『落とし物の多い噴水3』
場所は、噴水。中庭の噴水。
夕暮れ時の噴水は、ライトアップされており、水底に散りばめられたコインは、その光を受け、ピカピカと輝きを放っており、噴水周りは、ちょっとオシャレな雰囲気を醸し出していた。
噴水の側では、何人かの生徒が噴水にお金を投げ込み––––両手を合わせている。
「まさか、噴水にお賽銭を投げ入れているとは思いませんでした」
「最近流行りだしたらしいわね」
聞いた話では、今月の頭辺りに、一部の生徒の間で中庭の噴水の女神様にお祈りをするのが流行りだしたらしい。
なんの女神様なのか分からなかったのが、逆に万能の神として捉えられてしまったというところだろうか。
つまり、お金は誤って落としたのではなく、賽銭のお金として投げ入れられたのだ。
小銭ばかり落ちていたのも、小銭が広範囲に散らばっていたのも、これが理由だろう。
誰かが小銭を投げてお祈りをしている場面を見たら、ああ、ここはそういう場所なんだと思ってしまう。
そういう、人間心理が働いたのも大きな理由に思える。
「音羽ちゃん、噴水にお金を投げるのを、本当にやめさせなくてよろしいんですか?」
「別に悪いことをしてるわけじゃないのだから、止める必要はないと思うわ。さっきも言ったけど、信仰の自由というのは、法律でも保護されているものなの」
まあ、あのお金は––––噴水周りの維持費にでも使えばいいだろう。
これも、法的に問題はない。
投げ入れられたお金は、手元を離れ、噴水に落ちた時点で、所有権が噴水の持ち主に移る。
噴水の持ち主は、当然、学園の持ち主となる理事長なのだから、理事長に掛け合えばいいだけだ。
「音羽ちゃんは、本当に博識ですねー」
「市子が無知なだけよ」
「胸はムッチムチですけどね!」
「萎めばいいのに」
「
……はぁ、私もお金を投げて、お祈りしようかしら。
胸が大きくなりますようにって。
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