第5話
俺が通っている高校は新しく出来た私立の高校。色んなことに緩和で、校則もゆるい。
そりゃ探偵なんていう、奇妙な職業を掛け持ちさせて貰えているのだから、校則ゆるゆる高校に決まっている。
生徒の数は比較的多く、入試は難しいながら特別な入学形式も数多く用意し、才能を秘めた生徒を多く集める事で有名である。だからこそ、校則がゆるい。
髪の毛も染めている人がちらほら見受けられる。これもあってシャールの白い髪が目立たないって言うことはない。可愛い子は目立つのだ。
近隣から成績優秀者を特待生として集め、スポーツなどの一芸による入学も積極的に行われ、学業、スポーツ、芸術とあらゆるジャンルにおいて素晴らしい成績を残しているらしい。
俺達も実は貢献している。ニュースにもなって有名になってるし、いい広告塔だろう。
なんでこの高校に来たかって、俺はただシャールが通うと言ったから入っただけ。入試は難しいらしいが、まぁそれなりに勉強してたら困ることは無かった。
シャールは特待生で入っていたが……。
「やっぱり目立っているねー!私たちも有名になったものだね」
「達?シャールだけだろ。俺はただの助手として……」
「相変わらず、自己肯定感低いなぁ……。それじゃ彼女なんてまた夢の夢だぞぉ?もうその依頼取り下げちゃえば?」
呆れたように言ってくるシャール。なんかもう、面倒くさそうである。でも俺は青春するって決めたんだ。
早くしないと次の依頼がいつ来てもおかしくないのだ。何とかして、まずは女子と話す機会を作らなければ……。
俺はそう考えていると、どうすれば機会が作れるのかというクエスチョンの答えが出る前に教室に着いてしまった。
考え事をしていたので、シャールの会話に生返事していたのがバレたのか、彼女は少しだけ怒っている。
「もう私は席に行くからね」
シャールはわざとらしく足音をたてながら、自分の席へと向かった。席に座ると同時にクラスのみんなが駆け寄ってくる。すごい人気ぶりである。
一方の俺はと言えば……。
変なやつに絡まれている。緑色の髪を1つ結びにして、赤いメガネをかけている。明らかにオタクな女子。
メガネを外せば女神のようだったという謎の噂が回っている変女に絡まれていた。
こいつは女子としてカウントしない。
「こりゃまたシャールちゃんは人気者ですねぇ……。どうです?登校そうそうに彼女が寝取られる気分は?」
「楠木……。まず、俺とシャールは付き合っていない」
楠木朱里。入学当初からやけに絡んでくるやつ。本人曰く、『君の親友キャラになってあげよう!キラッ』らしい。
俺と以外は喋っているところはあまり見ない。自称陰キャなので、人間と話すことは苦手と言っていた。
じゃあ俺は人間以外ということなのか。あまりに酷い彼女のコミ障は、話しかけられそうになったら眠るという奇行をするほどだ。
「お!シャールたんとクラン様が喋ってますねー、尊い……。ウホッ///」
「キモイぞ……」
「何を言っているのかな、ワトソンくんは。これだから寝取られ慣れている男は」
「慣れ!?」
俺がやれやれだぜと、首を横に振っている楠木に取ってかかろうとしたところ、楠木が急に陰キャモードに入った。
「あぁ……なんかクラン様がこっちにきたわ。私、1回落ちるわぁ……」
それだけ言って、ふて寝をかましやがった。俺が楠木から、目を離して前を向き直すとそこにはスタイルのいい美少女がたっていた。
彼女の名前はラル・クラン。シャールの親友らしい。髪はショートカットで、金髪。キリッとした目つきとモデル顔負けのスタイル。何の文句のつけようがない。
なんでこんな子が目の前に……。
俺は素早くシャールの方を確認すると、すごい目で俺の方を見ていた。いや、睨んでいた?、なのか。
もしかして……これは!?シャールがくれたチャンスなのか!親友を差し出してくれるなんて。心からのありがとう。
「ワトソンくん?ちょっといいですか?」
こんなチャンスもう無いかもしれない。チャラ男だと思われないように、真面目な男を演技するしかない。というか、俺は生涯を通して真面目で生きてきたんだ!
俺のありのままを出せばきっと……!
「クラン、可愛い」
「ん、んんっ///!?」
やってしまった……!?
何言ってんだ、俺は!?絶対に初対面で言う言葉じゃないだろぉぉ。恥ずかしがられてるよ。どうせキョドって童貞丸出しじゃん、とか思われてるよぉ、絶対。
「違うんだ!これは俺のありのままを出した結果で……」
「あうぅ……っ///」
待って何言ってんの、おれ?なんかおかしなことになってない?クランちゃん喋ってないんですけど?
落ち着くために深呼吸をしていたら、クランちゃんが口を開いた。
「……出直してきます」
それだけ言って、クランちゃんは去っていった。終わったわ。青春までの道。強風オールバックだわ。
「さすが、寝取られ陰キャ彼氏」
「うぅ……」
さっきまで居眠りをしていた楠木に悪口を言われ、幕を閉じた。
◆◆
今回は自分にしては長めとなっております
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