転変世界のエネルギー。霊子力と魔力。
転変世界には、現実世界で働く力以外に二つの概念が存在し、それらを使える存在からして違いがあります。
一つは、霊子力。
生き物の魂の力だと考えられているもので、生命が死を迎えると遺体の上に「霊子塊」として出現し、白い人魂のような見た目で浮いていますが、一定時間後に自然と雲散霧消するか、異界人か異界人の造った霊子力で動く特殊な施設が近くにあれば、それらに吸収されます。
霊子塊の単位は「ソーマ」です。
異界人や霊子力施設は、この霊子塊を使って様々な事が出来るようです。
霊子力が発生する生物は、その体積で判定されるらしく、ネズミやカエルなどの小動物でも大きな個体であれば死後に霊子塊が現れる事がありますが、プランクトン、ウィルス、微生物では霊子塊となるまでの霊子力を保有していないと考えられています。
もう一つは、魔力。
これは転変世界に出現する魔物が持つ力で、この魔力を用いて魔物が使ってくるのが魔法となります。
魔力を持つから魔物であり、魔の物が扱う魔の法であるから魔法となります。魔物以外の存在は魔法を使えませんし、何らかの方法で魔力を得てしまい、魔法を使えてしまった生物がいた場合、それは必然的に魔物になってしまいます。もう、元の存在には戻れません。
魔物を倒すと、その死骸は黒い霧となって消滅しますが、その場には青白い水晶のような物体が空中に浮いた状態で出現します。大きさは大小様々あり、「魔力塊」と呼ばれ、これも放置した状態で一定時間が経過すると自然と消えてしまいます。
魔力塊の単位は「マナ」です。
その魔物と戦闘をした霊子力を持つ生物がこの魔力塊に近付くと、光と共に身体に吸収され、多くの場合は手の甲部分に水晶の図柄が刻まれて、十進法の数値が図柄の上に表示されるようになります。
魔力塊に魔物だった時の記憶があるのかは判りませんが、自分に傷を与えた生物以外には吸収されません。その魔物と複数人が戦った場合も、魔物に対してどれだけの損傷を与えたかによって、吸収されて増えるマナの数値が変わります。
例えば、戦士が単独で魔物と闘い倒しながら、戦士自身も死亡したとします。この場合は、周囲にどれだけ他人がいたとしても、魔力塊は吸収されることなく、一定時間後に消えます。
他にも、遠くから監視だけしていました、といった人物には魔力塊からのマナは分配されません。ただ、討伐隊を組織して、ある個人に監視任務を専任させた場合、隊からの報酬が監視役に配分されるといった事はあり得ます。
この魔力塊で得られる数値は、それを保有する生物同士でやり取りが可能なので、人々の間でも通貨として広く利用されていますが、その最大の理由は異界人が特殊な能力を使ったり、霊子力施設を造ったり利用する場合にも消費するからです。特に、霊子力施設からの恩恵や加護を得る為の需要は非常に高いです。
例えば、魔力塊で得たマナを使って蘇生や復活に関わる施設の恩恵を受ければ、転変世界の住人であれば死者再生も可能です。
ただし、マナは転変世界の生物間のやり取りでは、100マナの行き来に付き、勝手に1マナ分が消滅します。
例として、一人の男が一つ10マナの野菜を一日に2個ずつ購入していくと、5日目には21マナが必要になりますが、野菜売りには合計100マナ分しか渡らず、1マナはどこかに消えます。これは、同一人物から買い続けても、別々の人物から買っても、購入する商品を変えても、100マナ毎に1マナ消える事に変わりはありません。
一つ100マナの商品であれば、その場で101マナの支払いをしなければなりませんが、やはり1マナはどこか知らぬ所に消えます。
この理由は不明ですが、この消えていく1マナ分が世界のどこかに集まって、魔物に転じている、と考える人もいるようです。
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