第8話「家庭的…やね…」

澪菜(レイナ)「ッン"ギャ"ア゙ア゙ア゙ア!!!!蜘蛛ぉ!!!」

澪菜は部屋の片付けを、祢遠(ネオン)は台所の掃除と夜ご飯を担当していた。


澪菜の絶叫が木霊する

結構足の長い美脚の蜘蛛(大)が天井を

這いずり回る。

祢遠が片手を銃の形にして蜘蛛を魔術で撃ち抜く。


澪菜「ッイ゙ギャア゙ア゙ア゙!!落ちてきたァ!!」

澪菜の真上にいた蜘蛛、ちょうど祢遠が撃ち抜いて蜘蛛が澪菜の上に落ちてくる。小さいビニール袋を持ってビビりながらも追いかけ回していた澪菜は

位置を定めて袋を開く。

シュッ…と袋の中に落ちてきた。


澪菜「ッフッハッハ!!我が家に侵入してきたことを悔いるがいい!!」


祢遠「バカな事言ってないで手を動かす」

澪菜「…ヒャイ…」

蜘蛛の遺体が入ったビニールの口をしっかりと結んでゴミ袋に入れる。


澪菜「ッふぅ〜こんなもんかな?」

一人暮らしを始める時、整理整頓が苦手なのは知っていたので収納ケース等はかなり買っていた。

そこにとりあえず物の種類を分別してブチ込んだ。


…ひとまずは、これでも問題ないだろう…。


ぐるりと部屋の中を見渡して、澪菜は息が止まった


澪菜「ッッッッ!!!!!」

光の速さでカーテンに飛びつき、豪雨で部屋干しにしていた下着類を外す。

祢遠「その速さで怨霊からも逃げたらいいのに」

澪菜「ッそれができたら私だって助かってた!」


どうやら祢遠はとっくに台所を片付け終えて、リビングでの乱闘を観戦していたみたいだ。

チクショウ…

部屋の『片付け』は気が乗らないが、

部屋の『掃除』は変なスイッチが入ってモップで綺麗に床を拭く。


澪菜は蜘蛛が出てきた恐怖と驚愕で疲労しきっていた。

澪菜「…ご、ごはんは……?」

祢遠「ん?まだだよ?」


「掃除が終わったならお風呂行ってきな」と言われたのでお言葉に甘えてそそくさとお風呂へ向かう。

澪菜「…ち、ちなみに夜ご飯は何?」

祢遠「ん〜……鶏肉のレモン照り焼きでもするかな〜…」


澪菜「…なんか…家庭的やね…」

祢遠「今までの経験だね」

澪菜「そういえばヒモ生活してたんだっけ?」

祢遠「…ヒモ生活」

澪菜「…?違う?…今まで色んな人たちの代わりにご飯とか家事してたとかでしょ?」


祢遠「そうだけど…」

澪菜「そうだよね!んじゃ、レモンの照り焼き楽しみにしてる!!!!!」

最後だけ目を輝かせてお風呂に向かっていった澪菜を見てため息を吐く。


祢遠「…食い意地…しかも何?レモンの照り焼きって…鶏肉を焼くんだけどなぁ…」

澪菜の食い意地に呆れつつ、冷蔵庫から材料を取り出す。

キッチンでは軽快なリズムで包丁の音が

響いていた____


澪菜「ンギャァァァアアアァァ!!!!!」

という悲鳴がお風呂から聞こえてくるまでは__

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

inお風呂場

澪菜は髪と体を洗い終え、お風呂の浴槽に浸かって1日を思い返していた。


澪菜「…なんか…一気に日常生活から隔離された気がする…今は高校も夏休み入っててずっと休み続きだけど…高校始まったらどうしよう…それまでには祢遠居なくなってるかな〜…」



澪菜「…てか…2LDKだけどもうひとつの部屋、拭き掃除してない…お風呂から上がったらレモンの照り焼きを頂いて…拭き掃除して、カーテン付けて…あ〜〜まだまだ今日は寝られなさそう……」


お風呂から上がってもやるべきことが多いと理解して、項垂れた。

「さて、そろそろ上がるかね〜」と、

お風呂から上がって壁を見た時…。


澪菜「ッンギャァァァアアアァァ!!!!!」

という、本日2度目の絶叫が響いた。


何があったか、目の前にいたモノは…。


澪菜「ッG!Gーーーー!!!!」


あの黒い、恐らく大人サイズのそこそこ大きい虫が白い壁を歩いていたのだ。


叫び声を上げても祢遠は助けに来てくれない、、、

いや来られても有難いけど、同じくらい困ります!


自分でなんとかするしかない…!

視線を彷徨わせた先に、目に飛び込んできた頼みの綱。


澪菜「ッカビキラー!!!!!喰らえカビキラー!!!」


目の前の虫に大量に浴びせかけ、動かなくなった隙をついてお風呂から逃げ出した。

お風呂の引き戸を開けて出た先の部屋にある洗面所に飛び込み、お風呂の引き戸を思いっきり閉じる。


洗面所の扉の向こうで「なんかあった〜?」と間延びした声が聞こえてきた。


澪菜「ッGが!Gが居た!頼む後で処理してください邪神様ッ!」

「え゙〜…面倒くさ〜…」と慈悲のない返事が返ってくる。とりあえずてきとうに服を着てそそくさと退室する。

扉の引き戸を開けた途端にレモンのいい香りと香ばしい香りがした。


澪菜「オーーッ!いい香りッ!!」

リビングまで行って、綺麗に片付けた広めのテーブルの上に美味しそうな料理が並んでいた。


「白米とスープは自分でよそってきて」と言われたので大人しく「はーい!」と返事をしてウキウキで自分の分と祢遠の頼まれた分をよそいに行く。


澪菜「〜!!」

ご飯たちをよそってリビングに戻ってきた澪菜は、

並べられた料理を見て目を輝かせる。


今日の夜ご飯は

メインが『鶏肉のレモン照り焼き』

おかずが『玉ねぎとキノコバター醤油炒め』

汁物が『キャベツとかぼちゃのバター味噌汁』

カロリー高めだが疲れきって色々あった一日にはピッタリの献立だ。


澪菜「むふぉーー!!!」

祢遠「食い意地…」

お皿に綺麗に載せたメイン料理をまず最初に頂く。


澪菜「ッ美味しい!すんごい美味しい!!」

祢遠「それは良かった」


澪菜は続けて、「流石プロヒモ!!」と言おうとしたがググッと美味しいご飯ごと言葉を飲み込んだ。


_____続く

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