第7話

あたしは男の子を好きになることなんてない。だって私は可愛いんじゃなくて、かっこいいなのだから。


あたしこと、クランはそう考える。


「じゃあ、あたしが行ってあげようか?」


ただの興味本位だった。シャールみたいな可愛い子が本当に好きな人はどんな人なんだろうか。


シャールは隠しているつもりなんだろうけどバレバレすぎて話にならない。


ワトソンくん。時々、女子の話題に上がるので名前は知っていた。でもただそれだけ。


あたしに恋愛なんて関係ないし、することも無い。だからシャールの依頼を受けたんだ。


「ワトソンくん?ちょっといいですか?」


久しぶりに自分から男の子に声をかけたなぁ。それにしても綺麗な顔だ。


その辺のハリウッドの人たちと並んでても遜色はないくらい。それに優しそうな目。シャールが惚れるのも分かるかもしれない。


でもどうせこういう奴は顔だけなんだ。


「クラン、可愛い」

「ん、んんっ……/////?」


え、今なんて言ったのだろうか?彼の優しそうな目があたしの目を貫く。本当に心から漏れたようなつぶやき。そこには嘘がない純粋な……。


ドキッ……


待って、待てよ。ドキッ、って何?あたしは乙女か!少女漫画の主人公か何か?


いやいや、聞き間違えだろう。あたしは生まれてこの方、可愛いなんて言われたことがない。女子からかっこいいと、もてはやされるような女だぞ?


それに可愛いなんてありえない。聞き間違えだ。


「違うんだ!これは俺のありのままを出した結果で……」

「あうぅ……っ///」


違う、違う。なんで何も言わないんだ?これじゃまるで照れているみたいじゃないか。心做しか顔も熱くなってきた。


もう、ワトソンくんの顔が見れない。どうしちゃったんだろう……。ありえない。


「……出直してきますぅ」


あっけなくあたしは退散した。これ以上、彼と話していたらあたしのアイデンティティの危機だったからだ。


「……ワトソンくんか」


しまった!思っていたことが口から漏れてしまっていた。そのつぶやきを聞いたシャールは目を見開いて、あたしにつっかかった。


「うぅぉぉおいいいい!」

「違う、違う!これはただ……」

「後でワトソンを殺そう。そうしよう」


あたしのせいでワトソンくんの殺害が決定してしまった。申し訳ない。


あたしがもう一度。ワトソンくんの方を見ると、目が合った。


クスリとだけ笑って彼はスマホに目を落とした。あたしはただ彼のことを眺めてしまっていた。


◆◆

星が欲しい。







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