第8話:囲め 、食卓



「んー、雪人の肉じゃが、最高ぅ~」

「ほんと、美味しいわよね、雪人ちゃんの肉じゃが」

「うんうん。雪人くんはホント、いいお婿さんになってくれるよ!」


「……」


 褒められるのは嬉しいが、褒められすぎるのは、とっても恥ずかしい。



 しかも、お婿さんって……。


 真っ赤になってブリの照り焼きを突く雪人。



「このブリの照り焼きも、甘いのに、ぴりっと生姜が効いてて、絶妙だわ」


「あ、そっかぁ。美里のトコはぁ、生姜入りなのねぇ」


「雪枝ママと雪人くんは生姜抜きだっけ?」


「えぇ、うちは生姜、入れないのぉ」


 好みに合わせて、ひと手間。


「雪人くん、ほんと、マメよね~。うんうん。良い婿だっ!」


 ばんばん。


「げほっ、げほっ……いきなり背中叩くなよ……」


「ん。ごめーん。はい、お茶」


「ありがと」






 雪枝と美里、二人の母が仕事を終えて、帰宅。


 ちょうど、雪人とアカネが晩御飯を作り終えた頃。


 ふたつの家族が、ひとつの食卓を囲んでいる。




 あたたかな、食事。



 あたたかな、笑顔。



 何処にでもある、でも、何処にもない、唯一無二の。





 幸せが、ここには、ある。




 ちなみに。



 肉じゃがの味付けは、二家族共通。






「ふぅ、美味しかった~。ご馳走さま!」

 アカネが一番に、完食。


「ごちそうさま」

 雪人も食べ終える。


「ごちそうさま。美味しかったわぁ」

 雪枝も。


 そして、美里が。


「ごちそうさまぁ。もう、ホント、私のお婿さんにしたいわ!」


 おかしな事を言い出すと。


「ちょっ、お母さん!?」

「ちょっと、美里!?」


 焦るアカネ、雪枝。


「やーねー、雪枝さん、冗談よ、じょ・う・だ・ん。アカネも本気にしないの」


 ケラケラと美里。


「もぅ、お母さんってば……」

「浮気は許しませんからねぇ、ぷんぷん」




「……」



 女三人で、かしましい、とはよく言ったものだ。


 でも。


 かしまって、なんかちょっとエッチ?


「……!?」


 等と考えてしまって、また真っ赤になる、雪人。


「? 雪人? どうしたのぉ?」

「雪人くん、顔、真っ赤だよ?」

「え? 今の話、恥ずかしがるようなポイント、あった??」


 いや、もう、ほんと、かしましいなっ!


 雪人は、そう、思う。







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