第3話:子等に伝わる想い


「わたし達が母さん達の出会いのきっかけだったなんて、ね」

「そうだね。ちょっとびっくり」


 雪人の部屋。ベッドにならんで腰掛けてアカネと二人。


「大きくなったら、二人は結婚するのよ、って、言われ続けて十六年……」

「あと二年したら、ホントに結婚、か……」

「それから……」


 ぎゅ、っと雪人の腕にしがみついて、アカネが上目遣いに言う。


「子作り、もね?」


 ぼんっ、と、雪人の顔が瞬時に真っ赤に染まる。


「そそそ、それは……その」


 アカネもまた、ほんのりと頬を朱に染める。


 二人の母の願い事。


 雪人とアカネが結婚すること。


 今はまだ、ただの仲の良い他人に過ぎない。


 雪人とアカネが結婚すれば、母達は、義理ではあるが、互いの母となれる。家族となれる。


 さらに、雪人とアカネが子供、つまり母達の孫を儲けることで、母二人の血統を受け継ぐ存在を確かなものとする事ができる。


 結婚すること。


 子供を作ること。


 幼い頃から、二人の母に言い聞かされ続けて来たこと。


「あーあ。わたしも、早く、雪人くんの子供、欲しいんだけどなぁ」


 ぎゅー。


 さらに雪人の腕にしがみつくアカネ。


「そ、それは、け、結婚してから、って言ってるだろ!」


 真っ赤な顔で、その腕を引き抜こうとする雪人。


 パジャマ越しに、ぎゅっと押し付けられる柔らかなもの。


 腕を動かすと、その柔らかな感触が直接伝わって身動きが取れなくなってしまう。


「も、もう寝よう。うん、寝る。寝よう寝よう」


「わかった! 寝よう! うん!」


「だーっ! パジャマを脱ぐなっ!」


「えぇー……」


 いつもの光景。


 こんな風に、穏やかに、幸せに過ごす二人。



 あと、二年。


 それを過ぎれば、また、異なる光景が織りなされるようになるだろう。






 もしかしたら、二年を待たずに?






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