第二章 三話 「儀式の供物」

in 自宅


澪菜(レイナ)「さて…非常食よし、スマホのバッテリーもよし、水よし、モバイルバッテリーもよし…」

用意周到にしっかり準備して、

【恋夜祭リ】を行うため、まずは純華(スミカ)の家へ向かう


祢遠(ネオン)「…どこに行くんだい?」

澪菜「…友達の家、泊まるから大荷物」


祢遠「ッふふ…」

澪菜「え、なに?」

祢遠「いや?なんでも」


澪菜は自室に戻って、必要なものが無いか最後の確認を行う。


澪菜「……あ」

ふと、ノートパソコンを乗せた机に目を向ける


澪菜(…持っていった方が…いいよね。

貰ったものだけど)


澪菜「…そいじゃ、行ってきます」

祢遠「行ってらっしゃーい」

ガチャ…と、玄関を閉めて、

エレベーターへ向かった___



in 玄関

オーヴォン黒『……良いのか?主』

オーヴォン紅(アカ)『…僕ちょっと心配』

祢遠「いいんだよ、死なない程度に危険な目に合った方が」


オーヴォン紅『…もし、死んじゃうくらいの事が起こったらどうするの?』


祢遠「…その時は、向かうよ。流石に死なれたら困るから…店長にも面倒臭い程嫌味言われそうだし」


アヤ『確かに俺の主が、さっきの人間の女の元にお前を向かわせたんだもんな』


祢遠「お、アヤ、久しぶり。久しぶりの人間界はどうだい?」

アヤ『やはり息苦しい、俺の生まれは異界(あちら)だからな』


祢遠「アヤ、澪菜を【後追イ】できそう?」


アヤ『ただの人間の【後追イ】など容易。俺ならば異界に行こうが追うことが可能だ。

…攻撃力は無いが』



祢遠「それでいいよ…もし、澪菜が死にそうになったら安全なところまで引き摺ってやって。僕が間に合わない可能性もある」


アヤ『分かった。…?死にそうになるまでは放っておけと?』


祢遠「そ、」


アヤ『…分かった』

______________



純華「…よし、皆、全員集まったよね?」


純華の家は、二階建ての一戸建て。


澪菜「純華、久しぶり」

純華「うん、久しぶり。ごめんね、無理言っちゃったよね…」


澪菜「ううん、最終的に頷いたのは私だから!」

他の人の視線を感じて、振り向く。


そこには、焦げ茶色の短髪に、ひし形のシンプルなネックレスを掛けた、男性がいた。


純華「あ、澪菜、紹介するよ!この人

灯坂 五織(トモザカ イオリ)先輩の彼氏さん、西元 悠露(ニシモト ユロ)先輩」


澪菜「は、初めまして!弥雲(ヤクモ) 澪菜 です!」

3人で集まって、純華と悠露さんに案内された場所は、空き地の隅に置かれた祠の前だった。


廃れて、所々に泥が付いている。


純華「えっと、供物は、持ってきてくれましたか?」

純華が澪菜と悠露に聞くと、2人は頷いて、

祠の前に持ってきていた食べ物(供物)を置いた。



澪菜「えっと、確か、食べ物なんだよね」

純華「うん、食べ物。もし食べ物を忘れたりしたら、人間を供物と認識したりするらしいの…。」


澪菜「おうふ……おっそろしい…あれ、この供物は?」


純華「…多分、五織先輩が置いたもの…だと思う」

そこには、コンビニで買ったであろう2つのおにぎりが、ビニールから取り出された状態で2つ置かれていた。

不思議なことに、虫は寄り付いていなかった。

よく見ると、祠の隅にも、蜘蛛の巣などは無かった



純華「…よし、ここからが本番……澪菜、準備はいい?」

澪菜「……私だけ飛ばされる可能性…怖すぎ…」

もし、澪菜だけ飛ばされるようなことがあった場合のため、悠露さんから五織さんの写真を預かった。


純華「…それじゃあ、皆、スマホのメールに送った文をせーので読み合おう」

澪菜・悠露「うん/ああ」

「せーの」という合図と共に、3人は声を揃えて

一文を読み上げた。


『願いを叶えるまじないを』


__________

in 澪菜宅


アヤ『…ん、異界に入った…』

祢遠「追えそう?」

アヤ『誰に言ってんだ』

余裕だと笑みを浮かべ、アヤは霊力を使い、空間に渦が巻いた。この渦に入っていけば、

『異界の廻廊(カイロウ)』を渡ることができる。


オーヴォン紅『気をつけて…』


祢遠「通信は忘れずにね〜」

アヤは進みながら1度振り向いて、異界の廻廊を渡って行った。


________

in 【恋夜祭リー異界ー】


澪菜「…そんな気はした…そんな気はしてたよ?

でもさ…?別に本当にそうしなくても良くない?」


一文を3人で読み上げて、恋夜祭リに『来た』澪菜は、1人ポツンと、

【天日結(アメのヒムスビ)神社】と書かれた鳥居の下で、祭囃子(マツリバヤシ)や、提灯などのお祭りぴったりな雰囲気の世界が広がる景色を見据えて静かに愚痴った_



___続く


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