転変世界の人類、人族。

 転変世界でも、文明の多くを築いているのは人類です。

 総じて人族、と呼ばれます。

 人族にも種族があり、その多くは交配できません。より厳密には、交配しても子孫を残せません。

 種族も多ければ住んでいる場所も様々で、極寒の地から火山の洞窟まで、ほぼ世界中のどの環境下にも集落があります。

 逆に言えば、人族の住んでいない所は魔物の巣窟であったりと何某かの理由がありますが、集落もない地域でも仙人や修行者が生活をしている場合があります。


 また、人族の間で他種族を「亜人」と呼ぶのはかなりの禁忌であり、「我らの種族こそが人であり、お前らは劣等種なんだから滅びろよ」と宣言しているに等しく、挑発の度合いを超えて多くの場合は喧嘩や殺し合いになります。

 満月の日に変身をする種族などに対しても、「獣化」などというと「けもの呼ばわりとは何事か」と怒りを買います。


霊人族れいじんぞく

 人族で最も生活圏の広い種族であり、かつ地球人に近い外見です。

 霊子の力が他種族よりは若干平均値が高く、霊子を使う法術士となる数も多いようですが、一目で判るような外見的特徴も特になく、「特徴がない」という点で見分けられる事も多いです。

 肌は、白、黄色、黒と、住んでいる地域で僅かな違いがあるようですが、体毛の色は茶、金、灰色、黒を中心に赤、青、緑と実に多様です。

 広大な土地を開拓し、農耕から畜産に漁業と幅広く営み、人族の多くの胃袋を支えている種族でもあります。他種族の多くは、自分たちの食い扶持と災害用の備蓄を最低限確保はしますが、食文化を開花させるほどの大量生産を目指したりはしません。

 また霊人族から派生したとされる、ほぼ男性しか産まれない牛人族や、ほぼ女性しか産まれない耳長族の集落では、お互い共存関係を築けていれば扱いもいいのですが、奴隷化されている場合もあります。


耳長族みみながぞく

 森林や霊山に住み、世界各地に分かれた十三氏族がそれぞれの地で国家を築いているようです。

 外見的な種族特徴は横に長く尖った耳で、肌は白か褐色が多いです。体毛は金や銀で、緑や青味がかった髪色もあります。体系は細身ですが、褐色肌の氏族は胸や臀部が大きい個体が多いようです。その理由は不明ですが、氏族間の些細な諍いの原因は大体コレです。

 身のこなしは軽やかで素早く、弓矢や法術での狩猟が得意です。猫のように高所から落下しても、綺麗に着地します。眼は闇夜でも良く見え、忍耐と集中力もあり、じっと動かずに獲物を狙い続けたり、僅かな痕跡を見つけ追跡する事にも長時間耐えられます。森に潜伏した耳長族を、他種族は容易には発見できません。

 逆に、重い金属製の武具は使うのも苦手で、重甲冑武装との近接戦闘などは不得意です。

 植物に詳しく、薬草やキノコの栽培から林業、ワインや乾燥果実造りに果樹を育てたりしています。採れる物は何でも食べますが、狩猟による肉や魚も、冬場に備えて保存食にする事が多いようです。

 また、種族としてほぼ女性しか産まれず、生殖の為に霊人族の男性が必要な為、大きな集落にはほぼ霊人族が共存しています。この種族的制約がある為に、生活圏はそれほど拡大されはしませんし、戦争は極力避ける傾向が強いです。極稀に、男性でも女性でもない個体が産まれますが、大抵は身体的に強力となる為に、戦士として育てられます。

 十三氏族の内の1つに、空中浮遊都市(マゲツ、ハンッガ、シンナリーの3都市)で生活する氏族があり、世界中の空を移動しながら、定期的に他の氏族との交流を途絶えさせずにいます。


炎鉄族えんてつぞく

 炎と金属の扱いにけ、手先も器用であり細工や加工の腕も一流の職人がとにかく多いです。鉱毒の処理なども、高い技術力を持ちます。

 山や鉱床に鉱山都市を作り、時には火山や迷宮にも住み着きますし、そうした場所に適した、暗闇を見通す目も持っています。

 他種族なら熱で死ぬような環境下でも、種族的に持つ炎と毒の加護のおかげで、溶鉱炉の火や竜の火炎息ブレス、溶岩などで無ければ火傷もしませんし、粉塵を起因とする病気や火山ガスの毒性にも耐えられます。

 身長は他種族よりもだいたい低く、高くても150cmほどです。男女共に、霊人族の14歳くらいにしか見えませんが、体重が1.5倍はあります。肉体も強ければ、凄まじい怪力でもあり、全身鎧の重武装で魔物や敵陣に突撃するのはお手の物です。

 しかし、水泳は苦手で、水場を恐れます。水たまりですら溺れてしまわないかと警戒します。

 肌は、赤味が買った褐色が多く、体毛は赤、茶、金、黒に黄色や桃色に赤紫などがいます。

 成長すれば若々しく頑強な種族ですが、死産や乳幼児の死亡率は高く、また50歳を超えて長生きできる個体は稀です。

 農耕、狩猟もあまり得意ではなく、植林もせずに禿山にしてしまう事もあり、金属や加工品を提供する代わりに、他種族からの飲料水や食糧を中心にした各種支援に頼っている部分が大きいです。

 酒がとにかく好きで、子供の頃から飲むというのに、その酒の原材料を自分たちでほとんど作る事が出来ません。自分たちで飲む酒造りは上手いのですが、他種族には強過ぎるのも欠点で、取引が難航した時に「アイツらに酒の材料を渡す意味があるのか?」としばしば言われてしまいます。

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