第3話
俺は鏡の前で足掻いていた。初めてワックスとやらを使ってみた。
動画を見て学んでみたのだが、ただボサボサになっているだけにしか見えない。
「もういいか」
飽きてやめてしまった。そもそもだ。俺がこんなことをしなくたってシャールが何とかしてくれるだろう。
俺にあった人を見つけてくれるに違いない。俺は学校の支度を済ませ、行けなかった分の高校の授業をざっと復習した。
まぁ、当然として高校の範囲は一応全部終わらせておいたんだがな。世界中飛び回っている間に、勉強は欠かさずしてたしそもそも頭は悪くはなかった。
シャールに追いつくために必死で……。無理だったんだけどなぁ。
そんなことを思いながら、上で身支度をしているシャールを呼んだのだが、返事はなかったがその代わりにドタバタと動いている音が聞こえた。
どうせ用意をしてなかったのだろう。もう少し待たないとなぁ。俺はふとスマホを手に取った。待受は小さい頃にシャールと二人で撮った写真にしている。
シャールいわく、キモイらしいのでそろそろ変えねばと思っている。この時は仲良かったんだけどな。
階段を降りる音がして、振り返ってみると久しぶりの制服を着用したシャールが立っていた。
「制服ってやっぱりカチッとしてて嫌いなんだよね」
「そうか?俺は可愛いと思うぞ?その服を着れるのも三年間だけだしな」
「私には歳を取らない設定が……」
「ない」
「そんなぁ……」
わざとらしく落ち込むシャールだが、俺と目が合うと一目散に俺の方へと近寄ってきた。
そして俺の頭に手を伸ばすと、髪が固まっていることを確認して正面で腕を組んでから、つぶやくようにして言った。
「はぁ...なんでワックスをつけちゃうのかな。これだから空気読めない男ランキング一位は」
「なんだ?ダメだったのか?」
「逆!ほら、学校行く!」
そう言って、玄関の方に走っていってしまった。逆ってどういうことだ。ダメの反対ってことは良いってことなのか?寝癖みたいになったし、そんなわけ……。
「ワトソン、まだー?」
探偵様が俺の事を急かす。変なことを考えている時間はないらしい。シャールが待つ玄関へと向かった。
天気は晴天で、俺たちの登校を後押しするようなものだった。
おいおい、さすがにジロジロ見すぎだろ。シャールはそりゃ可愛いよ?見てしまうのは仕方ないことだと思う。
俺がもしお前らの立場なら、跪いて告白してるね。でも生憎、俺は助手という立場なんでね。
しかしまぁ、女の子にまでモテるとはな。熱い視線を感じるし。俺にその視線を向けてくれ。
まぁシャールと俺だったら、彼女をみてしまうのも仕方ないか。憧れみたいなものだろう。うん。仕方ないことなんだ。
俺が生まれてこの方、彼女もできたことがないのはそのせいなんだ。
なんて人のせいにしながら俺はシャールと二人で学校までの道を歩いた。
なぜかシャールは野良猫のように、周りを睨んでいたが……。ファンサならもっと優しくしてやってもいいだろうに。
◆◆
皆様のおかげで甲子園ランキング上位に入ることが出来ました!笑
目指せ1位!!星が欲しい!
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