第6話

私は静かに教室に入ったはずだったのだが、もう周りを囲まれてしまった。これではワトソンの元に向かうことも出来ない。


「シャールちゃん!見たよ!また事件を解決したんだってね!」

「ホントすごいよ!尊敬しちゃう!」


みんな、私のニュースをしっかり見てくれているようで褒め殺しにあってしまう。


「ありがとー!まぁ、運が良かっただけだよ」


そんなふうに流しておいた。ここで私の才能が……なんて言ってしまうとクラスから浮きかねない。本当は、才能溢れる天才美少女探偵なんだけど!


今誰か……ポンコツ恋愛脳探偵って言ったか?あぁ?


ある程度みんなの盛り上がりが冷めてきた時、親友のクランが顔をのぞかせた。目の前に机がなかったら抱きしめてしまったいたかもしれない。


高い身長。キリッとしたかっこいい目。ボーイシュ気味だが、たわわに実ったその部分のせいで女の子であることが強調されている。


しかしやっぱり、のだ。


「やぁ、シャール。また事件を解決したんだって?お手柄だねー」

「そうなのー。褒めて?褒めて?」

「はいはい……偉い。偉い」

「うぅ……適当だよぉ」


それだけ言って、私が机につっ伏すと、優しく私の頭を撫でてくれる。たまらん。


そうだ。あのことを相談しないと。親友にだけは話せるあの依頼のことを。


「ねぇ、クラン。私さー、ワトソンから最悪な依頼を受けたんだけど」

「また、それは。どんなのなのかな?」

「彼女を探して欲しい、だって……」

「あちゃー、だね。でも、それって間接的にシャールに告白してるんじゃない?」

「だよねー?そう思うよねー?なのにワトソンはぁ……はぁあああ」


私の反応を見た、クランが苦笑いをうかべる。彼女は気まずそうに頬をかく。


「で、彼女の候補はつけているのかな?」


依頼に一切答えずに虎視眈々と狙い続けてもいいけど、さすがにワトソンから怒られるよね……。


でも女の子はあんまり近づけたくないし……。知らない子は特に。どうしよぉ。。


「まだなんだよぉ、クラえもん!」

「……じゃああたしが行ってあげようか?」


これは天才美少女探偵の私に匹敵する発想!


もし、万が一変なことをワトソンが起こそうとしてもクランなら振り切ってくれる!だってクランは……。私は賛成の声を上げた。


「それがいい!それでさ……ワトソンに私のこと推してくれないかな?あくまで親友として。後、ワトソンがクランの事を好きなるなんてこと絶対にダメだからね?」


「はぁ、分かってるよ。私は恋愛とかは無理だから。私は乙女じゃないし、興味もない。男の子を好きになるなんてありえない」


クランは儚くクスリと笑った。申し訳ない。彼女の性格を使ってしまうのだから。でも背に腹はかえられぬ。


「頼んだよぉ……クラン。んで、私のこと推しといてね?」


私が手を握ると、クランは私から目線を外してつぶやくようにして言った。


「できるだけね?」


クランはスタイル抜群である。私は心強い!そう思って送り出した。


だが、次にこっちに来た時には抜群のスタイルは縮こまっていたのはまた別の話。


そしてクランは私の前で1度も見せたことの無いような乙女の顔で名前をつぶやくのだった。


「ワトソンくん……か」

「うぅぅおおおいい!」


◆◆

次回はクランちゃん編です。

星が欲しい。




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