第9話:湯上りのひととき



「ふぅ。お風呂、空いたよー」


 キャミソールとショートパンツのラフな格好の上、タオルを首にアカネ。


「はーい。私達も入ろ、雪枝さん」

「えぇ、美里。行きましょぅ」


 雪人はすでに一番風呂の後、自室で読書。


「お母さんたちは一緒なんだよねぇ……いいなぁ……」


 と、アカネ。


「んふふ。あなた達もまた一緒に入れるようになるといいわね」


 実母がアカネを冷やかす。


 雪人とアカネは、幼い頃は一緒にお風呂に入っていたが、いつしか、雪人が恥ずかしがるようになってしまい、今は別々。


「ホントよ、まったく……恥ずかしがり屋さんなんだから」


 アカネとしては、今でも一緒に入りたいところなのに。


「見るのが恥ずかしいのかぁ、見られるのが恥ずかしいのかぁ……」


 恥ずかしがり屋の息子の実母も、息子の恥ずかしいポイントを知りあぐねる。


「見ないし、見せないし、両方っぽいね。わたしが脱ぐとすぐ怒るもん」


 ぱたぱた、と、キャミソールの裾を持ち上げながら、アカネ。


「……それは、単に、はしたないだけな気がするわよ?」


 突っ込む実母・美里。


 その美里も、格好としては、似たようなものだ。


 ロングTシャツ、一枚。


 ある意味、さらに質が悪いかもしれない。


「周りが女性ばかりで気後れしちゃってるのかしらねぇ」


 と、恥ずかしがり屋の息子の実母・雪枝はラフなワンピース姿。


「下着姿で居ると、怒られるもんね……それはともかく、おっ風呂~、おっ風呂~」

「ええ、行きましょうかぁ」


 と、連れ立って浴室に向かう、恋人たち。


 リビングにひとり残るアカネ。


「んー。雪人誘ってゲームでもしよっと」


 とっとっと


 軽やかに階段を登って、自室に引っ込んでいる雪人の元へ。


「雪人くーん、ゲームやろー」





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