第二章 八話「生贄」
アヤ『……そうだよな…
黒蛇は、アヤを飲み込もうと大口を開け、
アヤに迫った___。
____瞬間、青黒く、神々しい閃光が、アヤと黒蛇の間に
ボキッ!と、何かが折れる音が2回ほど響き渡った。
アヤ『…ッ?…はぁ…やっとか…』
黒蛇は、痛々しい悲鳴をあげた。
アヤ『…お前、その手に持ってるのって…』
祢遠「これ?あぁ、うん。あの邪龍の牙二本だよ。折り抜いた」
黒蛇『!』
黒蛇は、祢遠を見てから、少しづつ後退する
アヤ『…イテテテッ…ゲホッ…』
祢遠「大丈夫か〜い?」
祢遠は、何かを思い出したように辺りを見渡す。
祢遠「…あれ?
アヤ『…アイツの…腹ん中…頭から丸呑みだ』
祢遠「丸呑みか…なら生きてるでしょ…。僕の護符だって、奇跡的に1枚使ってないみたいだし」
黒蛇は奇声をあげて、黒い瘴気を自信に宿す
みるみる姿が変わっていった。
鱗は太く硬くなり、二本の立派な角が生え、
折られた牙も再生する。
祢遠「…やっぱり龍だね。早めにたどり着けてよかったよ」
祢遠はそう言い、龍の膨らんだ腹部を見つめた。
祢遠『…君が飲み込んだ人間のメスは、そこにいるのかい?』
祢遠がそう発した時、場が凍りつくくらいの
威圧感に包まれた。
邪龍『…フハハッ…!先の娘を人間のメスなどとは…仲間には到底使わん言葉だな?』
祢遠「戯言はいいよ、後で聞いてあげる。
僕の質問の答えを聞かせてよ」
邪龍『…。さあ?どうだろうな?気になるなら、我の腹を摩って、腹に聞いてみたらいいんじゃないのか?』
祢遠「…ふふ、おや、いいのかい?それじゃあ遠慮なく…。」
祢遠は、右拳に青黒いオーラを練り上げ、一歩踏み出す。
来る時に使った【圧縮型魔術】を使い、
一気に邪龍との距離を詰めた。
邪龍『ッな…!?』
祢遠「さっさと本体を出してきなよ、その前に人間は回収するけどね」
邪龍は瘴気を練り上げるが、間に合わない。
邪龍『…ッ!!!』
_瞬間、辺りにとてつもない、おびただしい量の黒い血液が流れ、溢れ出す。
祢遠の右拳が、邪龍の腹部に大穴を開けていた、
祢遠「…澪菜、生きてるかい?」
邪龍の腹部から、人間の腕を引っつかみ、
腹部から出そうと引きずり出す、すぐに離れないと行けないので、祢遠が抱えながら。
邪龍は悲痛の叫びを上げているが、気にならない。
澪菜「……」
澪菜はなんとか息をしている状態で、
薄く目を開けた瞬間急に激しく咳き込んだ。
澪菜「…ぅ…ぁ…?祢遠?…あれ、なんか近くない?てか浮遊感…」
祢遠はニッコリ満面の笑みを浮かべて、
祢遠「もう1回深く眠っとく?」
と凄んできた
澪菜「ッヒェッ遠慮します!」
祢遠がかなりの速さで地面を蹴り上げて、
すぐに邪龍から距離をとる。
邪龍は腹部から流れ出る血を止められていなかった。
祢遠「傷口に少しだけ僕の魔力がちょっかいだしてるから、簡単には再生できないと思うよ」
邪龍『ッ貴様ァ!何故他神が介入してくる!本来なら一人の神の問題には他神は介入しないだろう!』
祢遠「そうだね、僕だって面倒臭いから本来なら介入しなかったよ、でも今回は澪菜が含まれて居たからね〜…面倒だけど、流石に見過ごすことも出来ないから」
邪龍『ッハ!邪神がただの人間に執心か?』
祢遠「執心なんて大袈裟な…。全くもって興味すら関心も無いよ」
澪菜「……酷すぎ、もし私が祢遠のこと好きだった時の気持ち考えて?」
祢遠「なにか行けなかったかい?ただ
澪菜「…流石は邪神としか言えない」
祢遠「お褒めの言葉感謝するよ♪」
澪菜(…別に褒めてないけど…)
邪龍『…人間と共に居るなど…お前、神から成り下がったのか?』
邪龍は不敵な笑みを浮かべて問う。
祢遠「成り下がる?なんの事だい?僕は神のまま下界に降りているだけさ」
邪龍『ますます分からん…。神が人間と深い縁を結ぶことなど…!』
祢遠「…そうかい?君もさっきの女の人間と縁ができてる、同じようなものじゃないの?」
祢遠は澪菜に言う。
祢遠「さっき拝殿で見かけた女を連れて外まで行っといて」
澪菜「ッ…そ、そうしたいのは山々なんだけど…」
邪龍『ッふん、無理だ。我の腹に入った
「贄」は精気を吸い取られる!我と関わった以上、お前たち全員に我との縁ができた!ここで我の糧となれ!』
澪菜「…祢遠、どういうこと?」
祢遠「…さっき外にいた女が、本来のこの邪龍の「生贄」だった…。でもそこで君がその贄を助けて、この邪龍とも無関係では無くなった。そこで君を「代わりの贄」とし、こいつの力を上げるために精気を奪われた…」
邪龍『ッふ、そういうことだ。だから大人しく我の糧と』
祢遠「ならないよ、ていうか、君じゃ出来ない。どうせその力も、この不完全な異界を創り出したのも、君1人の力じゃないんだろう?」
邪龍が息を飲む音がした____
祢遠「…君の中に、清神の気配がするんだよ…君を潰したら、ストックされてる力がまた君を再生させる…。面倒臭いけど、一番効率が良くて後から面倒臭くない方法だよ」
邪龍『…そんなこと、させると思うのか?』
邪龍の赤い眼が一層鋭くなり、全員を睨みつける。
アヤ『…つまり、
澪菜「…わ、私は逃げといても…」
祢遠「…それは無理だって、今言ってたよね」
澪菜は顔面を青くした。
祢遠「…ね、悪いんだけどさぁ、澪菜、もっかいあの邪龍の腹ん中に入ってくれない?」
澪菜「……は?」
「悪いけど」なんて言葉を言っている顔とは思えないくらい満面の笑みで、言ってきた。
澪菜はもちろん口を開けて無意味にパクパクと動かして言葉の意味を理解出来ていなかった___
_________
in ???
???「…なかなか、面白いことになってきましたね〜…。神と神の戦いなんて、そうそう見れるものじゃない…」
暗い室内__大きい水晶体が怪しく光る部屋で、一人の男性は恍惚と水晶を眺めていた_
_____続く。
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