安になってるんだろうな……」
自らに於いて、おや。
食事時のアカネの表情も思い出しながら、そんな風に思う。
「そうだ、母さんがくれた『引っ越し祝い』って何だろう?」
がさがさ。
母から手渡された紙袋を開けて、固まる雪人。
中身を取り出して、表、裏、横、あらゆる方向から母のプレゼントを確認。
雪人の顔が真っ赤に染まる。
ばんっ。
新しく付けたカギを忘れて、一瞬、ドアが開かない! と焦るが、思い出してカギを開けて、ドアを開けて。
どたどたどた。
二階の自室から一階の母達の部屋へ。
どんどんどん
「母さん!」
母達の寝室のドアを叩き、母を呼ぶ。
「はいはい~。なぁにぃ~」
母が顔を出す。
「なぁにぃ、じゃないよ。何だよ、これっ!」
ばんっ。
母からもらったプレゼントを母に突き返す。
「えー、これで楽しんでお勉強ができるよぉ?」
「何? 何? どうしたの?」
後ろから美里も顔を出して、雪枝が手にしたモノを見る。
「なになに……『思春期レッスンA・B・C(上巻)』あ、上下巻セットかー」
「そうそう、これ、良く出来てるって、お店の人がぁ、お薦めしてくれたのぉ」
「R-18じゃん! アニメじゃん!」
「ブルーレィよ~」
そういう事じゃないんだけど……
呆れると言うか、何と言っていいのか。
母親から、R-18のアニメのブルーレィをプレゼントされて。
これを見て学べと。
「ちょっと、真面目なお話、しましょうか」
雪枝が……母が息子を母達の寝室に招き入れる。
「美里も一緒に、ね」
こくり。
母の真剣な表情に、戸惑いながらも従う雪人。
ぱたん。
寝室のドアが閉じられる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます