第二章 七話「一人目…」

__

in 空き地


純華すみか「……ぇ?…れ、澪菜れいなの…彼氏さん?」


祢遠ねおん「そう、彼氏…。澪菜と…連絡がつかなくて、…恋夜祭こいよまつリ…だっけ?それに行くって言ってたから調べて、ここかな〜ってね」


純華「…あ、ありえないです…。恋夜祭リの

詳細な情報はネットには記載されていないですし…。ここを通って向かうことだって、私達、3日くらいかけて…」


祢遠「…はぁ…分かったよ…」


祢遠は足元にいたオーヴォン紅に視線を落とす。


オーヴォン紅は目をキラキラと輝かせて、

脳内で会話する。


オーヴォン紅『なに?主、僕に仕事?』


祢遠『頼むよ、この2人の人間を催眠状態にしてくれない?あとはちょっとした洗脳状態で』


オーヴォン紅『りょーかい!主の仰せのとおりに!』


オーヴォン紅は、2人の人間に目を向ける。


オーヴォン紅『…【意思操術マインドコントロール】』


オーヴォン紅から、薄い赤色の霧が発生する、その霧は、純華と悠露ゆうろを覆っていく。


魔力抵抗力のない2人は、呆気なくオーヴォン紅の魔術にかかった__。


祢遠「…それじゃあ、一つ質問させてもらうよ。異界に行くには、どうしたらいい?」


祢遠ならばアヤのように【異界の廻廊】を

開いて異界へ迎えるが、祢遠は邪神だ。

もし、荒技ゴリ押しで向かったら、

不安定な異界は壊れるかもしれない_そうなったら、それが一番厄介だ。


だから、祢遠でも、仕来しきたりには従うようにする。


悠露「供物である媒体を置いて、祠の前で短文を読み上げる…これが、ルールです。」


洗脳を直に受けた2人。悠露は淡々と答える


祢遠はしばらく考える。

祢遠(…供物…よく神の間で人間に捧げられた物は食べ物だったな…。でも、今僕は持ってないし…)


人間を供物にすることも出来るが、それは

「供物を忘れた」人間だ、人間でない祢遠は自分を供物にすることも出来ない。


祢遠(…中々に考えられてるね…恋夜祭リ)


祢遠は周囲を見渡す。

祢遠「…あ」

祢遠は目に入ったモノを拾い上げる。


祢遠「…ま、これでもいいでしょ♪急いでるし、反感買えるなら楽に始末出来そう♪」


祢遠が満面の笑顔で拾い上げたモノは、

頭から血を流していた『カラス』だった。


片足1本を持ち上げて、供物を捧げる神棚の傍に置く。


祢遠「なんて言ったらいいんだい?」

純華が、手元のメモに短文を書いて祢遠に渡した。


祢遠(…ふむ…)

祢遠「……願いを叶えるまじないを」


そう唱えた瞬間、祢遠の身体が闇に霧散していった。


オーヴォン2匹達も、霧散していく。



純華「…ッあれ?私達…」

悠露「…ボーッとしてたのか?…記憶が…」


純華「?なんでしょうか?この赤い液体…」

悠露「…さあな?」


_____

in 異界


アヤ『伏せろ!』


澪菜「ッ!」

すんでのところで体を床の上に突っ伏して、蛇の強力な頭突きを避ける。


澪菜「だ、誰ですか!?」


蛇の頭が部屋の壁に激突して派手な音が鳴る。

蛇は全く平気そうに、澪菜とは別方向を向いて威嚇していた。


部屋の壁材は木のはずだが、無傷だった。



澪菜(…??な、なに?何が居るの?)

蛇があまりにも巨大すぎて、蛇が睨んでいる方向を見ることが出来ない。


黒蛇『…ッシャーーーーー!!!!』

また大きな声で鳴き、睨んでいた方向へ向かって

突撃する。


声を発していた人物は上手く避けることが出来たのか、蛇がまた壁へ衝突した。


アヤ『おいお前、さっさと外出るぞ』


澪菜「ッンギャア!!」


急に後ろから知らない声をかけられ、情けない悲鳴をあげる。


慌てて振り向いた先にいたのは、

頭についた2つの狐のような大きい耳に、銀色の美しい首までの短髪に、薄緑色の縦長の瞳孔。

後ろでチラチラ見える大きい尻尾。


澪菜「…へ、え?外…出る…?ッはい!逃げます!」

急に目の前に現れたコスプレみたいな男性に助けられて、かなり頭がパンクしていたが、セリフを復唱してなんとか理解した___。


澪菜はアヤの言う通り、立ち上がって逃げようとしたが、


蛇が、逃がさないというように扉を自分の巨体で

塞ぐ


澪菜「ッこ、これじゃあ…」


アヤ《祢遠…!まだか…?…?返事が返ってこない…!どういう事だ…》


澪菜「ッ危ないです!」


アヤ『ッ!くッそ…!』


黒蛇が、突撃の姿勢でアヤに向かって攻撃する。

アヤは瞬時に【防衛魔術】を使って結界を張ったが

蛇が何らかの力を纏って結界に大穴が空いた。


アヤ《ッふざけんな…俺は偵察に特化した幻獣だ、攻撃系や守備系は苦手なんだよ…!それに何故祢遠と連絡が取れない?そこが一番気がかりだ…》


黒蛇は大口を開けて、結界に空いた大穴に突っ込んできた。


澪菜「ッぅわあ!」

黒蛇は顔を横に傾けて、長い舌で澪菜を大きい口の中に入れた。


アヤ《はあ?飲み込むつもりか!?》

アヤは澪菜の腕を掴もうとしたが、黒蛇の鋭い牙が腕に食いこんだ。


アヤ『ッチ!』


澪菜「ッ私のことはいいです…!今のうちにッ!」

バクッ…と、黒蛇の口が閉じた。黒蛇が、澪菜を丸呑みする。

そして、アヤの方へ向き直り、巨大な尾で壁まで叩き付けた。


アヤ『ッイッテェ…クソッ…!?ッゲホッゲホッ!』

叩きつけられた衝撃で咳き込み、鼻から鮮血が流れてきた。


アヤ『……そうだよな…兆志きざしの命令を守れなかったんだ…その罰だな…』


黒蛇は、アヤを飲み込もうと大口を開け、

アヤに迫った___


_____続く。











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