第二章 【異界二飛ビ込ム】
第二章 一話「黒の使徒」
澪菜「…やっぱり、純華(スミカ)から聞いた話以上の情報は…得られそうにないなぁ…」
(そもそも、自分たちで介入しに行くんだから、純華たちだって相当調べたはず…でも、そんなに調べているのに手元にある情報が少なすぎる…)
澪菜はパソコンを閉じて、中身のなくなったチョコレートミニケーキの大袋を捨てる。
1日で綺麗になった部屋を見渡して、ハッとする
澪菜「ッ今何時!?」
リビングで調べ物していたが、途中で祢遠(ネオン)がリビングのソファで寝に来たため自室で調べていたのだ。壁に掛けた時計を見る。
現在時刻 AM4:00
澪菜「…寝るか〜…」
澪菜は歯磨きをして、洗顔を終えてからベッドに
入った。
純華の言っている先輩…確か
『灯坂 五織 トモザカ イオリ』さんだっけ?
その人は今も、【恋夜祭リ】に居るのかな…。
澪菜「…ふぁ…眠…」
4時まで調べ物をしていた澪菜は眠気に勝てず、そのまま眠ってしまった___
『…カア゙ア゙…カア゙ア゙…』
大きいカラスが、夜の空を飛んで行く……。
_____________
『〜♪』
澪菜「…ん゙ん゙…寝る…」
澪菜は朝が大の苦手。昨日は4時まで夜更かししていたのだからいつもより遅起きだ。
現在時刻 AM11:30
スマホを見て、着信やメールが入っていないことを確認してから、リビングに向かう。
祢遠「あ、おはよう〜寝坊助家主」
澪菜「……いいでしょネボスケでも…」
ふぁ、と大きい欠伸をして、洗面所へ行く。
てきとうに朝ご飯前の準備を終えて、リビングに戻ると、机の上にはカリカリに焼かれたクロワッサンとサラダ、フルーツヨーグルト、野菜ジュースが置いてあった。
澪菜「ッふぉーーー!!!!!!」
祢遠「うわびっくりした」
澪菜はそそくさと座椅子に座り、両手を合わせて
「いただきます!!」と叫んだ。
祢遠「…寝起きでも食い意地は健在だね…」
若干引いた目で見られていることに
澪菜は気づかない。
5分と経たないうちに完食して、買って冷やしておいたアイスを取って食べる。
祢遠「常に何か食べとかないと行けないのかい?」
澪菜「口元が寂しいんじゃい…」
祢遠「僕も貰お〜」
祢遠も冷蔵庫の方へ行って、アイスを持って
戻ってくる。
澪菜(…さて、【恋夜祭リ】いつ行くのかな…?)
テレビを付けて、てきとうに番組を切替える、
澪菜「……あ」
祢遠「ん?なんかあった?」
切り替えたニュース番組を見ると、テレビの中のアナウンスの人が喋っている内容が耳に入る。
『一週間前から、高校三年生である、「灯坂 五織」さんが、行方不明となっております。警察が行方を探していますが、未だに……』
澪菜「…ん〜…」
このニュースで、五織さんの行方不明事件は
ホンモノなんだなと、現実感に浸る。
その時、澪菜のスマホが振動する
電源をつけると、純華からメールが届いていた。
届いたメールに目を通すと、【恋夜祭リ】に関する 計画と、日時が書かれていた。
澪菜(…えーっと…?【恋夜祭リ】には、2日後の夜に向かう。時間は20時までに集合。待ち合わせ場所は…純華の家?…家で出来る儀式なんだ…)
それなら、2日後の為に、非常食を買ったりしておいて…、おやつとか…水とか?
もしかしたら、五織さん、食べ物なくて倒れてたりしてるかもだし…それ以前に見つかるかどうかなんだけど。
とりあえず、2日後の為、体調管理は万全にして、
持ち物も不備のないように……。
澪菜は、洗濯物を干しにベランダに出ようとした。
澪菜「…あ〜やだやだ面倒臭い……ぅわ!」
急に強い力で後ろから腕を引っ張られ、床に尻もちを着いた。
澪菜「ッいだ!」
人ひとりが通れそうなくらいに開いたベランダの引き戸から、普通サイズよりも大きいカラスが突進してきた。
澪菜「ッ!!」
カラスの目は血のように赤く、翼を広げたら
別の鳥に見えるくらい大きい…。
澪菜の腕を引っ張った祢遠が、咄嗟に赤黒い色をした魔法陣を発動させて、家の中に入ってこないようにバリアした。
『ガア゙ア゙ア゙ア゙!!!』
カラスは激突した痛みで大きく鳴き、方向転換して向かいの家の屋根へと飛び立った。
澪菜はすぐさま引き戸を閉めて鍵をかけてカーテンを閉める。
澪菜「…あのカラス…昨日の夜のじゃないよね……?」
もし昨日のカラスだったら、昨夜から澪菜は監視されていたということになる、身の毛のよだつ可能性を必死に頭で否定しながら、振り向く。
澪菜「…あれ、なに?」
祢遠「…さあ?何らかの力を持った者が使役してる従魔だと思うけど…」
澪菜「…?従魔って、この前異界で祢遠が呼び出した巨大な狼みたいな?」
祢遠「うん、そうだよ」
そう言って、黒いモヤが祢遠の周りを包みこみ、
モヤの中で血走った赤い双眸がギラリと光った。
春菜「ッ…!」
『主(シュ)よ…何か我に要か?』
地響きが起きるような低い声、何重にも重なったように聞こえる。
祢遠「うん、君の子分である2匹の子犬を貸してほしいんだ」
『…何に遣うつもりだ?』
祢遠「このマンション周囲の警備」
『……そういうことなら、わかった』
巨狼が黒い霧に霧散し、霧が晴れたところから
柴犬くらいの大きさの闇色の犬が2匹現れた。
澪菜「ッ可愛いッ…!」
思わず抱きこもうとするが、すり抜けてしまい、
勢い余って座椅子に飛び込む形になった。
祢遠「…マヌケ」
澪菜「可愛いのが悪いんだッ…イテテ…ねぇ、触れないの?」
祢遠「触れるけど、今別に必要ないでしょ…」
祢遠は視線を子犬達に向け、手を叩く。
子犬達はキョトンとした顔で澪菜を見ていたが、
祢遠の方へ顔を向けて指示を仰ぐ。
目線だけで何かを伝えたのか、子犬のうち一匹は
玄関方面に走り去って消えていき、
もう1匹はカラスが突進してきたほうのリビングへ
走り消える。
『カア゙ア゙ア゙ア!!』
澪菜「ッ!」ビクッと肩が跳ねて、チラ…と
祢遠を見る
祢遠「…うん、退散したね。暫くは来ないんじゃないかな?」
澪菜はホッと息をつき、
【恋夜祭リ】に行くための荷物などの買い出しに
出掛けた。
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