エラグ

(女神が……女神が俺に才能があるといった、うっ……だが思いだせないことがたくさんある、高いビル、街角、雑踏、そして俺は多くの裏切りによって意気消沈して……)

「っと!!……ちょっと!!」

 誰かが自分の顔を覗き込んでいる。その顔は心配そうにもみえるし、怒っているようにもみえる。ランナの顔、それだけは思い出せた。だがエラグはそんな事はどうでもよかった、ともかく少し休みたかった。頭がぐるぐると回転している。目が回る。

「起きなさいよ!!今そういうタイミングでしょ!!」

 バシッと、エラグは頬を叩かれ、その衝撃でくちをゆがめ、正気にもどった。

「う……ここは……どこだ」

「ゴブリンの巣穴から少しはなれた別の洞穴よ、人間がかつて使った跡があるわね、ったく、あんたお荷物ね、あんな所で気を失うなんて!!」

「起きたか……」

 今度はたったままドルジが自分を見下ろしていた。

「まあ、勇気を認めはしよう、お前の意図にかかわらず、俺たちはお前に助けられたようなものだからな」

 うしろでガリンが頷いている。

「むむう、うむん」

 エラグは頬に手を当てると、彼らをぼーっとみつめ、頭を整理させようとした、頭の中に鈍い痛みが走る。それは衝撃が加わったことによるものというより、あの女神にあったこと、転生を経験したという事実からくるものだろうと思えた。

(けど……転生って?俺はなぜ女神にあったんだ?そもそもこの世界は神はいるが

、女神は……)

「あんた、大丈夫?」

「い、いや……大丈夫、少し頭をうっただけだ、それより……何があった?」

「本当に、覚えてないの……って、それもそうか、あんた能無しだもんね、でも大したものよ……あんな技を隠しもっていたなんて」

 そういって、ランナは腰にてをあてて、周囲を警戒するように見回した。

「はあ……」

 ため息をつきながら、ランナをおしのけ、ドルジが前にでてくる。

「お前は、あの時ゴブリンの群れに突っ込んだかと思ったら、ヘビーゴブリンのただの一発で気を失った、だが大方何かしらの術が発動したのだろう、その瞬間お前の額が光輝き、奴らは視界を奪われた用だった、そのすきに俺たちは彼らから逃げ、煙幕などの魔法をつかって巣から脱出したっていうわけだ」

「それだけじゃないわ」

 ランナは付け加えた。

「あの時放たれた光は、方向こそ違ったものの、まるで〝神の祝福〟のようだった、あれは上位魔法で、どんな魔物も一瞬で消し去ってしまう、もちろん、あんたが道をかき分けたその道を通りぬけていったから、ゴブリンは一匹もしななかったみたいだけど、何が起こったの?何も覚えてない?」

 疑問をもったように首をかえしげるガリン。

「うむん」

 皆の疑問に答えるように、エラグは、ぽつりつぶやいた。

「確かに俺は、お荷物で、今まで逃げてばかりの人生だった……だけど、あのとき、あの時はなぜか、ここで逃げたら終わりだ、今回ばかりは本気を出そうと思えたんだ……本来の俺はビビリのはずなのに、そしたら不思議な力が」

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