第二章 二話「奇襲」
in スーパー
澪菜(レイナ)「…え〜ッと?…非常食、非常食……いや、栄養豊富な野菜ジュースとか?エナジードリンクとかかな?……とりあえずおやつ、女子ならやっぱり、甘いものッ!」
「…一応野菜ジュースも…」と、ジュースもカゴに入れる。今更になって、胸騒ぎがしてきた…。
澪菜(…大丈夫なのかな…ん?)
おやつ売り場に並んでいた澪菜の足元に、
飛び出して行ったはずの、祢遠(ネオン)の闇犬の子犬が
いた。
澪菜(ッや、やっぱり可愛い!)
子犬は、ナマモノの置いてあるエリアに行き、
牛肉を前足で指した。
澪菜は、スン…と冷めた顔になった。
その牛肉は、黒毛和牛、超高級品の肉だった。
澪菜は見なかったことにしようとしてレジに向かおうとするが、子犬は黒毛和牛の入ったパックを咥えようとしていた。
澪菜(ッ!?ストップストップストップ!!私が悪かったです!買います!)
と、目で訴える。
子供「…お姉ちゃん、そこに何か居るの?」
澪菜「…ッへ?」
小学一年生くらいの可愛い子供が、澪菜の視線の先を指さしていた。
澪菜(……もしかして、私相当目力強かった?)
澪菜「ッな、何も居ないよ、虫が飛んでたの」
子供「…ふぅん」と、可愛い子供はすぐに振り返って親の元へ戻って行った。
澪菜は隣で呑気に前足を舐めている子犬に目をやりながら、渋々黒毛和牛をカゴに入れた。
____________
澪菜「…はぁ…気が重い…不安すぎる…」
澪菜にとって、神隠しはトラウマのようなものだ、
もう二度と経験したくないと思っていた。
『黒毛和牛、買ってくれたこと感謝するぞ、澪菜』
澪菜「……?」
澪菜は辺りを見渡すが、何もいない。
急に黒い粒子が集まり、粒子の集合体として
闇犬の子犬が現れた。
澪菜はムスッとした顔で、
澪菜「買わされましたが、美味しそうなので皆で食べましょう」
と、少しカタコトになりながら言った。
隣を歩きながら、子犬が見上げてくる。
『…?皆?肉しか買っていないのに、大したものを作れるのか?』
ピタ…と、澪菜は足を止めた。
澪菜(〜ッ!確かにッ!ソースならあるけど、他のお供になるような食材買ってない!)
澪菜「……ッ戻って買い直してきます」
『やめておけ、我は着いていかないぞ』
澪菜「別に、すぐそこですし…」
『そうじゃない、あの幻獣が来ると言っている』
澪菜「…え?マジ?」
『まじ…?…我はお前に張り付いてまで、幻獣から身を守るように、主からは命じられていない、それに、主なら美味くなるように作れる』
澪菜「…分かりました、このまま大人しく帰ります」
せっかくの高級肉だ、ポテトをお供として買っておきたかった悲しみ
『…カア゙ア゙ア゙ア゙ア』
カラスが、あのカラスが上空から低空飛行で澪菜に迫る。
隣を歩いていた子犬が、俊敏な速さで迫ってきたカラスに体当たりした。
ガキンッ!と、金属音のようなものが鳴り響き、
赤い火花のようなものが迸(ホトバシ)る。
『カア゙ア゙ア゙…!』
カラスは子犬と睨み合い、子犬は体制を低くして威嚇している。
澪菜はジリジリと後ずさり、「に、逃げるべき?」
と試行錯誤する。
『住み処まで走れ!』
澪菜「ッ…!」
持久力が無いせいで、すぐ後ろまでカラスが迫っているのが分かる。
『遅い!』
澪菜(ッごめんなさい!)
心の中でスライディング土下座して、無我夢中で走りきる。
マンションまでたどり着くと、もう1匹の子犬が
走って駆け寄ってきた。
澪菜は「戦ってくれるの?」と期待したが、どうやらビニール袋を凄く気にしていた。
澪菜「…?」
『美味しそうな生肉の匂いがする…!』
澪菜「?」
幼いような、そんな感じの声に違和感を覚えていると、片割れの子犬が茂みから出てきた。
澪菜「ッあ、大丈夫!?」
『?心配するようなことはない、あのカラスの腹を我のかぎ爪で引き裂いた、もう撤退しているだろう』
澪菜はホッと息をつき、エレベーターに乗る。
澪菜「?なんで着いてきてるの?」
『?肉を貰うために決まっているだろう』
『美味しそうな生肉、早く食べたい…!』
澪菜「…食い意地…」
『澪菜も他者のことを言えない』
ウグッと息を詰まらせて、605号室に入る。
祢遠「おかえり…あれ、なんでオーヴォン達が?」
『…この娘の後を着けていた、カラスの幻獣が奇襲してきたが我が負傷させて追い返した』
祢遠「ご苦労さま、それで?澪菜、何を買ってきたんだい?」
澪菜は気配を消して、2人が喋っている隙に自室へ戻ろうとしていたが、案の定、引き止められた。
『澪菜には、任務の報酬として良い肉を買ってもらった、祢遠、美味くなるように作ってくれ』
祢遠「…はぁ…」
大きいため息をついて、祢遠は渋々了承した。
_________
純華(スミカ)(…先輩…待っててくださいね…)
純華は、部屋の窓の外を眺めながら、五織(イオリ)の
無事を願っていた。
純華(…?何あれ?)
暗い夜の闇の中、街灯に照らされた地面に、
漆黒の黒いカラスが佇んでジッと見つめていた。
純華(…気味悪い…もう寝よう)
純華はカーテンを閉めて、鍵をかけて
ベッドの中で眠りについた____
_____続く
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