第10話:湯上りレーシング



「雪人くん、ゲームしよっ!」


 自室に戻って、雪人を誘うアカネ。


「ん。いいよ」


 ベッドの上で読んでいた本をぱたん、と閉じて雪人が答える。


「下、行こ」


「ん」


 自室にもテレビはあるが、リビングの方が大きくて迫力がある。


 ゲーム機も、リビングのテレビに接続したまま。


「勝負だ勝負だー」


 わくわく、と、ゲームをセットするアカネ。


「……元気だな」


 とりあえず、渡されたコントローラを手に、雪人。


 ゲームが起動して、メニュー画面が表示される。


「コースは、ん、鈴鹿でいいかー」


「どこでもいいよ」


 ぽちぽち、と、メニューから項目を選んでいく。


 レースゲーム、と言っても、亀やらバナナが出て来るようなものではなく、リアルなスポーツカーが出てくるもの。


「んじゃ、スタート、だよー」


「はいはい」


 セットアップを終えて、選択した自車がスタートラインに並ぶ。


 ピ……ピ……ピ……


 プーン


 レースが始まる。


 右へ、左へ。揺れる画面。揺れる身体。


 アカネは、ついつい、コーナーで自分の身体も倒してしまうタイプ。


 こつん。


 並んで座る雪人の肩に、当たる。


「妨害するな」


「ぇー……」


 ほぼ、横並びで周回しながら。


「ねぇ、車の免許取るのと、婚姻届け出すの、どっちが先?」


 ず、ざざざーーーっ


 雪人の自車が、コーナーでオーバーランする。


「い、いきなり、何、言い出すかな!?」


 あわててコースに戻ろうと、アクセルボタンを押すが、ダートでタイヤが空周る。


 もう、リカバリは難しいが、奮闘する雪人。


「婚姻届けは誕生日以降すぐに提出できるけど、免許の方は誕生日前に教習受けて、誕生日過ぎてから筆記でしょ? 免許のが後になるかー」


「……わかってるなら、聞くなよ」


 それでもなんとか、コースに戻る雪人の自車。


「てへっ」


 何事も無く周回を続ける、アカネの自車。


「免許は、夏休みでいいんじゃない?」


「夏休みは、新婚旅行があるよ?」


 ず、ざざざーーーっ


 雪人の自車がまたコーナーを曲がり切れず、コースアウト。


「……卒業旅行も兼ねて、春休みにしない?」


 最後まであきらめない、雪人はたくみなアクセルワークでコースに戻る。


「んー、それもアリかー。雪人は大学受験もあるもんねー」


 悠々と、ゴールする、アカネの自車。


「アカネは、卒業したらそのまま母さん達の会社に就職か」


「うん。その予定だけど、多分、子育てが忙しいだろうから、しばらくはそっちに専念することになるかなぁ」


 がっしゃーーーん


 コーナーガードに激突する雪人の自車。


「〇×△$□×◎▽◇%!!」


 さすがに、コントローラーを投げ出す雪人。





 一方、その頃。


 浴室の母、二人は……





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