第19話:二人を分かつ象徴
雪人とアカネの部屋を別々にするため、部屋の模様替えに勤しむ
分解したダブルベッドをレンタル倉庫に搬入して戻った雪人と美里。
雪人は自分の部屋の片付けと掃除、美里は昼食の準備。
アカネは雪枝と新しいクローゼットを買い出しに、レンタルトラックで家具屋へ。そのままお持ち帰りするつもりらしい。
アカネと雪枝が出かけて、少し後、雪人の携帯にメッセージが届く。
『雪人くん、クローゼットの組み立てとか、出来る?』
『組み立て式で説明書付きならできると思うよ』
『了解さんきゅ愛してる(はーと)』
ご丁寧に、ハートマーク付き。
「仕事が増えた……」
やはり嫁に甘い旦那(仮)である。
そして。
「ただいまー。雪人くん、お母さん、来てー」
その嫁帰宅、即、呼び出し。
「おかえり。何?」
やたら大きな箱を持った嫁と母。
「これまた、やけに大きいの、買ったのね……」
昼食の下ごしらえを終えた美里……嫁の母も合流。
「元からあるヤツよりは小さいわよ。それより、早くそっち持って」
「はいはい」
四人で手分けして、二階のアカネの部屋へ。
「これ、多分、一人だと組み立てキついわ……アカネも手伝ってよ?」
「あ、うん。それはもちろん」
「それから、雪人、これもぉ~」
と、雪枝が雪人にもう一つ、小さめの部品のようなパッケージを手渡す。
手に取って見るとそれは。
「カギ?」
「そうそう。とりあえずぅ、簡易型のでぇ。ちゃんとしたのは業者手配するから~」
「了解」
「とりあえず、お昼ご飯にしましょう!」
美里の音頭で四人そろって昼食。
昼食を終えて少しくつろいだ後、四人それぞれに行動。
美里はトラックを返却に。
雪枝は自家用車で何やら、買い出しがある、と言って外出。
雪人とアカネは、二階のアカネの部屋でクローゼットの組み立て。
「アカネ、ケガするといけないから、軍手着けてね」
「あいよー」
手渡された軍手を装着するアカネ。
「箱から出して行くから、大きいのは壁に立てかけていって」
「あいよー」
雪人が開梱して、クローゼットのパーツをアカネに渡してゆく。
開梱を終えると、アカネに指示を出して必要な部品を床に並べて、ネジ止めしていく。
「うう……電動ドライバーが欲しい……」
そう言えば、さっき、美里ママが『欲しいモノがあれば』と言ってくれてたな……電動ドライバー、買ってもらおうかな?
等と、考えながらも、てきぱきと作業する雪人。
「器用なもんだねぇ、雪人くん」
「それはいいから。そっち、ちゃんと押さえててね」
複数の部品を繋ぎ合わせるために、支えが必要。
二人を分かつ為の準備を。
二人で共同作業。
なんとも、皮肉この上ないが。
そこは、どうにか。
「ふぅ……完成っ!」
「やったねっ!」
無事、組み立て終了。
「じゃあ、ここに置いてね」
アカネは早速、元のクローゼットやベッド下の引き出し収納に入っていた衣類を新しいクローゼットに移動。
雪人にはまだ仕事が残っている。
「次は、カギ、か……」
母から渡された簡易型のカギの説明書を見てみると。
「げ、これもドライバー要るのか……やっぱり電動ドライバー買ってもらおうかな……」
とは言うものの、今、取り付けをしようとすると、手作業。
「まぁ、しょうがないか」
それを横目で見ていたアカネが。
「カギ、付けちゃうんだ……」
「うん」
「付けちゃうんだ……」
「うん」
「……」
二人を分かつ、象徴。
じっと見つめ、アカネは何を想う?
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